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沈む地球

作者: roboboa

どんどん地球が沈んでいく。

重い地面、重い車、重いレール、重い建物、重い人間。

ずぶずぶずぶずぶどんどんどんどん沈んでいった。





教室から外を見ていた。

窓の外で鳥が2,3羽電線から飛び立っていった。

地球は少しだけホッとしたようだった。

風が吹いて、私の手元にちっちゃいロボッチが現れた。

ロボッチは笑っていた。

ちっちゃいロボッチはどうやら遊びたい盛りらしい。

私の肩までよじのぼり、そこから飛びおり、それから私のほうを見つめ、

「どうだ、すごいだろ」と言わんばかりの動きをした。

それを何度も繰り返していた。ロボッチの顔はずっと同じ笑顔だった。


チャイムが鳴り、それまで死んだようだったクラスメイトが

ゾンビのようにガタガタ立ち上がった。

私は暇だと思いながら、ずっと座って窓の外を眺めていた。

サッカーをしている人や走っている人や帰っている人を見た。

いつの間にか教室は空になっていた。


カラの教室には、座っている私と、

まだよじのぼっては飛びおりてこちらを見つめる事を繰り返している

ちっちゃいロボッチだけになった。

私はふと、家で母が夕食の支度をしている姿を思い出した。

帰らなければと思った。

ちっちゃいロボッチはちょうど肩の上にいたところだった。

だが私は構わず家路についた。


ちっちゃいロボッチはずっと肩の上にいて、

はじめは驚いていたと思うが

途中鼻歌を歌いだしたのできっと楽しいのだろうと思った。

家に着く直前に、風が吹いてちっちゃいロボッチが消えた。





今日の夕食はシチューのようで、匂いが近所に散らばっていた。

私はふと、今日コンビニのアルバイトがあったことを思い出した。

時計をみて、もうかなり遅刻していることがわかった。

しかし、どうでもよかった。


そのまま家で夕食を食べて満腹になったとき、

ふと、地球のどこかのことを思い出した。

何かしなければと思った。

しかし、何もしなかった。







夜、眠る直前に、ロボッチから電話があった。

「今日、楽しかったよ」

「私も楽しかったよ」

「教室がカラになる、サイコー」

「ゾンビ、サイコー」

「明日もよろしく」

「こちらこそよろしく」


電話、いつもはもっと早い時間だったのに。

昔はそれよりもっと早い時間だったのに。

もっと昔はそれからもっともっと早い時間だったのに。

もっともっと昔はもっともっともーっと早い時間だったのに。

もっともっともっと昔は……。


昔は、どうだったのだろう。

ロボッチからの電話がなかったような気がする。

でも、そんなことはどうでもいい。





私は眠りについた。

眠っている間もどんどん地球が沈んでいく。

音がずっとしていた。


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