表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい  作者: 椰子ふみの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/40

悪役令嬢の兆し

「本当にすみません。買い物に付き合ってもらっただけなのに、店長のキーラさんにデートなんて変な誤解を生んじゃって」


 ヴィオラは店を出ると、イアンに謝った。決闘で負けてから、イアンは気を使い過ぎでただでさえ、申し訳ないのに。


「誤解されても構いませんよ。いっそのこと、本当にしましょうか?」

「は?」

「本当のデートにしましょう」


 そう言うイアンの顔は真っ赤だ。


「ちょうど、お昼ですし、一緒に食事でも」

「いえ、イアンさんのお休みをこれ以上、邪魔するわけには……」


 ぐぅ〜。

 断ろうとしたヴィオラのお腹がタイミングよく鳴った。今度はヴィオラが赤くなった。


「外で食事をするのに一人は寂しいんです。買い物に付き合ったんですから、私の食事に付き合ってもらえませんか」

「でも、従者の方が……」


 ヴィオラは言いかけて、気づいた。グラント領では使用人と一緒に食事をすることもありだが、普通の貴族はそんなことをしない。


「恐れいります。イアン様にお仕えしているダクトと申します。私のことまで気を使っていただき、ありがとうございます。お言葉に甘えて、一緒に食事をさせて頂けますでしょうか? 実はすぐ近くに美味しい店がございます。個室がありますので、中ではどんな風に食事をしても大丈夫です」

「ミヤ、ミヤも一緒に食べられるって。よかったね」


 ヴィオラは嬉しくなったが、ミヤはスンっとした顔をしている。


「それではご案内いたします」


 ダクトの後をイアンにエスコートされながら、ついていく。その後ろからミヤがついてくるが、なぜか、足音が弾んでいる。


「こちらでございます」


 ダクトが短い行列ができている店の前で立ち止まった。肉の焼ける匂いが外まで漂っている。

 もう、お腹が鳴らないようにヴィオラは腹筋に力を入れた。


「なぜ、ここに」


 振り返ると、そこにはライルがいた。修行時の格好と違って、黒いシャツが似合っている。腕まくりしたシャツからのぞく鍛えられた腕がいい。


「用事とは、し」


 師匠と呼ばれる前にヴィオラはライルに接近し、ささやく。


「師匠とは言わない。修行は秘密」


 それから、イアンたちの方を振り向いた。


「最近、護身術を習っている、ライル先生です」


 ヴィオラのごまかし方にライルは戸惑ったようだったが、頭を下げた。


「三年生のライルです」

「そして、こちらは同級生のイアンさん。今日は水晶玉を買うのにお店を案内してもらったんです」

「ああ、知ってます。ヴィオラさんを侮辱して、決闘で負けた人ですね」


 ヴィオラの紹介にライルはイアンを鼻で笑うような言い方をした。

 何か言い返そうとしたイアンは深呼吸すると、笑顔で言った。


「はい、そのイアンです。愚かな男ですが、今はヴィオラさんに夢中になっております」


 夢中? ライルに言い返そうと変なことを言い出すのはやめてほしい。行列に並んでいる人たちがみんな、こちらを見ている。


「ヴィオラさん、ここで会ったのも何かの縁です。一緒に食事でもどうですか?」


 ライルがにっこり笑って、手を差し出す。師匠の立場にいないヴィオラにとっては、かっこよくて仕方ない。


「今からヴィオラさんは私と食事です」


 ライルとイアンがにらみ合う。普通に立っていても、タイプの違った美少年たちで目をひくのに、ギスギスするのはやめてほしい。


「あの、早く修行を切り上げたのはイアンさんのせいじゃないから。必要な買い物だったから。イアンさん、お腹が空いたからってイライラしたらダメですよ」


 ヴィオラが間に入っても、二人のにらみ合いは終わらない。もしかして、元々知り合いで仲が悪かった?


「小さいのに修羅場だ」

「もう、男を翻弄するとは、すごい」

「悪い女だなあ」


 見物人が笑っている。ちょっと待って。おもしろがって、私を悪女にしようとしてない?

 ミヤはただ、笑いをこらえているだけで頼りになりそうにない。


「失礼いたします。ライル様は使用人と一緒に食事するのはお嫌でしょうか」


 ずいとダクトが前に出た。


「いや、別に」

「それでは一緒に食事ということでいかがでしょう。この店に予約を取っております」

「ダクト」


 止めようとするイアンにダクトは微笑んだ。


「女性が見せ物になってはいけません。まずは中に入りましょう。それに男性は余裕がある方が魅力的なものですよ」


 そのダクトの言葉にイアンもライルもうなずいた。

 そのまま、個室で全員で食事になったが、ライルの師匠であることを隠すため、ヴィオラは会話にものすごく気を使うことになった。

 そして、なぜかイアンとライルは張り合ってばかりいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ