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078 ママの入院

 アスカは近所の医者に状況を説明してみた。


 医者は、

 「そうですね、恐らく点滴での治療が必要となるでしょう。可能ならこちらまでの馬車を手配しますが」

 と言われてアスカはお願いする。


 エリナの家に着いた二人は、着替えの用意と数冊の本を母とともに馬車に運び込む。


 そのまま引き返して病院に向かう。


 アスカが看た感じでは、話を聞いた通りの様子で、かなり痩せ細っている。


 エリナが呼び掛けているが、母からの返事はない。


 アスカはエリナの小さな身体を抱き寄せる。

 「病院について治療を受ければきっと大丈夫よ。きっと‥‥」


 エリナはそう聞いて不安そうに頷く。


 


 病院に着くと、個室に通されて点滴の準備に取り掛かった。


 アスカとエリナは母の荷物を部屋まで運ぶと、医者から少し離れて様子を見ていた。


 点滴の設置が完了すると医者が話し始めた。

 「危険な状態でしたが、取り敢えずは大丈夫でしょう。ただ、長らく食事をほとんどとっていないようなので、体調を戻すには日数は掛かりますね」


 そう聞いてアスカは安堵する。


 エリナは母の様子を見ていたので話しはあまり聞いていない。


 アスカが改めてエリナに説明した。

 「エリナちゃん、取り敢えずは大丈夫みたいだよ。この点滴で身体に栄養を運ぶんだけど、少しずつお腹いっぱいになるの。でも、何日か掛かるみたいだから、元気になるようにお祈りしようね」


 エリナは健気にお祈りを始める。



 医者からは、二人には一旦家にお帰りになられて、回復してからお見舞いに来る方が良い、と言われる。


 二人はそうしよう、と病院を出るのだが、エリナの家にはエリナしかいない。母は大丈夫とはいえ先ほどの反応がない様子を見ては、まだ不安に違いない。


 「エリナちゃん、ママが元気になるまで私の家に来ない?」

 とアスカが誘ってみた。


 エリナもやはり一人は心細かったのか、アスカの家に行く事にした。


 


 アスカの家に帰ると、アスカの母も帰っていて食事の準備に入るとこだったという。


 「あら、エリナちゃんじゃない。何かあったの?」


 アスカが母に説明すると、母は思い当たるような顔をして話し始めた。

 「旦那さん亡くしてからあまり見かけなくなってたものね‥‥でも、病院で治療してもらえたなら一安心ね」


 エリナも不安な中で笑顔を作って心配かけないようにしている。


 アスカの母がそれならと、元気になるような子供が好きそうなものにしようと料理を始める。


 アスカも、エリナから不安を紛らせようと、持っているぬいぐるみや絵本などを渡してみる。


 エリナは、そんな二人の気遣いに応えようとアスカの提案に積極的に乗るようにした。


 そして、エリナ自身も不安には違いないが、ママが元気になることを医者に託しているので、母が戻った時の嬉しい気分を想像する事にした。


 そうだ‥‥


 元気がなかったママが元気になるんだもん‥‥


 その日を楽しみにしないと‥‥



 幼いながらも必死に不安を振り払おうとエリナは試みるのであった。





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