引きこもり宇宙のビッグバン
開いた、無限自由度の、混沌とした混合状態に置かれた健常者集団が、日常生活を営む状態空間Φ(Hp)。Φ(Hp)は混沌ゆえにミクロの泡沫を時間軸に沿い、絶えずΦ(Hp)の外へ放出している。
それら泡沫もまた生まれたての状態空間。けれどもそれらは親の状態空間とは異なり、それぞれが閉じた、有限自由度の、純粋状態になっている。これがΦ(Hp)の部分集合、引きこもりの状態空間Φ(sh)である。
Φ(sh)それぞれが、Φ(Hp)からスピンオフしビッグバンした時には点であり、何かをする余地が全く無くとも、Φ(sh)は経齢と共に膨張していく。膨張に任せ、Φ(sh)が気薄化し、中に存在している唯一つのベクトル(引きこもり者)が萎縮せぬよう、空間内環境を出来るだけ豊かにして置かなければならないのは必然だ。
あたかも単なる複素ベクトル空間に、内積を導入した事により複素ヒルベルト空間に発展し、量子論にも耐えうる空間になり得たように。なにしろΦ(sh)それぞれには、常にベクトル(引きこもり者)が一つしか含まれていないのだから。
では内積に対応するコンセプトとは、引きこもりの状態空間では何なのか?そもそも内積とは、二つのベクトル(人)間の距離や位置関係を見定めるよう考え出されたツールである。より良い交友関係を築く為に。だがそれは現実的に可能なのか?
ここで別人、x1、x2が居れば、次の4通りが想定出来る。① x1、x2が共に健常者 ② 双方共に引きこもり者 ③ x1が健常者でx2は引きこもり者 ④ ③の逆 そして残念な事に、①を除けば双方の内積<x1 | x2>を取るといずれも0になり、各状態空間は破綻する。
引きこもり者絡みの内積で0にならないのは、<x(m) | x(m)>自分自身との内積だけという事になる。なぜなら非負の実数になるからだ。ではそもそも自分自身との内積とは、一体なんなのか?
それは自身の選択した好みのジャンルが自身に働きかける事で、ジャンルに幾つかあるオンリーワンのゴールを得る事である。すると自分に働きかける作用を演算子A(m)とし、オンリーワンのゴールをAに対応する固有値a(n)とすれば、A(m)Φ=a(n)Φが成立する。(引きこもり者といえどAは複数ある可能性が高いのでA(m)とし、つれて対応する固有値aもa(n)とした。)
ところで当式は、A(m)Φ-a(n)Φ=(A(m)-a(n)I)Φ=0と変形出来る。(Iは単位行列) また(A(m)-a(n)I)は逆行列を持たない。持てばΦ=0となり、状態空間の否定に繋がるからだ。従ってdet(A(n)-a(n)I=0により固有値a(n)が求まり、次いでΦも求まる。
臨床的に引きこもりとASDは間違われる事がある。前者は<不安定性愛着>等を源流とする後天的なもので、後者は先天性である。そして状態空間ΦがASD空間ではなく引きこもり空間であるならば、演算子Aは自己共役でなければならない。
自己共役演算子は、共役を取り転置すれば元の演算子に戻る。有効治療による可塑性があるという事だ。つまり引きこもりは治る訳だ。各引きこもり状態空間が演算子の作用でどんどん成長して大きくなり、やがて何らかの偶然的きっかけで、健常者の状態空間に触れる事が起きる。その時、接触面に幾つかある境界条件を満たす事が出来れば、空間の壁は消滅する。
健常者状態空間と引きこもり者状態空間は偶然に接触するまでは、それぞれ時間発展しながら非収束なので波動方程式に従い接触の瞬間、境界、初期条件等により、引きこもりの消滅という1点に収束する。全ての引きこもりが治る訳ではないのは、波動方程式の収束が確率解として現れる事による。
だからまとめれば、t(0)に母なる健常者状態空間からスピンオフした引きこもり状態空間は、時間発展と共に、適切な自己共役演算子の作用により解を得ながら成長し、やがて再び母なる健常者状態空間に確率的に接触した時、初期、境界の諸条件を活用する事により空間壁は消滅し、不安定な非収束状態が安定的な収束状態に移行する。
これが僕の体験談である。