074 私が行ったことのない場所
何の実績もない100%素人の作品です。
一生懸命書いてますので読んでいただけたら幸せです。
それからはジニアもすっかり大人しくなり、苛め問題は無くなった。
ただ、その後はエイスとテトラ一緒に行動するようになった。
テトラは積極的に自分だけの秘密の場所をエイスに教えていった。
「ほら、ここはきのこがいっぱいあるの」
「ほら、ここはお花がいっぱい!」
「あれ見て、綺麗なお水が上から落ちてくの!」
と、ニコニコしながら紹介する。
実はエイスはどの場所も知っているのだったが、知らないふりをして聞いている。
エイス自身も幼い頃に森を散策しながら偶然見つけた場所ばかりなのだ。
そう言えば、私もテトラと同じように、母に教えていたわね‥‥
きっと母もとっくに知っている場所だったんだわ‥‥
でも私は得意気に色んな場所を教えてた‥‥
だって母はその度にすごいわねって笑顔で褒めてくれたから‥‥
何より、言いつけを守って行ってはいけない場所には踏み込んでいない事が分かって安心した。
改めてこの子は私たちの子供だ、と愛しさが増してゆくのであった。
ところが、ある日。
テトラは突然具合が悪くなり、寝込んでしまう。
オバルはまだ魔物討伐から戻ってこない。
ある程度の病に抵抗する薬の知識はもってはいるが、正しい処方をしなければかえって危なくなる。
どうしてこんなことに‥‥
取り敢えず医者に診てもらおうと、連れてくることにした。
エルフの医者は人間の医者と同じように触診なども行う他に悪いところをオ-ラ的なもので見抜くスキルをもっている。
すると、テトラの全身がぼやける中で特別黒い部分が浮き上がる!
医者はエイスに告げた。
「脳に悪霊がいるようです」
悪霊というのは腫瘍のことになるだろう。
この世界では理解を越えるものは霊的な現象として判断される。
しかし、手術的な技術はこの世界にはない。
対抗出来るとすれば、聖職者になるが脳の腫瘍ともなるとそれなりのレベルがないと除去出来ない。
さらにこの時代の聖職者はこの広い世界に数人程度しかいない。
ましてやこんな森の中にいようはずがない。
エイスは絶望する。
エルフの医者も手の施しようがないので、鎮痛剤を渡して帰ってしまう。
テトラが目を覚ます。
「ママ‥‥」
エイスは呼ばれてハッとして笑顔を作る。
「起きたの?テトラ‥‥お腹空いたかな」
テトラは、うん、と返事して話しかけてくる。
「まだいっぱい秘密の場所があってね‥‥元気になったら一緒に行きたいな‥‥」
「そうね‥‥」
エイスは必死に明るい声でそう言うのが精一杯だった。
あなたはあとどれくらい生きられるの?‥‥
私の方があなたより教えたい場所がいっぱいあるのよ‥‥
今は幼いから行けないところも多いけど‥‥
森の中だけじゃない‥‥
外の世界の方が遥かに広いことを知って欲しかった‥‥
それに‥‥
あなたはエルフなのよ‥‥
これから数十年、数百年、千年以上も生きられるはずだったのよ‥‥
あなたに友達が出来たら紹介してほしかった‥‥
あなたに素敵な人とお付き合い出来たら自慢して欲しかった‥‥
私とオバルの馴れ初め話もしたかった‥‥
あなたは私より先に、私が行ったことのない場所へ行ってしまう‥‥
神様お願いします‥‥
この子をこんなに早くそちらに連れて行かないで‥‥
読んでいただいてありがとうございます。




