偽りの聖女と呼ばれ、自称真の聖女と的当て勝負をする事に。
「第一回チキチキ真の聖女はどっちなんだ的当て選手権〜!ばるむんくっ!」
卒業パーティの最中、王太子オールがブリーフを尻の割れ目に食い込ませながら珍妙な事を叫んだ。
「あの、オール殿下。一体何をしようと」
「うむ、説明しよう」
婚約者である公爵令嬢近鉄バ・ファローズの疑問を受けてオールは答える。
【聖女である近鉄とオールが婚約する】
↓
【何か知らん女が私が本物の聖女よって言ってオールに近づく】
↓
【国の為にも聖女がどちらなのかハッキリさせなきゃならねえ】
「ばるむんくっ!」
説明を終えたオールがブリーフを尻に食い込ませる。
「と言う訳で、これから近鉄には俺の連れてきたエグゾたんと的当て対決して貰う!負けたら聖女詐欺で婚約破棄だからな!」
「成歩堂、最近オール殿下の傍をチョロチョロしていたピンクが聖女の名を騙ったと」
「騙ったかどうかはこれから判明する!文句があるなら的当てで勝て!」
オールが指を鳴らすと、パーティ会場がトランスフォームし、あっという間に的当て会場となった。個人の魔力で会場全体を衣替えさせたオールの魔術に会場から拍手が飛んだ。
「ばるむんくっ!」
拍手に応えてブリーフを尻に食い込ませるオール。
「さあ、会場セッティング完了した所さんで、早速行ってみようやってみよう!先行、17時に卵洗剤・キッチンペーパー男爵令嬢前へ!」
「はーい!」
名前を呼ばれたピンク髪が前に出る。彼女こそが今回の事件の元凶、自分こそが真の聖女だとほざく17時に卵洗剤・キッチンペーパー、通常エグゾだ。
「近鉄さん!貴方が偽の聖女と呼ばれるのも今日までよ!…あ、違う。えーと、アタシが真の聖女と呼ばれるのも今日までよ!これも違う!えーとえーと」
「おちけつ」
たかが男爵令嬢であるエグゾは大物が集まる卒業パーティに完全にのまのまイェイ。敵である近鉄が心配してしまう程に。
「エグゾさん、緊張してる時は心の中で嫌いな奴を思い浮かべて、そいつの股間を全力で蹴り上げるのよ」
「べべべべ別に緊張してないし!オリャー!」
エグゾはオールの股間を全力で蹴り上げた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
トロールの金棒を脳天に喰らった時の教頭先生みたいな顔をして、オールはその場に倒れ込む。
「心の中でって言ったでしょ!というか、貴女オール殿下の事嫌いなの!?」
「だって、乙女ゲームの王子とかってリアルで付き合うのはナシでしょ?アタシは自分が聖女なのを証明したいだけですしお寿司。さーてと、的当て始めますか。オラっ殿下起きろ、スタートの合図はよ!」
エグゾに急かされてオールは起き上がる。
「ばるむんくっ!」
そして、尻にブリーフを食い込ませる。
「オール殿下、ご無事だったんですか!?リッチロードの即死魔法喰らった時の教頭先生みたいでしたのに」
「ああ、心配かけたな近鉄。反射的に悲鳴を上げてしまったが、俺はざまぁ対策の一環として子供の頃にキンタマーニを切除して南極に冷凍保存してるから肉体的にはノーダメだ。エグゾたんに愛されてない事を知り心は痛むが、的当て勝負の進行には影響は無い。はいヨーイドン!」
「えっ!?」
エグゾの顔が魔王軍四天王の内三人と同時に戦うハメになった時の教頭先生ソックリになる。
好感度ダウンしたオールはエグゾが油断してる間にスタートの合図をしたのだった。
「わわっ、いそ、急がないと」
完全に出遅れたエグゾだったが、聖女認定の実績解除の為に近鉄に喧嘩売っただけの事はあり、どうにか制限時間内に全ての的を破壊してみせた。
「3…2…1…ばるむんくっ!」
エグゾが的を破壊し終わった直後、オールが尻にブリーフを食い込ませて終了を告げる。
「ギリギリだが制限時間内に全ての的を破壊したな。流石俺の見込んだ聖女エグゾたんだ。さあ、次はお前の番だぞ近鉄」
「オール殿下、もし私も全部的を破壊したらどっちの勝ちになるのですか?」
「その時はタイム勝負。残り4秒になる前に的を全部破壊でお前の勝ちだ。はいヨドン!」
「ぶげっ!?」
義妹の正体が自分の命を狙うサキュバスだと知った時の教頭先生並みに、近鉄の顔が歪む。近鉄もまた、オールの好感度は低めだった。
「うおー!正直オール殿下の事は好きじゃないけど、あのピンクに負けるのは悪役令嬢としてうおー!」
魔王を倒した先に邪神の軍勢が待っていた時の教頭先生ばりの鬼気迫る顔で近鉄はオールの股間を蹴り続けた。
「近鉄、何をするんだ!狙うのは俺のキンタマーニじゃなくて的だぞ!それに、俺のキンタマーニはそこには無い!」
「それでも股間を蹴られたら痛いでしょ!あの的は殿下の魔力で作られてるから、殿下を気絶させれば一気に全部消えるうおー!」
これが一番速いと思いますと言わんばかりに、近鉄はオールに電気アンマを連打する。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
オールは股間を尿で濡らし白目を剥いて気絶した。その顔は、頑張って倒した邪神が実は偽物で本物は南極のダンジョンに眠っていると聞かされた時の教頭先生激似だった。
そして、近鉄の予想通り全ての的は消滅。残りタイムは…4秒!同着!
この場合、一体どうなってしまうのだろうと会場の皆が困っていると、騒ぎを聞きつけて国王がやって来た。
「そこまでじゃ!事情はここに来るまでに大体聞いた!的当ての結果は同着なのじゃな?ならば、ここは拍手が大きい方を聖女とする!」
国王の鶴の一声により、大きな拍手を得た者が聖女という事になった。
「まずは、男爵令嬢17時に卵洗剤・キッチンペーパーが聖女だと思う人拍手!」
パチ パチ パチ
気絶しているオールを除いた攻略対象達ほまばらな拍手が小さく響いた。
「次に、公爵令嬢近鉄バ・ファローズが聖女と思う人拍手!」
パチパチパチパチ
会場全体から大きな拍手。やはり、こういう時は現聖女を支持してしまうのが人の心ってもん。エグゾは悔しがりハンカチをムキーと噛み締め、近鉄は勝ち誇り扇子を広げた。
「では最後に、邪神を倒し爆発する南極から生還した教頭先生が聖女と思う人拍手!」
「皆、ただいま!」
ウオオオオオオオ
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
国王の背中に隠れていた教頭先生が顔をひょっこり出すと、割れんばかりの拍手喝采。誰の目にも教頭先生が聖女なのは明らかだった。
「「教頭先生、生きとったんかワレ!!」」
近鉄とエグゾは思い出す。この乙女ゲーム世界には、先代聖女が倒されるまでを書いた過去編があったのだが、作者が悪ノリして先代聖女を最強に描き過ぎた結果、邪神に勝ってしまう原作崩壊エンドになってしまった事を。
こうして、真の聖女は誰かという対決企画は、先代聖女が生きていた事で後継者も糞もねえわという結論に落ち着き、偽聖女二人は教頭先生によって再教育される事となったのだった。
ちなみに、南極に保管してあったオールのキンタマーニは南極爆発の際に世界中にバラバラに散らばってしまい、生殖能力を失ったオールは廃嫡された。その後キンタマーニを悪用する謎の集団を倒すために、聖女四人で旅をする事になるのだが、それはまだ先の話である。