067 恐怖心を払え!
オ-ガデーモンは戦士のデーモンというだけあり、大柄な体格に分厚い筋肉を搭載している。
顔つきも悪魔よりも鬼寄りで、武器も棍棒を持っている。
アスカは魔物を初めて見る!
図鑑や授業でどんなものかは知識として知ってはいたが、実際に目の前の魔物を見るとアスカは恐怖で平常心を失ってしまった。
「まあ、怖いよな‥‥無理はしなくていいぜ。あれはオレたちだけでも倒せる魔物だ」
ジャンがフォローする。
「オレたちが戦ってるうちに、いけそうなら参戦すればいいよ」
ウィリアムがそう言った。
「では、行こう!」
ビスマルクが声を掛けてオ-ガデーモンに向かって行った!
倒せる魔物とはいえ、強敵である。
オ-ガデーモンが威圧を放つ!
範囲内の相手に恐怖心を抱かせるスキルだ!
ジャンとビスマルクは何とか抵抗していたが、ウィリアムは恐怖で動きが止まってしまう!
離れてはいたが、アスカもさらに恐怖し、しゃがみこんで悲鳴をあげている!
「ちいっ!オレが相手だ!挑発!」
ジャンがアスカと反対側に周り、オ-ガデーモンを自分に向かせた!
オ-ガデーモンの棍棒がジャンに襲い掛かる!
ジャンが盾で防ぐが、大柄な体格からの一撃はかなり重い!
ビスマルクががら空きの背中に得意の三段突きを撃ち込む!
「トリプルスピア!」
オ-ガデーモンを渾身の槍で突き刺したが、鋼鉄の筋肉が弾き返す!
ここでウィリアムが恐怖心を払い、斧を手に振りかぶる!
「喰らえっ!ランペイジ!」
遠心力に加えて斧の重量を載せた強烈な一撃を撃ち込む!
だが、やはり鋼鉄の筋肉の鎧が通さない!
アスカは恐怖で震えながら三人の戦いを見ている!
やっぱり魔物は強い!‥‥
渾身の一撃もあの筋肉が弾き返してしまう‥‥
私がこのクエストを選んでしまったから‥‥
でも‥‥
この人たちは嫌な顔もしないで受けてくれた‥‥
私をパーティに入れてくれた‥‥
この人たちの優しさに私が応えないでどうする!‥‥
アスカは恐怖心を払うかのように叫ぶ!
「うわあ--ァァアああ!」
アスカは再び恐怖に陥る前に魔法を放つ!
「風魔法、ゼロ摩擦!」
オ-ガデーモンの足元が僅かに浮き上がる!
何が起きているのか理解出来ない様子のオ-ガデーモンに三人の戦士が怒涛の攻撃を繰り出す!
それまで地面を踏ん張る事で弾き返していた攻撃も、ゼロ摩擦により踏ん張れなくなり、本来以上のダメージがオ-ガデーモンに撃ち込まれる!
明らかに優勢の雰囲気に、アスカは自信を取り戻す!
「ウインドショット!」
無数の風の弾丸がオ-ガデーモンの背中に撃ち込まれた!
これがトドメとなり、オ-ガデーモンを討伐した。
その後、アスカは目的の山菜を採り、三人の戦士たちに感謝を述べた。
「本当にありがとうございました!」
「いや‥‥礼を言うのはオレたちだ‥‥」
ジャンが申し訳なさそうに言った。
アスカは、寧ろ自分が恐怖で参戦に遅れてしまった事を気にしていたのだ。
「さっきのオ-ガデーモンは同じ個体だが、稀に出てくるネームドと言われるノートリアスモンスターだ」
とビスマルクが説明する。
「ネームド?」
アスカが尋ねる。
「ネームドは同じ魔物の個体でも実力が何ランクも上なんだよ。因みにさっきのは『殺戮のジョンブルゾック』だ」
とウィリアムが補足した。
「要するにオレたちだけじゃ勝てない相手だったのさ‥‥」
ジャンはアスカに正式にパーティの一員に改めて勧誘する。
アスカはジャンの申し出に感激する!
「はい!よろしくお願いします!」




