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009 貴族との決別

 おやつを食べ終えて、ジェニファーとハナは少し遅めのお昼寝をしていた。


 寝かしつけると育児スペースに皆が集まって、老執事が話し始めた。


 「今日は、その、お嬢様が色々失礼致しまして申し訳ございませんでした‥‥」


 「貴族の娘はみんなあんな感じなのかい?」とシャオランが聞くと老執事は、溜め息をつきながら話す。


 「ジェニファーお嬢様は三人姉妹の末っ子でして、二人の姉に毎日のように苛められていたのです‥‥」


 それを聞いて皆が驚く。

 老執事は続けて話した。

 「お嬢様のご両親も二人の姉が優秀なこともありまして、無条件で可愛がっておられました。ですので、ジェニファーお嬢様がご両親に訴えても聞き入れてはくれませんでした‥‥」


 フェリーナの目には涙が溜まっている。


 老執事が続けて話した。

 「ジェニファーお嬢様はご両親から疎まれてしまい、姉からも苛められて居場所はございません。私も出来る限り励ましてきましたが、私は所詮執事です。本当の家族ではないのです。お嬢様は愛を知らないままここまでお育ちになりましたが、人一倍寂しい気持ちをお持ちの方でございます」


 老執事が涙を流す。

 「ジェニファーお嬢様はそんな環境でお育ちになりましたので、愛し方も愛され方も知らないのでございます。実の姉のように人を傷つけることしか知らなかったのです‥‥」


 バルトは老執事の肩に手を乗せた。

 「そうでしたか。だが、貴方も感じたようにハナがジェニファーの悪い心を打ち砕いた。恐らく今後は良い姉妹になるだろう」


 シャオランも呟く。

 「そうだったのかい‥‥」


 老執事は泣きながら話す。

 「我が主、クリスフォ-ド家は貴族といっても下級でございまして生活に余裕はありませんでした。にもかかわらず、貴族としてのプライドを優先され、価値の分からない絵画や骨董品を購入し、ジェニファーお嬢様へは姉のお下がりしか与えられませんでした‥‥」


 

 そこへ、オバルが入ってきた。

 「バルト殿、バラン・クリスフォ-ド様がお見えになられた」


 帽子を斜めにかぶった髭の紳士が中へ入ってきた。

 「ふん、リフォームしたばかりと聞いていたが、まあ悪くない環境だな」


 老執事は狼狽して出迎える。

 「ご主人様、いらっしゃるのでしたら出迎えの準備が出来たのですが申し訳ございません」


 バランは辺りを見渡し、ジェニファーはどこにいる、と聞いてきた。


 丁度、お昼寝が終わったのか育児スペースにジェニファーが現れた。

 「‥‥お父様?」

 

 バランはジェニファーを見て、「なんだ、思ったより元気そうではないか。屋敷を離れて寂しい顔をしていると思ったがな」と言った。


 ジェニファーは、キッとバランを睨んだが直ぐに勝ち誇るような顔をした。

 「おあいにく様ですわ。ここはあんな屋敷よりもとても素晴らしい環境です」


 バランは、なにっとジェニファーを睨みつける。

 「屋敷よりも素晴らしいことはない。強がりも大概にしなさい」


 「いいえ。屋敷そのものではなく、住んでいる人そのものを比べての事でございますわ」


 「人だとっ。私が平民より劣るとでも言いたいのか」


 「その通りですわ。お父様もお母様もお姉様も、私を心から愛した事が一度でもございましたか!」


 「ぬ‥‥」


 ジェニファーは初めての親への反抗で身体が震えている。

 「お姉様から目に見える意地悪をされたのに、いつもお聞き入れ下さいませんでした!‥‥私がお父様やお母様に甘えたいと思っても、忙しいと相手にしてくれませんでした!‥‥お出かけする時も、お姉様だけお連れになり、私はいつも留守番をさせられておりました!」


 ジェニファーは泣きながら訴える。

 「こんな思いをするなら‥‥私は貴族なんかに生まれたくなかった!」


 バランもこれには顔を赤くして怒りを顕にする。

 「ジェニファー、貴様!今日はどんな環境か心配で見に来てやったというのに何て言いぐさだ!」


 「心配など微塵もされてないでしょう!せいぜい平民の施設と馬鹿にされて難癖つけてお帰りになるつもりだったはず!お父様はそういう人ですわ!」

 

 図星をつかれたバランは、ジェニファー!と怒鳴るしか出来ない。


 「私はここで生まれて初めて愛を感じました‥‥それも私よりも年下の妹に!」


 ジェニファーは決意する!

 「私はたった今、貴族を棄てますわ!クリスフォ-ドの縁も切らせてもらいます!」


 バランもそこまで言われては勘当する他ない。

 「望むところである!当家はジェニファーと絶縁だ!」


 バランは怒り心頭で屋敷へ帰っていった。


 嵐が去ってバルトが声を掛けた。

 「辛かったのだな‥‥安心しなさい。これからは私もみんなもジェニファーの家族となり、ジェニファーを守っていくと約束しよう」


 気づくとハナも側に来て、ジェニファーの手を握っている。

 ジェニファーはハナの手に温もりを感じる。


 シャオランもジェニファーに目線を合わせる。

 「ジェニファーの事情は分かったよ‥‥よし、今日あったことは全部忘れてやる!でもな、これからは少しは子供らしくするんだぞ」

 とニカッと笑った。


 フェリーナと老執事は号泣している。


 ジャンたちもそれを見てもらい泣きするのだった。


 




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