ミヤの報告3
1、キャンプで生徒たちを狙った襲撃事件が発生しました
2、ジョセフィン様とイアン様が他の生徒を守ったため、全員無事でした。
3、お嬢様はブランと共に事件を起こした召喚士の捕獲に活躍しました。その際に協力したトム様がお嬢様に接近しています。
4、召喚士の背景は不明です。生徒全般を狙ったことになっていますが、王太子の婚約者としてジョセフィン様が狙われた可能性があります。
5、トム様は平民のふりをした外国の貴族の可能性があります。トム様が狙われた可能性もあります。
6、お嬢様が巻き込まれないよう注意します。
ハイラムはミヤの報告を読み終えると、大きく息をついた。
「ハーモニー学園も落ちたものだ。キャンプで襲撃事件が起きるなど、警備が怠慢だったのではないか」
「それより、召喚士を捕まえたなんて、逆恨みされないかしら」
「逆恨みされても負けることはないだろう」
「あなたっ。ヴィオラが心配じゃないの?」
マドラは自分が強く勧めて、ヴィオラをハーモニー学園に入れたため、実は不安でしょうがない。
「ジョセフィン様やイアン様も強くなられたようだし、人質に取られることもないだろう。それより、他国の男が近づくなど許さん」
ハイラムが考えるヴィオラの弱点は優しさだ。友を人質に取られる事態だけが心配だが、その心配がなければほぼ無敵だと思っていた。それよりも、ヴィオラが結婚などで遠くに行ってしまったら。ハイラムにとってはそちらの方が心配だった。
そのハイラムの考えが崩されたのはそれから、すぐのことだった。
「ヴィオラが呪われた?」
そのミヤからの知らせは早馬でやってきた。
「呪いって、どういうこと? ヴィオラは大丈夫?」
「ミヤによると、命は取り留めたらしい。王太子が神官をすぐに手配して、解呪してくれたらしい。ただ、まだ、意識が戻らないらしい」
「わ、私のせいだわ」
マドラは真っ青になった。
「何を言ってるんだ」
「私が嫌がるあの子を無理に学園に行かせたから」
「マドラ、落ち着きなさい。君のせいなんかじゃない」
ハイラムはマドラを抱きしめ、背中をポンポンと叩いた。
「あの子は、ヴィオラはもしかして、こんな事件が起きることを知っていたのでは?」
「何を馬鹿な」
「未来を知っているのではないかと思ったこと、ありません? 流行病の予防や災害の予想、新しい調味料や料理、魔力の鍛え方」
「知っていたとしても何も変わらないだろう。それだけ、神様に愛されているのなら、きっと、呪いなんかに負けず、意識を取り戻す。そうだろう」
「え、ええ」
「私は急いでヴィオラの元に行ってくる」
「私も一緒に」
ハイラムは首を振った。
「私だけの方が速い。君は私の留守を守っていてくれ。ヴィオラに向けられた呪いはヴィオラに向けられたのか、それとも、グラント領の娘に向けられたものか、まだ、わからないのだから」
「わかりました。お気をつけて。そして、あの子に伝えてください。ハーモニー学園を卒業しなくてもいいから。いつでも、好きな時に戻ってきなさいと」
「わかった」
ハイラムは従者を一人連れただけで飛び出して行った。
残されたマドラは落ち着かなかったが、数日後、また、ミヤの報告が届いた。
1、お嬢様は意識を取り戻されました。
2、体の異常や後遺症はありません。
3、ただし、髪の毛がピンク色になりました。きれいな色です。
「ピンク色?」
マドラにはヴィオラの姿が想像できなかった。




