043 シャオランの父
それは普段の会話からだった。
「シャオランのお父さんは厳しい人だったの?」
と、ミアが聞いた。
シャオランが、こどもたちを注意することがよくあるからだ。
「いや‥‥厳しくはなかったな。あたしが厳しいって感じるのは、格闘家の師匠の影響だろうね」
とシャオランが答えた。
「じゃあ、お父さん優しかった?」
ミアは物心つく前に父が他界したので、父親というものをよくわかっていない。
「家の中じゃだらしなかったな‥‥って、聞きたいか?」
頭を掻きながらシャオランが言うと、ミアは興味があるらしい。
シャオランの父親は建設工事の会社員で、王族や貴族からは勿論、平民の新築から川を渡る橋の建設、高層建築などを請け負っている会社ゼップンの中間管理職にあたる。
サイハテブルグだけでなく、レーベン王国に幾つか支店を持つ。
役員以上は貴族だが、社員はほぼ平民だ。
シャオランの父、フェイウォンは妻のシュウランと社内恋愛の末に結婚して翌年シャオランが誕生すると、これまで以上に仕事に精を出して頑張った。
その甲斐もあり、シャオランが八才の頃には建築部門の工事長となり、生活はかなり余裕が出るようになった。
だが、シャオランとシュウランはそんなフェイウォンに不満があった。
朝早く仕事に出かけて、夜遅くに帰ってくるので、成長したシャオランが相談したいことがあっても、なかなか相談出来なかったり、家では疲れているためゴロゴロしている夫を見て、シュウランもイライラがつのる。
それでも、シャオランは格闘家になるために弟子入りした師匠リーチェンが話し相手になってくれたので真っ直ぐな性格に育っていく。
だが、シュウランはそうなると家で一人きりの時間が長くなり、やがて限界がくる。
「私は家政婦をするために貴方と結婚したんじゃありません。実家に帰ります」
と、離婚することになった。
フェイウォンはかなりショックを受ける。
なんで?‥‥
オレは家族のために死に物狂いで働いてきたのに‥‥
真面目に働いてきた反面、家庭に無頓着になりすぎた。
シャオランも12歳となり、修行を終えれば冒険者となる。
せめて‥‥
シャオランには父親らしいことをしてやりたい‥‥
その思いとは裏腹に、急に仕事が短くなるわけでもない。
シャオランは母の分、家事をやることになり、修行との掛け持ちとなる。
フェイウォンは今度こそ家では威厳を見せようとは思うのだが、毎日の疲れには勝てず、やはりゴロゴロしてしまう。
そんな姿を見ながらシャオランは溜め息をつく。
ある時、シャオランは父の今の建築現場が近くにある事を知り、様子を見てみようと通りかかる。
「注文した材料が違うじゃねえか!」
と怒鳴り声が聞こえる!
見ると、父が部下らしい男と必死に謝罪しているのが見えた。
また別の日も様子を見てみたが、先方に謝る姿が多かった。
「謝ってばかりだなあ‥‥カッコ悪い仕事だぜ‥‥」
シャオランは父にがっかりする。
家でもだらしないし、仕事でも謝罪ばかり‥‥
あたしは父みたいにならない‥‥
一流の格闘家として胸を張って生きていくんだ‥‥
と、父を反面教師にして見るようになってしまった。
そんな日が続いたが、かなり久しぶりに仕事が早く終わり、一緒に食事が出来るチャンスがきた。
「シャオラン、修行の方はどうだ」
フェイウォンが笑顔を作りながら話しかけてみた。
「‥‥別に‥‥普通だよ」
シャオランは父に興味を無くしていた。
「そうか‥‥何か欲しい物とかあるかい?」
フェイウォンは娘に冷たくされても、必死に話しかけてみた。
「あるけど‥‥父さんには関係ないし」
「そうか‥‥すまなかったな、シャオラン‥‥」
妻と離婚されたこともあり、フェイウォンはダメな父親だと、娘にも十分な愛情を与えていなかったと反省する。
シャオランは早々に食事を終えて自主練を始めようとした。
「シャオラン、その‥‥もう少し話さないか‥‥」
「何か話すことあるの?家ではゴロゴロしてるだけだし、仕事も見たけど謝ってばかりでカッコ悪かった!あたしは、あんたみたいにはならない!」
と、シャオランは飛び出していってしまった。
フェイウォンが後を追うが、内蔵に激痛が走る!




