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065 風魔法の可能性

 改めてギルド内にいる冒険者を見てみる。


 戦士たちはレベルに応じた鎧や魔力が込められたような武器を持っている。


 魔法使いを見てみても高級そうなロープを身につけており、杖も格が違うのが分かる。


 アスカは自分を客観的に見て溜め息をつく。


 魔法学校の制服に、教材で使う杖と帽子と魔導書。


 誰が見ても、こないだまで学生でしたと言っているようなものだ。


 かといって、今は新しい装備を買う余裕なんてない。


 


 何かオリジナルの魔法を身につけてベテランとは違うアピールが出来れば‥‥


 


 って、オリジナルが出来れば苦労しないし‥‥




 でも、何もしなければずっと無収入のままだ‥‥





 アスカは一念発起して、仕事中の母に相談する。


 「お母さん、ごめん!今の私だと何も出来ない事が分かったの!暫く一人でやってみたいことがあるから、家には帰れない!」


 クロエは何か分からないが、アスカが必死に訴えている事を信じる。

 「分かった。納得するまでやっといで!」


 「私が稼ぐからって言ったのにごめんなさい‥‥」


 「初めから上手くいく人もいるだろうけど、苦労した方が人に深みが出る。人生これからなのよ!いっぱい遠回りしなさい!」


 人一倍苦労させてきた母に言われてアスカは涙を流す。

 そんなアスカにクロエは路銀を渡す。

 

 アスカは驚いて返そうとする。

 「アスカ、持っていきなさい。学費を払う分が浮いてるから気にしないの」


 だが、これを出すということは母は生活費を切り詰めるという事だ。

 「ママはアスカの事、信じてる!アスカが頑張ったら、ママも頑張れるわ!」


 さあ、行きなさい!と明るく励まされアスカは流れる涙を拭った。



 アスカは決意する!


 甘えるのはこれが最後だ!‥‥


 風魔法は自由と可能性がある!‥‥


 私にしか使えない魔法を探してみせる!‥‥






 サイハテブルグを出て、山の麓辺りで山籠りをする事にした。


 テントを安く譲ってもらい、最低限の食料と水。


 それらを準備すると、アスカは考える。



 そもそも今使えるウインドショットにウインドシ-ルドだって、先生からイメージを教えてもらって具現化した魔法だ‥‥


 だったら風をイメージして、こういう魔法やりたいとひたすら練習すれば出来るはずなんだ‥‥




 ウインドシ-ルドは強烈な風を作り出して相手の攻撃に対抗するもの‥‥


 ただ、この強烈な風というのが、自分の後ろから前へ持ってきた風を下から上へ流し続けるというもの‥‥


 これを応用出来ないだろうか‥‥


 自分を後ろから押してみる‥‥


 追い風‥‥


 自分の動きに合わせて追い風をしてみたらどうなる‥‥



 斜め前に動くと同時に追い風をイメージする。


 電動自転車の最初の踏み出しのように、ドンと加速するのを感じたが、バランスを崩して転倒してしまった。


 


 出来る‥‥


 これをマスター出来れば色んな方向へ高速移動が出来るはず‥‥




 何度も転びながらも手応えを感じるアスカ。


 ギルドマスターが言っていた通りだ‥‥


 風魔法は自由と可能性がある!‥‥


 

 アスカは私にはこれしかない!と毎日同じことを続ける。


 その延長で、全力で走りながら自分を下から押し上げるイメージをしてみた。


 ふわり、と少し持ち上がる!


 まさかと思いつつ継続して持ち上げるイメージをしてみると、自分が宙に浮かんでいることに驚く!


 


 魔法学校ては二年間魔法について学んでいたが、実践の時間はそれほどでもない。


 今は起きている時間は全て実践に使える!


 アスカは予想以上に、追い風魔法を習得していく。


 




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