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040 キリリ村からの依頼

 ジャンたち三人の戦士は、クエストの中から懐かしい名前を見つけた。


 「キリリ村からの依頼がある!」

 とビスマルクが二人に依頼書を見せる。


 キリリ村は三人の戦士の故郷で、彼らが15才まで育った村だ。


 クエスト自体は簡単で、小麦が不足しているので届けて欲しいとのこと。


 「もう七年帰ってなかったな‥‥帰省ついでに受けるか?」

 ジャンが言うと、二人は頷いて依頼書を受付に渡した。


 


 少し長旅になることをバルトに告げて、大量の小麦を乗せた荷車を馬に曳かせて、ジャンがその馬に乗る。


 ビスマルクとウィリアムもそれぞれの馬に乗り、三人はキリリ村へ向かった。


 サイハテブルグから遥か東に村があり、馬で二十日は掛かる。


 途中で野宿することは当然だが、若い頃に通ってきた道なので村に近づくほど懐かしさが強くなる。


 「なあ、たしかこの先に綺麗な川があったよな」

 とウィリアムが言うと、二人も思い出してそこに寄る事にした。


 ほどなく進むと川が見えてきた。三人の目当てはその先の小さな滝だ。


 「おお、滝だ!久しぶりだなあ」

 三人は早速馬を休ませて裸になり、川へ飛び込んだ。


 「あの頃と変わらず綺麗な滝だな」

 ビスマルクが懐かしさもあって滝を浴びる。


 「村のみんなも変わってないだろうなあ」

 ジャンがふと言った。


 「村を出て七年だからなあ‥‥それに小麦が不足してるってのも‥‥」

 とウィリアムが言う。


 だが、その時は何故不足してるのかを深く考えてはいなかった。


 


 滝を後にした三人は、また村へと進む。


 



 予定より早くキリリ村に辿り着いた三人は、やはり変わってないと安心した。


 百人程度の小さな村なので、村全体が大きな家族のような感じだ。


 「おや?あんた、ジャンじゃないか。最近見なかったねえ」

 と、おどけた様子で言った。


 「母さん‥‥最近って。七年ぶりなんだぞ」

 ジャンは早速母に出会い、相変わらず冗談好きだな、と微笑んだ。


 「ビスマルクもウィリアムもあまり変わってないねえ。しっかりやってんのかい?」

 母にとっては、二人も息子のようなものだ。


 「いや、背も高くなったし筋肉だってついたよ」

 ビスマルクが突っ込む。


 「おばさんこそ目が悪くなっちまったんじゃないのか?」

 とウィリアムも返した。


 「ところで、依頼人自体がキリリ村になっていたが、小麦はどうしたらいいんだ?」

 とジャンが聞くと、うちで預かるよ、と母は言った。



 それからは、それぞれの家に帰り、懐かしさに浸る。


 「かなり逞しくなったな、ジャン」

 三つ上の兄、ポールがジャンの身体を触りながら言った。


 「まあ‥‥元気そうでなによりだよ」

 父は穏やかな性格で静かにお茶を飲んでいる。


 「あんた、周りに迷惑とかかけてないだろうね?」

 と母が意地悪な目をして言う。


 「‥‥正直、迷惑かけてばっかりだよ。そんな調子良くいかないさ」

 ジャンは自嘲気味に言った。


 「あんたはね。不器用で頭が悪いんだ。でも、取り柄はある。自分がいいと思ったことに真っ直ぐなとこさ。それさえ変わってなきゃいいよ」

 母がぶっきらぼうに言った。


 「まあ、村のことは気にするな。お前も知っての通り自給自足の村だし、助け合ってこれからもやってくしな」

 とポールが言うと、そういえば、とジャンが尋ねた。


 「なあ、何で小麦が不足する事になったんだ?」


 「ああ、小麦畑を広くもってた家族が、今はおばあちゃん一人になってね。今年は育ててないんだよ」

 と母が言うと、ポールが付け加える。

 「所有してた息子夫婦がいたんだが、旦那さんが病で亡くなって、奥さんが頑張ってたんだが、後を追うようにやはり病で亡くなったんだ」


 「その頃から、おばあちゃんが塞ぎ込んじゃってね‥‥近所で見回りに行くんだけど、以前のような元気さはもう‥‥」

 母もどうしたらいいのかわからなそうだった。


 「小麦は隣のジョルダンが引き継いでくれることになったんだけど、おばあちゃんが心配でな‥‥」

 ポールもしんみりとしている。


 「そうか‥‥」

 ジャンは話を聞いて、明日おばあちゃんに会ってみようと決めていた。





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