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005 生還

 アイアンタイガ-が全速力でバルトに突っ込んでくる!


 「ヤバい!ナイト、逃げろ!」


 戦士たちが、見るからに凶悪な突進に恐怖を感じていた!


 バルトは足も痺れている!


 逃げたくても逃げられない!


 

 ドシン、という衝撃波が辺りを震わす!


 真面に突進を受けたバルトは一直線に後方に飛ばされた!


 地面に着いてからも勢いは止まらず、二度三度バウンドして漸く止まった!


 「おい!大丈夫か!」


 シャオランが声を掛けながらアイアンタイガ-に蹴りを放つ!


 片手剣のジャンが盾を取り出し、臨時のタンクをしようとアイアンタイガ-の前に立つ!


 しかし、アイアンタイガ-はジャンではなく倒れているバルトを睨んでいる!


 「行かせねえぞ!畜生!」


 槍のビスマルクが全力で突きを撃ち込む!


 「頼む!立ってくれ!ナイト!」


 斧のウィリアムもバルトに近づかせない一心で何度も叩き込む!


 

 バルトは倒れながら思う。


 私が沈めばパーティはたちまち崩壊する‥‥


 その後サイハテブルグが破壊されてしまう‥‥


 フェリーナも‥‥


 ハナも‥‥


 しかし‥‥


 バルトが立ち上がる!


 「ナイト!」


 「あんたがいないとヤバい!」


 シャオランたちが必死に呼び掛ける!


 

 私は一人ではない‥‥


 仲間が私に力をくれる!‥‥


 家族が私を立ち上がらせてくれる!‥‥


 アイアンタイガ-の敵対心固定が切れたのか、目の前のジャンに前足を振り上げた!


 ジャンは恐怖で死を覚悟する!


 「挑発!」

 バルトの挑発が間に合う!

 

 アイアンタイガ-が振り上げた前足を戻して再びバルトに突進する!


 衝撃に備えてバルトの盾が一回り大きくなる!


 「シ-ルドインパクト!」


 突進に合わせてのカウンターが極る!


 アイアンタイガ-は頑強な首が折れる程の衝撃で二度と起き上がる事はなかった。


 


 バルトを含めた五人がサイハテブルグに凱旋した。


 門の中は魔物撃退に感謝を示したお祭り騒ぎとなっていた。


 外にビール樽を持ってきた冒険者がバルトたちに一杯やろうと、乾杯を求めてくる。


 英雄扱いを受けるバルトだが、内心は複雑であった。


 引退を一時考えながらも、家族を養うための戦闘は仕方ないと思っていたところに格上相手の魔物だったため、危ない戦いだったからだ。


 そんなバルトとは対照的にシャオランたちはバルトを褒め称える。


 周りはその英雄譚を聴きながら歓声をあげる。


 そんな中、一際大きい泣き声が近づいてくる。


 フェリーナとハナが民衆を掻き分けながら泣いている。


 「バルトさん‥‥生きてて‥‥良かったああ」


 「バルトぉ‥‥痛くない?‥‥大丈夫なの?‥‥」


 民衆も二人に気づいて静かになる。


 バルトはハナを抱き上げ、フェリーナを抱き寄せる。


 「心配かけたな。大丈夫だ」


 そう言うと二人はさらに大声で泣き始めた。


 「助けてとは言ったけどぉ‥‥」


 「バルトに会えなくなるの、もっといやぁ‥‥」


 

 そうか‥‥


 二人なりに万一、私が倒されたらと心配してくれたのだな‥‥


 ありがたい‥‥




 しんみりした空気を破るようにシャオランが声を掛けた。


 「なあ、みんな無事に生還したんだ。奢らせてくれよ!」


 「いいね!パーっと呑んで食おう!」

 ジャンも合わせる。


 「勿論、オレたちも奢らせてもらう」

 ビスマルクも促す。


 「決まりだな!」

 最後にウィリアムの一声で酒場に行くことになった。


 

 翌日、アイアンタイガ-の件は冒険者ギルドからの事後討伐依頼という形となり、バルトたちはギルドから正式に報酬を受けた。


 

 さらに、ギルドマスターのオバルからシャオランと三人の戦士たちに預かり所の事を相談された。


 「話しはわかった。だけど、子供たちが増えた時のために保育士が欲しいってんなら、あたしじゃなくて別に募集する方が良くないのかい。だってあたしだよ?子供が恐がるだろ」


 シャオランのその言葉に三人の戦士はニヤニヤしている。


 しかし、オバルの見立ては違うらしい。


 「私が見たところでは貴方はこの仕事に向いていると思うよ」


 「どこを見たらそうなるんだよ‥‥」


 オバルはその真意を話さなかったが、人を見る目には定評があるようだ。


 「そして、戦士の君たちには預かり所のためのクエストをこなして欲しい。報酬は通常分に加えて、ギルドからもさらに同じ報酬を出そう」


 三人は二倍の報酬と聞いて前のめりになる。


 オバルは続けて話す。

 「その中から四分の一を預かり所に寄付してもらいたい。つまり君たちの報酬は通常クエストの1.5倍というわけだ」


 「なるほど‥‥ということは‥‥どういう事だ?」

 ジャンは計算が苦手らしい。


 「例えば報酬1000デルマのクエストをこなしたら2000デルマもらえるんだが、預かり所に500デルマを寄付するんだ」

 と、ウィリアムが捕捉した。


 「悪くないんじゃないか?」

 ビスマルクが言う。


 「来週辺り預かり所のリフォームが終わるようだ。是非バルトたちに力を貸してやってくれ」


 オバルは四人に頭を下げた。


 四人はマスターのオバルの姿に恐縮しつつ、この件を受ける事になった。





 

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