たくあん
おじいさんのありがた~い おはなし。
それから、よひょう改め、たけぞうは翁のもとで、厳しい修行の毎日を送ったそうな。
そんなある日、一人のお坊さんが翁の家にやってきたそうな。
「むねのりどの、そこの男は?」
お坊さんは翁を宗矩と呼んで、たけぞうの方をじっと見た。
「この男は、元はよひょうという。ここで修行しておる たけぞうという修行者じゃ。」
「ふん、たけぞうとやら、おぬしは なぜ修行をしておるのじゃ?」
「それは強くなるためだ。」
「強くなって どうするのじゃ?」
「それは力をもつためだ。」
「力を持って、どうするのかな?」
「イヌ仮面に勝つんだ。」
「イヌ仮面? ……ああ、水戸の。で、勝ってどうなるんじゃ。」
「もちろん、おつうを取り返して………、あっ!忘れてた。」
たけぞうは今まで修行に夢中で、つうのことをすっかり忘れていたのだそうな。
「目的と手段を間違えんようにな。」
と言うと、お坊さんは出された「たくわん」をぽりぽりと食べたそうな。
「お坊さんは、イヌ仮面のことを知ってるんですか?」
「ああ、有名な助さんこと、佐々木……なんとかのことじゃ。」
「佐々木? 有名なのか?」
「ん~、佐々木…。多分、巌流といってな、とても強いと、評判だのう。次の黄門様になるらしいのう。」
「次の黄門様?」
「まあ、それは放送局の都合じゃ。」
「で、どうやったらイヌ仮面、いや、佐々木?巌流?と戦えるんですか。」
「格というものがあっての、立派な侍と、元よひょうじゃのう。相手にされんだろうよ。「巌流VS元よひょう」だとなぁ。視聴率がなぁ。」
「では、どうすれば?」
「まあ、たけぞうも悪くないが、そう…読みを変えるといいかもな。それで評判をあげて、名を売ることじゃ。」
と言うと、お坊さんは、お皿に残った最後の「たくわん」をぽりぽりと食べたそうな。
「評判……。」
その日から、たけぞうはまた武者修行の日々をおくったそうな。
その間、野良犬相手に百戦百勝。
そして、いつの間にか世間では、
「生涯無敗の武蔵。生涯腐敗のくさったろう。」
と、並び称されるようになったそうな。
さて、町に出たつうは……。
毎日毎日、親切なおじさんたちに、おいしいご飯や、すいーつ、そしていちごをもらっていたそうな。
そして、「ん、あんた誰?」からの「おまわりさ~ん!」で、気づいたら町中で、「いただき女子」と呼ばれ、地雷認定されていたそうな。
「おなかがすいた……。ご飯。」
「どうしたんだい? おなかすいたんか? いちごでいいか?」
と、隣町のおじさんが声をかけると、通りがかりの男が、
「ありゃ地雷だから、やめた方がいいよ。」
と、注意してくれたそうな。
そこにカメラマンを従えた、鼻マスクの男がやってきて
「なにしてるんですか? パパ活ですか? 犯罪ですよね? 警察行きますか?」
隣町のおじさんは逃げていったそうな。
「なんで、あなたもこんなことしてるんですか、犯罪ですよ。何歳なの?」
「おなかがすいた……。」
「ほんとに食べるもんないの?冷蔵庫みせて」
「冷蔵庫ってなに?」
「冷蔵庫ないんですか、かばんの中、見ていいですか?」
中には、いちごが数粒入っていたそうな。
「いちご買えるお金あるんだったら、問題ないですよね。まじめに働いてください。」
と言って去っていたそうな。
「おなかすいた……。ん? なんか思い出した。」
そういえば、おいしいご飯やすいーつを食べている姿を じーっと見ているだけの人がいた気が……。
「よ…ひょう?」
すると急に頭の中に
「うちのおつうは、かわいいなあ、美しいなぁ」という声が……。
「そう!よひょうのところへ 行かなきゃ」
「よひょう~!」と叫びながら、つうは走りだした。
そして 町はずれまででて、急に立ち止まった。
「ん?」
つうは、なんで走っているのか、思い出せなかったそうな。
【ごきょうくん】
おじさんとの約束だよ。
パパ活と地雷、ゆーちゅーばーには、注意するように
パパに伝えてね。ママにはナイショだぞ。
表記を改め再構成中です。
2話ずつ公開しています。