無限想歌:拡大家族:彼方&家族:兄が浮気して、姉が浮気された件で家族会議2
こきざみに連投です!
tips~ひとつ、ふたつ、みっつ、五つ、その最果てにある、拡大家族
護りたかった物は、たったひとつだけだった。
でも、それが何時からか、ふたつになった。
ふたつは三つになり、三つは五つになった。
そして、大切なそれらは十を過ぎた当たりで、自分の手からこぼれ落ちた。
こぼれ落ちた、大切な物。それはもう、戻らない。
だからこそ、残された大切を胸にかき抱き、彼は歯を食いしばった。
護れるだけの物を大切に、全てを注ごうとした。
けれど、それでもいつのまにか、護れない大切が手元に現れていた。
護れなかった。
護りたかったのに、護れなかった。
護れない大切が、どんどん増えていった。
そして、それを良しと出来なかった彼は、大人失格だったのだ。
背格好だけ伸びて、彼はいろんなものが見えるようになった。
小さかった頃よりも遥かに多くのことを見聞き出来るようになり、そして、彼は子供のままだった。そう、彼は変われなかったのだ。成長することが、できなかったのだ。
でも、だからこそ、彼は変えるしかなかったのだ。
全ての大切を護るには、彼の手の届かないところを変えるしかなかったのだ。
かき抱く大切も、こぼれ落とした大切も、いずれも等しく護るにはーーーー彼は、世界を変えるしかなかったのである。
※
悪意による反転:五つ、みっつ、ふたつ、ひとつーそして、残された物は
こぼれ落ちた大切は、もどってこなかった。
そのくせ、消し去りたいものが自分の中に降り積もってゆく。
いつしか、大切な物はどこにも残されていなかった。
変わりに、要らない物が残される。罪や汚れ、負の遺産だけが、自分の中に蓄積されていく。
だから、変わるしかなかった。
要らない物が必要な物だと、思えるように。
この、自分に残された物が、それこそが、価値のある物だと、自分に言い聞かせて。
・・・・・そのためには、失ったかつての「ーー」を、僕は否定しなければならない。「ーー」なんて、ほんとは何の価値もなくて、だからこそ、今の自分は幸せなんだとーーーー
無限想歌:拡大家族:彼方&家族:兄が浮気して、姉が浮気された件で家族会議2
テーブル挟んで、西が「浮気組」。東が、「ぬれぎぬ組」だった。
「現在の時刻は?」
ゲンドーさんポーズを決め込んだ司が、後ろに控える冬美に問いかけた。
この問いに対し、彼女は手元の腕時計をチェックする。そして、短く「22時14分です」と答えた・・・・・・てか、あんたたちの真正面、私の真後ろに時計あるだろが。目線上げて時計見ろよ、この低能どもがーーーーと思ったことは、心のタンスにしまっておくことにした。
「ひのぼー、そっち動き合った?」
二人の会話を聞き流し、わたしは遠方にて「たわけ」を監視している相方に問いかける。そんな相方の名は、「仁」だ。転じて、「ひのぼー」。ちなみに、どうころんで「仁」が「ひのぼー」になったのはかは、私も知らない。
「ひのぼー」は、いつのまにか「ひのぼー」だったのだ。
・・・・・・・というはさておき、スピーカーモードの携帯からはビル風の音がびゅんびゅんと木霊している。
「利也さんの部屋に動き無し。あと、母さんが帰ってこいって」
「わかった、そのまま監視を続けて」
私は通話をオフにすると、ふむと一息入れる。そしてーーー
「ひのぼーが誰か知らんけど、親が帰ってこいって言ってんのにいいのかよ?」
私の後ろから、野次が飛ぶ。私サイドのくせに、私にケチつけるなんて、なんて生意気なカケルなんだ。
・・・・・・・いろいろ思うところはあったけど、私はガン無視して、本題に入った。
「みんな、もう一度確認するけど、この女はとしにぃの部屋で何してると思う?現在の時刻は、22時半ちかく。そんな時刻に、この女は一人暮らしの男の部屋に入り浸って一向に出てこないわけだけど?」
「マンガ読んでんじゃない?」
「セ○クス」
「映画鑑賞」
「セク○ス」
「だらだらしてる」
「S○X」
「電気つけて?」
「電気って映画のほう? それともセーーー」
「どっちにしろ、消すもんなの?」
「人によりけりでしょ?」
「としにぃ、どっち派なの?」
「俺が知るかよ、利也の好みなんか」
「としにぃ、テレビの番組は電気つけてみてたよね?」
「ちょと由香に聞いてみろよ、彼方。利也は消す派なのか、つけっぱなし派なのか」
「そもそもDVDって、映画って言う?」
「それ厳しくない? 由香ねぇがつける派なのか、つけっぱなし派なのかの方が聞きやすいと思う」
「・・・・・・? 今、何の話してるんだっけ?」
・・・・・・いっこうに、話が進まない。
人数、絞った方が良いかな・・・・・・?