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【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい  作者: 椰子ふみの


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魔力測定

「お嬢様、お疲れなら、学校を休まれたらどうですか?」


 ミアが心配そうに顔をのぞき込む。


「大丈夫。今日は魔力測定の日だから絶対、行く」


 ヴィオラはふらふらしながら、答えた。

 別に病気にかかったわけじゃない。魔力の枯渇状態だ。レベルアップに夢中だったので、自分の魔力が膨大なのもわかってるし、魔力測定でそんな姿を見せたら、ますます悪役令嬢っぽくなる気がする。だから、わざと枯渇させて、人より魔力が少ないことにしようという作戦だ。器用な人なら魔力量を調節できるかもしれないが、大ざっぱなヴィオラは枯渇させるしかない。

 ヴィオラの場合、火魔法が一番、魔力を消費する。といっても、も火事を起こすわけにもいかないので、この間、ポチが来た山に行き、大きな岩に向かって、火魔法と水魔法を交互にかけた。最後、岩が真っ二つに割れたのには驚いたけど、まあ、ただの岩だから、大丈夫でしょう。

 この時にうっかり、魔力を使いきってしまったので、寮まで帰ってくるのは大変だった。


「まあ、お嬢様のことですから、クラスの一番になりますよね」

「こんなに魔力を減らす努力をしたんだから、きっと大丈夫ですって言ってよ」

「私は嘘をつけない気質なので」

「はあ」


 クラスにつくと、少し憂鬱だ。


「おはようございます」

「おはよう」


 イアンの甘い笑顔にクラクラする。そう、クールなキャラだったはずなのに、決闘で負けてから、表情が優しくなったとイアンの人気はさらに上がっている。

 乙女ゲームの攻略対象者からは距離を置きたいんだけど、お詫びの品をたっぷりもらったせいで、そっけなくしづらい。それにヴィオラの挨拶に答えてくれるのはイアンだけだ。本当のボッチにはなりたくない。

 もらったお詫びの品は全てイアンの名前で救護院などに寄付しておいた。偽善者と思われても嫌だし、自分に使ったら、決闘相手からお金を巻き上げた悪女になってしまう。


「それでは、今から魔力測定を行います。名前を呼ばれた順に前に出て、この水晶玉に手をのせてください。」


 仰々しい天鵞絨の上に水晶玉が置かれている。透明度の高い水晶で測定の魔法がかけられている。

 青が水魔法、赤が火魔法、黄が土魔法、緑が風魔法、そして、白が光魔法だ。複数の魔法が全て使える場合、マーブル状に色が混ざるらしい。そして、光の強さが魔力量になる。

 先生ではなく、若い神官が来て魔力測定するのは、聖女候補がいた場合、すぐに保護するためらしい。どんな人が聖女候補になるのかというと、光魔法の強い人だ。光魔法は治癒などの魔法が使えるので、神の力だと言われている。


「風魔法ですね」


 一人目、マリアとかいうジョセフィンの取り巻きの女性が手をのせると、水晶は緑に光って消えた。

 次々と測定していくが、さすが、特級クラス。神官が驚くほど、魔力が強いようだ。


「ジョセフィンさん」

「はい」


 ジョセフィンが手をのせたとたん、教室中に黄色い光が広がった。すごい魔力量だ。黄色といっても、少しクリームがかった優しい光だ。


「土魔法?」


 手を叩いていた取り巻きの人たちが首を傾げている。確かにジョセフィンさんって、火魔法って感じの人だもんね。でも、ジョセフィンさんは満足そうだ。

 それから、普通の魔力量が続いた。意外なことにイアンも水魔法だが普通の量だった。

 そして、最後、ヴィオラの番が来た。

 待っている間に、少し魔力が戻ってしまったような気がする。

 そういえば、ヒロインのアリアナは膨大な魔力で水晶を割っちゃうんだよね。

 ゲームでは『「その白く清らかな光。間違いありません。あなた様が聖女です」と神官は跪く。』

 私は聖女じゃないんだから、そんな羽目にならないようにしなくては、と、ヴィオラは深呼吸した。リラックスした方がコントロールしやすいはず。魔力を少しだけ出すんだと自分に言い聞かせる。

 水晶に手を伸ばして、ふと思った。身体強化に魔力を使えば、水晶には回らないのでは? やってみよう。

 水晶に手をのせたとたん、変な灰色の光が出始めた。慌てて押さえると、メキッと音がした。


「あ、あ、あ」


 水晶の真ん中にヒビが入ってしまった。

 慌てたヴィオラは身体強化したことを忘れ、ヒビをくっつけるように両側から押さえようとした……。

 ベショ。

 水晶は粉々に潰れてしまった。


「あれ、不良品ですかね」


 無理とわかっていながら、ヴィオラは笑って、誤魔化そうとした。

 神官が膝から崩れ落ちる。


「べ、弁償だー」


 静まり返った教室の中、神官の声が響いた。


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