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056 呪縛からの解放

 ケビンが冒険者ギルドに辿り着いた。


 「この中に預かり所が‥‥」

 意を決して入ってみる。


 中は屈強な冒険者で溢れかえっている。


 「ほんとにこの中にあるのかなあ‥‥」


 とりあえずケビンは受付に向かう。


 「あの‥‥ここって、こども預かり所があるんですか?」


 「ありますよ。そこのドアよ」


 「ありがとうございます」


 緊張気味にドアを開ける。


 そこには駆け回る幼いこどもたちに、角には赤ちゃんが寝ている。白い子猫もいれば黒い大きな犬もいる。


 保育士らしき大人たちもいるようだ。


 ここが、こども預かり所なんだ!‥‥


 バルトがケビンに近づいて、

 「入所希望かな」


 「はい。ケビンと言います。妹もいるんですが、助けてほしいんです!」

 

 「事情を教えてもらえるかな」

 バルトと三人の戦士を中心にみんな耳を傾ける。


 「オレたちの両親は商人をやっていて貴族とも取引があるせいか、自信過剰なとこがあって思い通りに育てないと気が済まない性格なんです。期待にそぐわないとオレたちは殴られてきました‥‥」


 「ふむ‥‥仮に君たちを保護したとしても、虐待の証拠がほしいところだな‥‥」

 と、バルトが言う。


 「証拠なら、これでどうですか」

 ケビンは服を脱いで上半身を見せた。


 腕や背中などに殴られた跡がある。戦士たちはその様子に怒りを覚える。


 すると、奥にいたウメが近くにきた。

 「これでは証拠としては弱いわね。どこかにぶつけたんでしょ、ってシラをきられてしまう。それと、保護した状態は誘拐されたと逆にこちらが不利になるわね」

 

 「出来れば言質が欲しい。つまり言葉の証拠だ」

 とバルトが言った。


 ウメがさらに言う。

 「この子の妹さんは家にいるんでしょ?無事なうちに保護したいわ。バルトさん、今から行きましょう」


 と、バルトとウメとケビン、そしてジャンたち三人の戦士が行くことになった。


 




 一方、ジュリアは親から殴られないように反発せず、従順にするようにしていた。


 怖い‥‥


 いつまでこんな生活が続くのかな‥‥


 お兄ちゃん‥‥


 早く助けて!‥‥


 



 バルトたちがダンの家に着くと、三人の戦士を外で待機させてウメとケビンを連れて中に入る。


 ダンとダリアが出迎える。

 「え~、貴方たちは‥‥」

 

 「私はバルト、こちらはウメと申します。こども預かり所に務めておりまして、先ほどケビンを保護いたしました」

 とケビンの近くにいるようにした。


 ダンは外面の良さを見せながら話す。

 「保護‥‥我々が何かしたような話しでしょうか」


 「はい。日常的に虐待をしていると伺いました。ケビンの身体を確認しましたら確かに殴られた跡がありました」

 バルトは淡々と話した。


 ダリアがニヤリとして話す。

 「この子、周りもよく見ないで走ることが多くて、あちこちにぶつかるんですよ。そんな、殴るだなんて。ねぇ」


 ジュリアの身体が震え始める。


 やはり強かな親だ。


 「ふむ‥‥子供たちが震えているようだ。私は聖騎士でしてな。万一症状に異変があれば対応しましょう。さ、ジュリアもこちらへ」

 と、バルトの近くに寄せた。


 ケビンはジュリアの腕を見せて話し出す。

 「ジュリアにも、虐待の跡がある。自分の思い通りにならないとすぐ殴るんだ」


 ダンも言い返す。

 「当たり前だろ。親の言うことを聞かないから折檻したんだ。お前たちの為に躾をして何が悪いんだ」


 ダリアも言い返す。

 「私達は貴族と取引してるの。お前たちが恥ずかしい暮らしをしなくて済むのは、商人として成功してるからでしょ。ここまで育ててあげても無能なままだし。死んだほうがよくないかしら」


 それを聞いてケビンが立ち上がる。

 「オレは知ってる!貴族と取引してるのは、海賊と繋がってるからだ!自分の商船を海賊に襲わせないようにしているんだ!」


 ダンは痛いところをつかれて逆上する!

 「ケビン!貴様!」

 ダンがケビンを殴る!


 バルトもウメもじっと耐えて様子を見ている。

 

 ダリアもジュリアに平手打ちを放つ!

 「ジュリア!あんたも今の話し、忘れなさいよ!」

 

 

 と、そこへ騎士団がジャンたちと共に入ってきた!


 予めジャンが騎士団を呼んでいて一緒に待機していたが、中からの声が大きくなり、ケンカのような騒ぎを聞きつけ突入したのだ。


 ダンとダリアが拘束されたのを見て、バルトが子供たちに回復魔法をかける。


 そしてウメが話し出す。

 「騎士団の皆さん、この親は日常的に子供たちを虐待しておりました。また、海賊とも繋がっていたようです。それを記録したものがこれです」


 と、ウメが水晶を取り出した。


 その水晶には、ウメの目線での状況が音声と共に記録されていた。

 「ワタシの記録魔法です。証拠としてワタシも同行させてください」

 と騎士団とウメは、拘束された夫婦と行ってしまった。


 バルトはケビンとジュリアに目線を合わせる。

 「これで君たちは親から離れて暮らすことが出来る。よく頑張ったな!」


 三人の戦士も笑顔で歓迎する。


 バルトとジャンはケビンとジュリアを連れてこども預かり所へ向かった。


 ビスマルクとウィリアムは騎士団まで、ウメを迎えに向かった。


 ケビンもジュリアも親からの長い呪縛から解放された。


 しかし、これからの新しい生活に馴染めるのかという不安も抱えるようになっていたのである。








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