番外編 幼い王子の初恋
番外編*フレッド視点です!
僕は、僕のことをただのフレデリック、いやフレッドとして見てくれる人を探してた。
王太子とか、王子とか、王族とか、王家とか、とにかく『王』とつく言葉が大っ嫌いだった。
みんな僕を特別扱いする。僕はただの子供なのに…。
でも、嫌いなのは、今日でおしまい。
あの子を手に入れるためには、『王』という言葉がきっと必要だから。
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僕は、教育係がたまにくれる休憩を利用して庭に出ていた。庭にいると落ち着くから。
しばらくすると、子どもの泣き声が聞こえてきたんだ。
この庭に、貴族の子どもが迷い込んで来ることは、珍しくない。僕とのつながりを作ろうと親が連れてくるのだ。実際に遭遇した回数も、両手の指じゃ足りない位ある。
ただ、いつもと違ったのは、僕が探してあげなきゃって思ったこと。
いつもなら、近衞に任せるのに…。
案の定、そこにいたのは、貴族の女の子だった。
僕が近づくと、無邪気に見つめてくる。
小さくて、可愛い。
着飾ってはいる。
でも、他の奴らみたく派手じゃないんだ。
なんて言うか、タンポポみたいなんだ。特別に主張するわけじゃない、だけどすごく可愛いんだ。
その上、チョコレート色の髪の毛と、マスカット色の瞳が、春の妖精みたいに可愛いくて、存在が天使。
名前を聞くと、クレア・リィ・アネンシアだと答えた。公爵家に嫁いだおば様の一人娘か。
言われてみれば、色も同じだし、顔も似ている。
でも、クレアの方が、ずっと可愛い。(伯母さまはな綺麗であって可愛くはない)
守りたい。
僕が守らなきゃ。
大事だ。
心からそう思えた。
この思いが恋だと気づくのは、もう少しあと。
今よりずっと大人になってからだ。