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080 ママの力になりたい

 ある日の夕方。

 

 アスカとエリナ、アスカの母で夕飯を囲んでいた。


 アスカの母が、エリナに尋ねる。

 「エリナちゃん、ここに来てから十日くらいになっちゃったけど、困ってることとかない?」


 エリナは真面目な顔をして話し出す。

 「困ってることはないです。でも、わたし、ママに甘えてた」


 アスカはどうしてそう思ったの?と尋ねる。


 エリナは少し考える。

 「う~んと、わたし、ここでおそうじとか、おせんたくとか、お買い物とかするようになって、ママは全部やってたのに、お仕事もしてたの」


 アスカとアスカの母は頷きながら聞いている。


 エリナは反省した顔で話す。

 「わたしは何もしてこなかった。自分のこともママに言われるまでやらなかった。わたしがママに辛い思いをさせてたんだ‥‥だから、ママは疲れちゃって動けなくなったんだ‥‥」


 アスカの母はエリナを擁護する。

 「それはエリナちゃんもまだ子供だもの。それが当たり前だと思ってたんでしょ?ママも、エリナちゃんが可愛くて甘やかしちゃったかもしれないわねえ」


 エリナは思い返して渋い顔をしている。

 「わたし、ママが元気になったらいっぱいお手伝いしたい。お料理はまだ下手だけど作れるようになりたい。パパがいないから、わたしもママの力になりたいな」


 アスカの母は、エリナの健気さに涙を浮かべる。

 「エリナちゃん、きっとママも喜ぶわね‥‥でもね、ママが戻ってもお金の方は大丈夫なの?食事もエリナちゃんにほとんど与えてたみたいだけど‥‥」


 エリナはお金のことまではわからない。だが、「ママが食べなくなったのはパパが死んじゃって元気なくなったからだから、どうかなあ‥‥」


 



 そんな時、病院からエリナの母が退院出来ることになったと連絡が入った。


 エリナは飛び上がって喜んでいる。

 

 アスカはエリナの笑顔を見ながら、やはり家族の絆は他人ではどうしても勝てないものだと考えさせられた。


 


 翌朝、エリナの母が明らかに体調が戻った様子で帰ってきた。


 アスカとエリナがエリナの家で出迎えていると、エリナがママの姿を見つけて駆け出した。

 「ママ!ママ!」


 エリナの母は自分の半分くらいの小さなエリナを優しく抱きしめる。


 エリナは自分のせいでママに負担をかけてしまったという旨の言葉をママに伝える。


 エリナの母は驚いて、

 「エリナのせいじゃないのよ。パパがいなくなって‥‥でも、エリナがお手伝いしてくれたら、ママ助かるわ」


 「いっぱいお手伝いする!」


 「ありがとう。わたしもちゃんとご飯食べるようにするわね。ごめんね、わたしも天国にいってしまったらエリナを一人ぼっちにしてしまうところだった‥‥」


 アスカがエリナの様子を説明した。

 「エリナちゃんは、掃除や洗濯、お買い物など、色々出来るようになりましたよ。それと、私たち近所ですし、お困りな事があった時は相談してください」


 アスカからそう言われると、エリナの母は涙を浮かべながら言った。

 「そうね‥‥何故か頼ってはいけないと‥‥迷惑をかけてはいけないと思ってしまって‥‥アスカちゃん、娘をありがとうございます」


 アスカは、自分もまたジャンたち三人の戦士たちに拾ってもらい助けてもらっている。


 それに、預かり所の子供たちからも年下だが、元気や癒しをもらっている。


 アスカは、自分の力は小さいけれど、誰かの助けになれたことが自信となり、また誰かを助けたいと思うのであった。





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