公爵と花嫁 前編
ホセの話を投稿します!
今日は、王太子の結婚式だった。
とても素晴らしい式典だったが、特に、クレアの花嫁姿は飛び抜けて美しかった。
王太子妃だとわかっていながらも、彼女に大勢の男たちが、目を奪われていた。
兄歴ひと月半の男も、澄まし顔を演じながら、寂しい思いをしていた。
幸せにしてもらえよ。
そう男、ホセが小さくつぶやいたとき、目の前で、少女がーー、
「うわぁ!
いたたたた。
また転んじゃった」
転んだ。
ここで見ない振りをするほど酷い男ではないので、少女を助け起こし、ドレスについた汚れを払う。
「ありがとうございます!
わたし、よく転ぶんです。
お礼がしたいので、どうかお名前を教えてください!」
敵意は感じられなかったので、牽制の意味も込めて、なのる。
「礼は必要ない。
レキシミア公爵、ホセ・リィ・アネンシアだ。
気をつけろよ」
「クレアさまのお兄さまでしたか。
ご無礼をどうかお許しください」
「いや、別にこれくらい大丈夫だ」
ホセは、このくるくると表情が変わるこの少女に、興味を持ったのだ。
「ああ、そちらの名はなんという」
これからたくさんの変化が訪れて行くに連れ、その気持ちは違うものに変わっていっても。
ヒロイン、名前がまだです。




