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038 リンダ王女来訪の報せ

 サイハテブルグを含むこの国はレーベン王国という。レーベン王国は隣国のフォーゲル王国と一触即発の緊張状態となっていた。


 レーベン王国の王女ソフィア・レーベンは、そんな状況を悲しんでいた。


 戦争には至っていないが、お互いの王同士のプライド合戦が国民感情にも影響し、理由なくお互いを嫌いな国だと思うようになったのだ。


 兄であるマルクス・レーベン王子も頭を抱えていて、いい打開策がないかと秘かに信用ある部下に相談しているのだが、王の事だけに下手に動けば身を滅ぼしかねない。






 そんな中。


 隣国のフォーゲル王国のリンダ・フォーゲル王女がサイハテブルグを訪問するという話が持ち上がった。


 リンダ王女もソフィア王女と同じように王同士の不毛な争いに辟易しており、何か出来ないかと思っていたところ、大臣のノエルからあることを提案された。

 「リンダ殿下。最近、レーベン王国のサイハテブルグという町に孤児や行き場を失った子供を預かる施設が出来たようでございます。その施設の訪問をきっかけに、ソフィア王女と御会いなされては如何でしょうか」


 「子供を預かる施設があるのですか?それは興味がありますね。世の中はまだまだ余裕のない民が多いと聞いています。それですのに手を差しのべる施設があるなんて‥‥ノエル卿、名案です。早速、ソフィア王女とサイハテブルグ町長に連絡しましょう」

 リンダ王女は、これが平和への希望になればと光が差した気がするのであった。


 両国の国民は、王同士はいがみ合いがあるのだが、王子、王女に対しては王のようにならない未来の星として期待している。

 

 特にソフィア王女とリンダ王女の人気は高く、その気品への羨望の眼差しと、平和を願う姿勢に尊敬の念を集めていた。


 

 


 後日連絡を受け取ったソフィア王女は、なるほどと即了承の連絡を返して日時を一週間後とした。

 

 サイハテブルグ町長である、ブルーノ・レーベンは連絡を受けると、その足で冒険者ギルドへ向かった。


 ギルドマスターのオバルが、町長の突然の来訪に驚く。

 「ブルーノ様ではないですか、急用でしょうか!?」


 ブルーノ町長はレーベン家の者だけあって、王に雰囲気が似ている。白髪の王を黒髪にして少し痩せるとブルーノになる。四十路で、王の兄弟の四男にあたる。


 「おお、オバル。この度フォーゲル王国のリンダ王女がサイハテブルグに来訪なさるそうだ」

 

 「リンダ王女が!?王都ではなくサイハテブルグにですか!?」

 

 「王都にも勿論参るそうだが、まずはこちらのこども預かり所に興味があるそうなのだ」


 「預かり所に‥‥ですか‥‥」


 「そこで、預かり所を作ることになった経緯など質問されると思うのでよろしく頼む」


 「分かりました‥‥」

 ブルーノはそれだけ話すとさっさと戻ってしまった。オバルは溜め息をつく。


 ブルーノは悪い人ではないのだが、面倒臭いことは丸投げにするところがある。


 取り敢えず預かり所のみんなを集めて話してみよう、と腰を上げる。


 


 


 「えっ!リンダ王女が来るってのかい!?なんで!?いつ!?」

 と、シャオランが言う。


 「リンダ王女は恐らく、この国との緊張状態を懸念して、預かり所の来訪をきっかけにソフィア王女と会談されたいのだろう。来訪は一週間後の予定です」


 と、オバルが言うと、大人たちがざわめいた。

 

 「結構すぐですね‥‥お食事はさすがに王都でしょうか?」

 フェリーナが恐る恐る尋ねた。


 「それが来訪の時間までは分からないので、なんとも‥‥」

 と、オバルが言うと、フェリーナは青ざめた顔になる。


 「料理美味しいから大丈夫だよ」

 ハナがフォローするが、万一お気に召さなかったら命がないかも、と怯えている。


 「食事の好みは分かりませんが、リンダ王女は優しいお方です。ご安心下さい」

 オバルもフォローするが、護衛に怖い人がいるかも、とやはり怯えている。


 「そうだ、ここに来られるんなら、この大きな壁を使ってリンダ王女を歓迎出来ないかな」

 と、ロイスが提案した。


 「いい考えだと思うよ。絵と歓迎の言葉とかを書いてみようよ」

 と、ドマが乗っかる。


 「部屋の装飾もやりませんこと?リンダ王女がドアを開けたら、華やかな部屋になってたら素敵だと思いますわ」

 ジェニファーも提案する。


 「なあ、歓迎の歌を歌っておもてなしとかどうやろ?」

 アリスが、こんな感じの歌やねんけど、と披露してみる。


 次々とリンダ王女歓迎の提案をしていき、三人の戦士たちは必要な物の買い出しに、グリム、ハナ、ミアの年少たちはそれぞれ絵を描くことになった。


 

 


 

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