女子会
「これが女子会なのね!」
ジョセフィンが目を輝かせる。
女子会でもパジャマパーティーと言うんだよという言葉をヴィオラは飲み込んだ。
「この部屋、ヴィオラらしいわ。シンプルだけど、温かい感じ」
ジョセフィンが目をキラキラさせて言った。一度、入浴して、ネグリジェに着替えているがヴィオラが出してきたネグリジェはフリルもレースもないので見た目はみずぼらしく見える。ただ、シルクでウエストのくびれがないゆったりとしたものなので開放感が強い。
そのせいか、ジョセフィンはいつもより年相応の女の子に見えた。
「でも、ベッドの上でお話しするのって不思議な感じ」
ベッドの上にヴィオラとジョセフィンは寝転がっていた。
「眠くなったら、いつでも寝られるところがいいの」
そう言って、ヴィオラはベッドの横のワゴンに手を伸ばした。小さなクッキーを口に放り込む。
「あ、これはナッツ入りだ」
「どれ?」
ジョセフィンも手を伸ばす。
「ネグリジェでベッドに寝転んでお菓子を食べて。女子会って、他にも普通のお茶会と違うところがある?」
「うーん、社交辞令とか抜きで話をする。かな。外では言えない本当の気持ち。先生の悪口だとか、将来の夢、恋の話とか」
「ふふ。ヴィオラの口から恋なんて出てくるとは思わなかった」
「うん、私にはまだ早いかな? でも、憧れない? 父様と母様を見ていると、あんな夫婦になりたいなあと思って。ジョセフィンはどんな人が好みなの?」
「身分が釣り合って、家門の繁栄に貢献してくれそうな人。父の言うことをよく聞く人。それが王太子ならベスト」
「何それ。変」
「変でしょ。でも、それが自分の好みだと思っていたの。実際は父の好みってだけなのに。父も母もそうやって、結婚しているし」
「じゃあ、今は?」
「私を好きになってくれる人」
「でも、好きになってくれれば誰でもいいってことないでしょ。ジョセフィンを好きな人って言ったら、選びたい放題じゃない」
「私を好きな人っているのかな。私の身分、外見、家の後ろ盾、そんなのが好きなだけでしょ」
「いるに決まってるじゃない。こんな優しくて、真面目な努力家で素敵な女の子なのに」
ジョセフィンはヴィオラに抱きついた。
「ああ、ヴィオラが男の子だったら、よかったのにな」
「ジョセフィン……」
しばらく抱きついてから、ジョセフィンは少し離れた。
「じゃあ、今度はヴィオラの番ね。ヴィオラの好みは?」
「え? まだ、先の話で」
「憧れはあるんでしょ。さ、結婚式を想像しましょう。誰の顔が浮かぶ?」
前世の記憶のせいで白いウェディングドレスを思い浮かべてしまう。エスコートしてくれるのは今の父様。待っていてくれるのは。
「顔が浮かばない!」
「嘘でしょ。今、お見舞いに女子の憧れが集まっているのに誰も浮かばないの?」
「だって、友達だし」
「友達なのは私だけ。あとは下心、満載じゃない」
「そうかな」
声を出さずに『ステータスオープン』と念じると、ウインドウが表示される。ライル、ジョージ、イアン、???。全てのLPの欄には100というラブポイントが表示されていた。これこそ、乙女ゲームの新しい強制力でヒロインにしようと、勝手にポイントが高くなったのでは?
「でもね、本当の私を知ったら、嫌われるんじゃないかな」
ただ、悪役令嬢にならないため、断罪を避けるために一生懸命だった。
他の人のことなんて興味がなかった。ただ、自分が、自分たち家族が無事に生き残りたかった。
「ふっ、ヴィオラに裏があるなんて、誰も信じない。本当のヴィオラは今、ここにいるヴィオラだから」
ジョセフィンがヴィオラの頭をなでる。
「気持ち悪くない? 呪われた髪だよ」
「色だけでしょ。知ってる? ヴィオラの解呪を行った神官って、この国の第一人者なの。ジョージが手を回したのかな」
お礼を言わなくちゃ。
それにしても、ヒロインになるのにそんなに髪色は重要だったんだろうか。ヒロインになんかなりたくない。でも、ヒロインは世界を救うのに、さらにストーリーを変えたら、どうなるんだろう。
夢を思い出した。
『ストーリーを変えた者が責任を取るべき』
責任なんて言われたら、怖い。
でも、ストーリーを変えてよかった。母様がいる。レイフが生まれた。友達もできて、毎日、楽しい。
そう。ヒロインの役目とは関係なく、この世界が好き。守りたい。
「真剣な顔して、何考えてるの。疲れた?」
ジョセフィンに心配そうに尋ねられた。
「ううん、大丈夫」
ヴィオラは笑ってみせた。




