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049 酷い母親

 五歳のセシルは何をしていいのか分からなかった。


 おむつの場所も分からなければ、ミルクも作れない。


 せめておむつを新しくしてあげようと、代わりにタオルを巻いて水を哺乳瓶に入れて飲ませていた。


 水では空腹は満たされない。


 しかし、赤ちゃんを布団に寝かせて何とか眠りにつくように優しく根気よく寝かしつけた。


 そのうち疲れのためか、セシルも隣で眠ってしまった。


 



 セシルは赤ちゃんの泣き声に目を覚ます。


 もう日が暮れ掛けている。


 もう一度おむつを新しくしようと、タオルを巻いて、哺乳瓶に水を入れて飲ませる。


 しかし、水では嫌なのか泣き止まない。


 セシルはそれでも飲ませないと赤ちゃんが危ない、と宥めながら飲ませるように頑張ってみる。


 両親はまだ出掛けたまま戻ってこない。


 飲ませることが出来たら、外に出て助けを求める?‥‥


 でも、その間に赤ちゃんに何かあったら‥‥


 早く‥‥


 帰って来ないかなあ‥‥



 そんな時、家に誰かが来た。


 「こんばんは、赤ちゃんしかいないのかしら」

 と、ジェルメ-ヌが訪ねてきた。


 セシルは、助かった、とジェルメ-ヌに事情を話す。


 ジェルメ-ヌが慌ててミルクを作りながら、おむつを探す。


 おむつはタンスにあったが、セシルには届かない位置にあった。


 ミルクを人肌にして哺乳瓶で赤ちゃんに与えることも出来た。


 セシルは安心して涙ぐむ。


 ジェルメ-ヌは両親が朝から出掛けて帰ってこないことを知り、かなり怒っている。


 「セシルちゃん、あなたも何も食べてないんじゃない?こういう事はよくあるの?」


 セシルは泣きながら話し出す。

 「ここまで放ったらかしなのは初めてだけど‥‥赤ちゃんのお世話は毎日やらされてて‥‥ママも怒ってばかりなの‥‥」


 「ひどい‥‥」


 「パパはそんなママを怒るけど、パパはわたしたちのこと好きじゃないみたい‥‥」


 その時、ジネットが戻ってきた。

 「ジネット!あなた今までどこにいたの!」

 ジェルメ-ヌがジネットに詰め寄る!


 ジネットは悪びれもせず、

 「何でここにいるの、ちょっと出掛けてただけよ‥‥」


 「ちょっとじゃないでしょ!朝から今まで何時間になると思ってるの!」


 「気分転換したかったのよ!もういいでしょ、帰って!」


 と、強引にジェルメ-ヌを出してしまった!




 


 仕方なく家に戻ったジェルメ-ヌは夫のクリストフに相談する。

 「何だって‥‥セシルちゃんは五歳だろ‥‥赤ちゃんの相手は大人だって大変なのに‥‥」


 「それに日常的にセシルちゃんに赤ちゃんを任せてるらしくて‥‥もう、私頭に来ちゃって」


 「子供がいるだけでも幸せなのに、子供を苦しめるなんて‥‥」


 「このままだと子供たちが危険だと思う‥‥私が時々様子を見に行ってみるわね」


 


 

 ところが、その日の夜に事件が起きる。


 ジネットは自分のことを棚に上げてセシルを叱る。

 「こんなにタオル使って!あれこれ出しっぱなしだし、ちゃんと片付けなさいよ!」


 セシルは幼いなりに酷いママだと感じていた。


 言われた通りに片付けをしていると、赤ちゃんがぐずり始めた。


 セシルに片付けをするよう言った手前、ジネットが赤ちゃんをあやすが途端にギャン泣きされてしまう。


 「何でこの子は私を困らせるのよ!泣き止んでよ!」


 「ママ‥‥赤ちゃんが怖がるよ‥‥」


 「うるさいっ!」


 ジネットは泣き止めとばかりに赤ちゃんを乱暴に揺らした!


 「ママ!まだ首がすわってないよ!」


 ジネットはハッとして揺らすのを止めたが赤ちゃんはぐったりしてしまう!


 咄嗟にセシルは外へ助けを呼びに行く!


 「誰かあ!誰か助けて!」


 そこへ偶然通りかかったジャンがセシルに近寄る。

 「どうした?何かあったのか!」


 セシルは赤ちゃんを助けて、死んじゃう!と必死で話している!


 ジャンはセシルに案内されて家に向かった!




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