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030 赤ちゃんを交えて

 赤ちゃんトリオのミゲル、エレナ、ラウラは最近抱っこを嫌がり、床に下ろされると寝返りをうち、四つん這いでハイハイして動き回るようになっていた。


 哺乳瓶から離乳食となり、首もすわっている。

 始めはおかゆを中心に消化の良いものを少しずつ与えていった。

 

 また、ごく少量だが、野菜も与えていく。


 最近では、三人ともお気に入りなのがブロッコリーをお湯で湯がいて冷ましたものをよく食べている。


 「パクパク食べてるけど、旨いのか?」

 シャオランが、何で気に入ってんだという感じで聞いてみた。


 「試しに食べさせてみたら、イケるみたいなの。味はあまりないはずだから、食感かしらね」

 とマリーが言う。


 「しかし、可愛いなあ‥‥ずっと見てられるよ」

 ドマはほっこりしている。


 「赤ちゃんっていつ頃立って歩くの?」

 ハナが質問した。


 「その子にもよるけど、早ければあと二ヶ月くらいね。遅い子はあと半年掛かる子もいるわ。だから、遅いかなあって思っても、その子のペースだから、見守ってあげるのよ」

 マリーがそう答える。


 「早くお話ししたいなあ。いつ頃赤ちゃんっておしゃべりするの?」

 グリムが尋ねる。


 「実はもうおしゃべりしてる子がいるわよ。エレナは、だあだあ、っておしゃべりしてるの」

 マリーが言うと、シャオランが、それおしゃべりだったのかあ、と驚く。


 「ミゲルやラウラもおしゃべりじゃないけど、おもちゃや何かを指差ししたりするでしょお?それが犬のぬいぐるみなら、これは『ワンワン』よ、とか教えたり触らせてあげたりするといいわね。指差しは、ボクそれに興味あるよ、っておしゃべりしてるわけなのよ」

 マリーが答えた。


 「そうでしたの。でも言葉というか会話はいつ出来ますの?」

 ジェニファーが尋ねる。


 「会話となると、来年ね。それくらい赤ちゃんは時間が必要なの。考えてみて、外国の知らない言語を覚えるのに一年で出来る?」

 と、マリーが言うと全員、たしかにと反応する。


 「だから、今のうちから通じなくても赤ちゃんに話しかけてあげるの。絵本を読み聞かせるのもいいわね。童謡を唄うのもいいわ。気をつけるのは、ゆっくりハッキリ話しかけることよ」

 と、マリーが言う。


 「あと、目を合わせてあげたり優しく触れるのもいいわね。赤ちゃんもその方が話しやすくなるの。だからって、みんな一緒に話しかけたらダメよ。赤ちゃん混乱して泣いちゃうから」

 と付け足した。


 

 「そういやマリーって幾つなんだ?」

 とジャンが聞いた。


 「あらやだ、女性に年齢を聞くのはタブーでしょお」

 

 「お前は男だからいいだろ」

 とビスマルクが突っ込む、


 「見た目で判断しちゃダメ。心は乙女なの」


 「お、乙女‥‥」

 ウィリアムが気分が悪くなる。


 その時、赤ちゃんトリオが入り口のドアに向かってハイハイして進み始めた。


 ドアを開けたのはバルトだった。

 「ただいま」

 と姿を見せると、早く抱っこして、とばかりに急いでバルトの元へ向かう。


 バルトはしゃがみこんで赤ちゃんを迎える。


 バルトは優しく一人一人赤ちゃんを抱き上げる。


 「バルトのおっちゃん、無愛想やと思うねんけど、何で赤ちゃんに人気あるんやろ」

 とアリスが聞くとマリーが答える。


 「こう見えて愛情が深いのね。赤ちゃんにはちゃんと伝わるの」


 三人の赤ちゃんはバルトの大きな身体に安心したように赤ちゃん言葉で話しかけたり、顎髭をしきりに触ったり、楽しそうな様子だ。


 マリーが話し出す。

 「彼も最初はこうじゃなかったの。でもね、愛情が赤ちゃんに伝わる事が分かると、急にこうなっちゃったのよ。赤ちゃんだけじゃないわね、彼はあなたたちのことも一生懸命愛したいと思ってる。まあ、分かりにくいかもしれないけど」


 だが、マリーにそう言われてみると、バルトから菩薩のような慈愛をその場にいる全員が感じずにはいられなかったのだった。


 そういえば、とシャオランが思い当たる。


 ジェニファーがバルトに馬になってと言われて、自らすすんで四つん這いになった事があった。


 バルトはその時も、ジェニファーが喜ぶならと愛情優先で動いていたんだ、と。


 シャオランは、赤ちゃんたちにおもちゃにされているバルトを見直して、この人には敵わねえなと苦笑するのであった。








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