黄晶都の書評師は恋を調律する
冬の異世界・黄晶都。言葉が魔力の導線となり、薄い紙の魔具「札」に文章を書くと場の空気が変わる街で、地球から来た志音は裏路地で目覚める。腹を鳴らして入った宿で掌に浮いた「レビュー札」を使い、短い感想で酒場の喧嘩を止めたところを、調律官見習いの華音に見つけられ、詰所へ連れて行かれる。札は嘘や誇張で濁れば逆効果、貼りすぎれば書いた者の指先が石のように重くなる。都の中心の共鳴塔には黄いろい巨大結晶が鎮座し、ヒビが広がるほど人々は「憎むことしかできない」黄晶病に落ちやすい。監察官・昇一は規定違反として札を締め付け、締め付けがさらに憎しみを増やす。志音は口を開けば例え話と自分語りが先に出て華音の咳を誘い、愛恋に「要点だけにしませんか」と言い換えられ、皿洗いで挽回する。ナツカが広場で読書会を仕切り、志音のおすすめ文に人が泣いて笑い、商店街の店先には短い感謝の札が貼られて客足が戻る。それでも共鳴塔の鼓動は荒くなり、黄ばみは都全域へ。志音が勢いで書いた批判の一文が刃になって牢に入る日、華音は無理を重ねて倒れ、志音は初めて相手の言葉が出るまで黙って待つ。陽海は盾で割って入り、愛恋は謝罪文を短く整え、六人は血縁ではないまま同じ鍋を囲み続ける。原因が結晶のヒビと「言葉の偏り」だと知った志音たちは共鳴塔の最深部へ向かい、志音は帰還の道を捨てる。都へ向けた“最後のレビュー”を志音が書き、華音が息と声を整えて読み上げ、ナツカが語り、陽海が守り、昇一は規定の紙を破って支える側へ回る。結晶の鼓動が落ち着いたあと、志音と華音は小さな店を開き、人の言葉を選び直す毎日を、笑いながら続けていく。華音の水差しに救われた志音は、喧嘩の場でもまず水を配る癖を覚え、華音は志音の沈黙に救われて「助けて」と言えるようになる。恋文や契約書の一語で人が泣いたり怒ったりする都で、二人は言葉を調律しながら、いつの間にか同じ未来を選ぶ。