少し先の未来~閉ざされた扉を開く鍵。それは、同時に開かれた扉を閉ざす。
自身の何気ない一言が、誰かの救いになっていることがあるとすれば? それは、ある意味では優しいお話の断片であり、そして、ときには無垢な刺として、関わったもの達をーーーーー苦しめます。
少しだけ、先の未来~閉ざされた扉を開く鍵。それは、同時に開かれた扉を閉ざす。
無限想歌ー拡大家族ー三木彼方の場合:誰かを、受け入れるということ。
兄の言葉を、彼方は信じられなかった。
その心は言霊となって、小羽と東の心に突き出される。
「その娘が死んでるってーーー分かってる? ねぇ、としにぃ。それを分かった上で、本気で言ってるの?」
彼方は、言葉を紡ぐ。そこに、怒りの気配などない。そこには、只静かな悲しみだけが、横たわっていた。
そう、彼方は、ただ一つの感情に突き動かされて、言葉を紡いでいたのだ。
だからこそ。
「分かってる。少なくとも俺は、理解してる。それに、由香のやつだって、そのはずだ。俺たちは、全部分かった上で、こいつと「一緒にいる」って決めたんだよ」
だからこそ彼方は、いつものように、のほほんと「屁理屈」をこねる兄を受け入れられなかったのだーーーーいや。
他の誰でもない。
彼女は、「東」が「それ」を口にすることが、何よりも許せなかったのだ。
「その娘、死んでるんだよ? それなのに、おかしいよ! ぜったいおかしいよ! 死んだら、そこでおしまいなんだよ!? なのに、なんで? なんで、じゃあ、その娘はここにいるの? ねぇ! としにぃ、言ったよね! あのとき、言ったよね! 死んじゃったら、そこで終わりだって! なのに! なのに、なんで!!!!」
それは、不可避な衝突であった。
そう、それは、彼方と東が兄妹になった、その日から・・・・・・。
あるいは、東と小羽が出会い、因果を蔑ろにすることを決意したその時から。
きっと、幾千という時が交錯する上で運命づけられた、避けようの無い、兄妹の亀裂ーーーだったのだ。
「・・・・・・なんで、なんで彼方のパパとママは、私をおいて逝っちゃたの?
・・・・・・なんで、パパとママは、私をおいてっ!!!」
いつかの心ない救いは、必ずその未来にて、断罪されるべき罪となります。それを、許せるかどうか。それは、当の本人たちのみが、決められることです。