075 エイスの手紙
エイスの願いも空しく、テトラは間もなく天に召されてしまった。
どうしてこんなことに‥‥
エイスは眠るように召されてしまったテトラの顔を見ながら涙を流す。
どの種族よりも長く生きられるエルフなのに、こんなに幼い子供なのに、こんなにあっけなくお別れしないといけないなんて‥‥
エイスは悩む。
この子は友達もいなくて、一人きりで遊んでいたから天国でも一人きりのはず‥‥
急に私たちがいなくなって寂しくて泣いているかも知れない‥‥
オバル‥‥
あなたのことも勿論愛している‥‥
オバルが魔物討伐から戻ってきたのは、二日後だった。
大きな荷物を床に下ろした時にオバルは異変に気づいた。
いつもなら、帰ってきたら出迎えてくれるのに誰も返事がない時点で胸騒ぎが始まっていた。
家の中を歩き回り、テトラの部屋で二人の遺体を見つけた時、オバルは静かに涙を流す。
一見二人とも寝ているように見えるが、生きているオ-ラを感じない。
急に二人を失ってオバルは理解が追い付かない。
だが、二人はもう目を覚ますことはないという事実だけが身体に刺さってくる。
ああ‥‥どうして‥‥
一体何があったというんだ‥‥
ふと、テーブルの上にある手紙を見つけた。
エイスの文字だ。
手紙には、二人が苛められていた件と報復したこと、そして報復したことでオバルが族長候補から外されてしまうのではないかと心配しており、迷惑を掛けるかも知れないこと。突然テトラが脳に悪霊が憑いたこと。エルフの医者も手の施しようがなかったこと。などが記されてあった。
そして最後には、
『私はテトラと一緒に参ります。テトラは急に一人きりになって寂しいはずなのです。テトラは今までも友達もいなくて、一人きりで遊んでいたから、私たちのいない天国でどうしたらいいのか、きっと分からないと思います。でも、私がいけば残されたあなたが寂しくならないか心配です。一生懸命悩みましたが、テトラはまだ幼いから私がついてあげることにしました。ごめんなさい、あなた。わたしもテトラも、あなたを愛しています』
と書かれていた。
オバルは二人を優しく抱きしめながら一晩中泣いた。
泣きながら二人の思い出を振り返る。
エイスの作る料理がとても好きだった‥‥
テトラの愛くるしい言動がとても好きだった‥‥
エイスの考え方が人間ぽくて好きだった‥‥
テトラが初めて笑ってくれた時、私はとても感動したんだよ‥‥
オバルは二人の思い出を幾つも幾つも幾つもあげていくのであった。
暫くして、オバルは二人を土に還した。
土に埋もれて見えなくなって、二人の死が現実味を帯びてくる。
もう二人には会えない‥‥
私の記憶の中でしか会う事が出来ない‥‥
私は悠久の時と同じく長い時間ゆっくり愛していくつもりだった‥‥
こんなに早く別れてしまうなんて想像もつかない‥‥
ああ‥‥寂しい‥‥
寂しくてたまらない‥‥
私は君たちが思うほど強くはないんだ‥‥
信じたくない‥‥
受け入れられない‥‥




