071 悩むエイス
オバルが狩りから帰り、家族の団欒が始まる。
エイスが料理を並べながらオバルに尋ねる。
「東の魔物はかなり掃討できたよ。森は私たちの生きていく世界だ。君たちが安心して採集出来るように頑張るよ」
と言った。
また、テトラに尋ねると、テトラは笑顔になり
「楽しかった!綺麗なお花が咲いてる場所も見つけたよ」
と話してみせた。
「そう!今度ママにも教えてね」
とエイスが言うとテトラはいたずらっぽく笑って
「え~、ないしょだもん」
と言った。
だが、内心エイスだけは強がっていた。
そして、自分の話題をさせないようにオバルやテトラに話を尋ねていた。
エイスの事を聞かれたら、誤魔化さなければならない。
さらに誤魔化してもオバルには見抜かれてしまいそうだ。
エイスは、今度ここに行ってみたいとか、料理の味はどうとか、さっ、お風呂にしましょう、などと先手を打って話すようにするのだった。
そんなある日。
エイスが風邪をひいてしまう。
テトラは何かしようと、後日食べようと残していたおやつや、森に出て木苺などを採って、寝ているエイスのところへ持ってきた。
「ママ、これ食べて」
エイスは受け取りながら
「近くに来たら風邪がうつると言ってるのに‥‥」
しょうがない子ね、と涙を浮かべる。
幸い、その後エイスの風邪が治り、いつもの生活に戻るとエイスはまた苛めに苦しめられていく。
「エイス、こんなとこで山菜なんか採ってていいの?」
含みのある問いにエイスは問い返す。
「どういう意味?」
「オバルったら浮気してるらしいわよ~」
根拠のない話だ。
「若いし、子供を授かる実績がある。他の女もほっとかないよね~」
これを言われると不安に駆られてしまう。
それにしてもまさかオバルが‥‥
ううん、そんなはずない‥‥
私たち家族に嫉妬した言葉だ‥‥
エイスはただ、気にしてはいけない、と自分に言い聞かせるしか手段がなかった。
エイスが家に戻り料理の準備を始める。
たしかに‥‥
この家族はオバルがエルフとして優秀なだけで私やテトラは普通過ぎる‥‥
オバルがこの先偉大になっても私が偉大なわけじゃない‥‥
私は夫の足を引っ張るだけのダメなエルフになってしまうんだろうか‥‥
私が‥‥
強いエルフなら良かったのに‥‥
幼い頃からエイスは大人しい性格。反撃するとか攻撃するなんてことは思いつかないし身体が動かない。
相談出来る友達もいない。
私には何もない‥‥
そうだ‥‥
夫に族長候補から降りることを提案するのは‥‥
ダメだ‥‥
その理由として苛めについて話すことになる‥‥
私は族長じゃなくても夫への愛は変わらないけど‥‥
順調なオバルとは裏腹に苛めに悩まされていくエイスには打開策が見つからないのであった。




