金色の天使
もう1話アップします♪
本邸へ帰る馬車の中で、クレアは王太子との出会いを思い出していた。
12年前、当時公爵だった父に連れられ、初めて王宮に訪れたのは、5歳の頃。
初めて訪れる場所が物珍しく、ついつい乳母の目をかいくぐって逃げ出してしまったのだ。
なのに、いざ1人になると、怖くて寂しくて、大きな声を上げて泣いてしまった。しばらくすると、人の気配がする。
少しして、男の子がやって来た。
驚いて泣き止み、じっと見つめていると、ハチミツみたいな金色の髪に、空色の目をしたその男の子が、心配そうに尋ねて来る。
「どうしたの? 大丈夫?」
優しい口調に警戒心を忘れ、それでもちょっとのプライドで迷子とは言えず、お父さまがいないの、と小さな声で答えた。すると、今度は、名前はなぁに?とまたもや優しい声で聞いてきた。
今度は、たくさん家で練習してきたので、自信を持って大きな声で答える。
「アネンシア公爵令嬢、クレア・リィ・アネンシアです」
男の子は、クレアのことを知っていたようで、目を丸くする。
「おにいちゃんは?」
ちょっと困っていた男の子は、う〜んと唸っていたが、まあいっか、と答えてくれた。
「フレデリック・リィ・アースバルだよ。
よろしく、クレア」
今度は、クレアが驚いた。男の子は、自分の母方の従兄で、王宮にきた目的の
「おうたいしでんか?」
だったからだ。
「あれ〜。知ってたの〜?」
大して驚いた様子の無い2歳年上の王太子は、ショックで固まった小さな姫を運び、公爵と王の元へ連れ帰り、クレアは珍しく怒った父に、盛大な雷を落とされた。
それを王と王太子に庇われという奇妙な光景が繰り広げられたが、その後、クレアは叔父である王にも従兄のである王太子にも可愛がられ、とても大きな後ろ盾を得るのだ。