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044 父がしてきた事

 フェイウォンは暫くそのまま苦しんでいたが、やがて痛みが引いていき、翌日は仕事を休む事にした。


 シャオランには内緒で医者に診てもらう。


 医者は険しい顔でフェイウォンに伝える。

 「胃ですね‥‥かなりストレスが溜まってらっしゃるのではないですか」


 たしかに‥‥


 仕事では先方に謝罪したり、部下の成長もいまいちに感じる‥‥


 上からも失態について追及されてしまうし‥‥


 何よりシャオランと上手くいかないのが一番辛い‥‥


 だが‥‥


 シャオランが独り立ちするまではオレが支えたい‥‥


 「フェイウォンさん、これは医者では治せないが、僧侶なら治せる者がいるかもしれない。冒険者ギルドに行ってみては‥‥」


 それで冒険者ギルドに足を運んでみたが、あいにく僧侶はパーティに誘われたのか一人もいなかった。


 


 フェイウォンは、ふとシャオランの様子を見たくなった。


 娘が修行をしている師匠の道場へ歩いていく。


 道場の外の広場にシャオランがいた。


 


 一心不乱に修行に励む娘を見てフェイウォンは、何故か泣けてきた。


 帰りながら買い物をしてから家路を歩く。


 だが、家に着く前に再び激痛が襲い掛かった!


 



 修行を終えたシャオランが家に帰ると、隣のおじさんが病院に行くように言われる。


 何事かとシャオランが急いで病院に着くと、部屋を案内されて中に入る。


 医者が、ベッドで横になっているフェイウォンの横に立ち、シャオランに頭を下げる。

 「お父さんは‥‥たった今、天に召されてしまったんだ‥‥力及ばず申し訳ない」


 医者では治せないが、痛みを和らげることは出来る。しかし、症状が悪化してそのまま亡くなったらしい。


 「最後まで君の名前を叫んでいてね‥‥必死に謝って‥‥いたんだ‥‥」


 シャオランは突然の事で訳が分からない。


 呆然として医者の話を聞くしか出来なかった。


 


 家に父の遺体を運んでもらい、シャオランは父のことを考える。


 

 気づいた時には仕事ばかりしていたんだよな‥‥


 考えてみりゃ朝早く仕事して夜遅く帰ってくるんだ‥‥


 疲れも相当だよな‥‥


 


 そして、葬儀の日。


 ひっそり行うつもりだったが、フェイウォンの仕事仲間やその先方の人など多くの人が集まった。


 「あなたが娘さんかい?私はお父さんの部下の者でね‥‥」

 と、自分のミスをフェイウォンが必死に謝罪してくれて感謝していることを告げてきた。


 そのような部下が何人も来て、私も助かりました、ありがとうと、次々と礼をしていった。


 また先方らしき人からは、

 「フェイウォンさんは、誠実な方でね‥‥一番信頼していたんだよ」

 と、涙を流して話していた。


 


 それらを聞いていくうちに、父の仕事ぶりを段々理解していく。


 謝ってばかりだったのは、部下の失敗を庇っていたんだ‥‥


 それに仕事相手からの信頼も厚かったんだな‥‥


 


 そこへ父の上司がやってきた。

 「君のお父さんには凄く助けられたんだけど、我々もその優秀さに甘えてしまった‥‥相手の信用が壊れると会社も危なくなる。君のお父さんを会社の盾として守ってもらっていた‥‥それが、身体の病気に繋がってしまい、本当に申し訳ない!」

 と崩れるように泣いていた。


 「それとね、お父さんは君のためにお金を貯めていたんだ」

 父のもう一人の上司が通帳をシャオランに渡す。


 名義はシャオランになっており、長い年月をかけて少しずつ預けていたようで、300万デルマを越えていた。


 「君が一人前の冒険者になった時のために残していてね。私に預けていたんだよ」


 

 シャオランは、父が自分の将来の事をちゃんと考えてくれていたことを知る。


 「なんだよ‥‥家のことは何一つ関心がないと思ってたのに‥‥」


 シャオランは、そういえば医者から渡された二つの箱があった、と箱を取り出す。


 病院に運ばれた時に父が持っていた物らしい。


 仕事に使う物でも買ったのだろうと中を見ていなかったが、開けてみるとカンフーシュ-ズと、もう一つには格闘家の装備が入っていた。


 シャオランは父が自分のために色々思ってくれていたことに初めて気づき涙が溢れてくる!


 

 あたしは父に何かしてきたか‥‥


 肩たたきとかしてあげればよかったな‥‥


 毎日疲れてるのを見てたのに‥‥


 ゆっくり休んでいいよ、とか言えば良かった‥‥


 あたしは父に何も出来なかった!‥‥


 謝るのはあたしだ!‥‥


 ごめんなさい‥‥




 


 「‥‥とまあ、こんな感じだったんだ。‥‥ってミア、寝てんのかよ‥‥」

 シャオランはミアをそおっと抱き上げて部屋まで運んで寝かせた。


 シャオランは話をしたことで父を思い出し、窓を開けて空を見つめるのであった。






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