069 幽霊の女の子 2
それからというもの、白い髪の赤いワンピースの女の子は預かり所の中で見かけることになる。
初めは三人の赤ちゃんがグズリだした時に、いつものようにマリーが対応しようと赤ちゃんに近づくと、赤ちゃんは天井を見て不思議そうな顔をしていた。
マリーは天井を見上げるが何もない。
そのうち、赤ちゃんたちが天井を見てケラケラと笑い始めた。
マリーが天井と赤ちゃんを交互に見てみたが何で急に機嫌が良くなったのか分からなかった。
また、黒犬族のドマが育児スペースで横になっていると白い髪の女の子を見かけた。
女の子は反対側の壁に歩いていく。
ドマは、見かけない子が入ってきたのか、と女の子に呼び掛ける。
「君、どこの子かな?ちょっと、待って‥‥」
と、その時、ミルクが階段を登って飛び移るための板に差し掛かった時、足を滑らせた!
「危ない!」
ドマは瞬時に獣化して犬となり飛び込んだ!
板から落ちるミルクを下に滑り込んだドマがふかふかの背中で受け止めた!
ドマが安心してミルクを抱いた時には女の子の姿はなかった。
さらに調理場でフェリーナとイリスがおやつのパンケーキを作っていると、二人しかいないはずなのに他に誰かいるような気配を感じる。
フェリーナがキョロキョロ見渡すが他には誰もいなかった。
変だなと思いながら、お皿にパンケーキを乗せて並べていく。
「えっ!どうして!」
「どうしたんですか、イリスさん」
「こ、これ‥‥」
最初に乗せたパンケーキの一部を囓られていた!
二人が周りを見渡すがやはり誰もいない。
「誰がパンケーキ食べたのお?‥‥」
二人は育児スペースに避難して、空いているこどもに抱きついた。
抱きつかれたハナはフェリーナにどうしたの?と尋ねると、幽霊がいるみたいだと言ってみた。
ハナは心当たりがあるらしく、
「あの子のこと?」
と言った。
フェリーナがビクッとしながらハナが指した方向を見ると、見慣れない女の子がいる!
「あれ?誰なのかな。新しい子?」
「ううん。前からここにいるんだって」
「いやいや、前からってどういうことなの?預かり所は私とハナちゃんとバルトさんが最初でしょ」
「うん。だからそのもっと前からじゃないかな」
「ええ?!‥‥そう言えばこの子、エルフ?‥‥」
イリスが抱きついたミアは、この女の子と少しお話ししたらしい。
「昔、この町は森だったんだって。その子はその頃から住んでたのよ、って言ってたよ」
「じゃあ、サイハテブルグが出来る前ってこと?」
「うん。でも、強い魔物が増えてきて、この辺りは平原にされてしまったの」
「それにしても、サイハテブルグ自体、百年近くの歴史があるのよ。いったい‥‥」
そこへクエスト帰りのバルトが育児スペースに入ってきた。
バルトが戻ると、こどもたちは一斉にバルトの元に駆け寄る。
「バルト、おかえり~」
バルトは一人一人頭を撫でていると、見慣れない女の子に気づいた。
「この子は初めてだな。私はバルトだ。よろしく」
すると、アリスが教えてきた。
「バルト、この子幽霊やで」
「幽霊?はっきり見えているようだが」
「昔からここに住んでたんやて」
よく見るとエルフのようだ。エルフならば彼が分かるかも知れない、とギルドマスターのオバルを呼んでみた。
バルトに呼ばれてオバルが育児スペースに現れた。
オバルに幽霊の女の子を紹介する。
オバルは一目見て誰か分かったようだ。




