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027 馬車の旅

 イリスとグリムは町を出た。


 暫く二人で草原の何もない道を歩く。


 「私ね、旅に出るのが夢だったの。町が変わると雰囲気も全く違うらしいの。楽しみだわ」

 イリスは、環境が変わってグリムの運命も変わってくれたらと一縷の望みを持っている。


 グリムはそんなイリスの気持ちも子供ながら理解していた。


 そうだ、町が変われば周りの人も死ぬことが無くなるかも知れない‥‥


 ボクだって周りの人に幸せになって欲しい‥‥


 次の町がそうであって欲しいな‥‥


 

 そこへ、一台の馬車が通りかかった。


 御者が馬車を止めてイリスに声をかけた。


 「この先は魔物や山賊が出るエリアになる。サイハテブルグまでなら比較的安全なルートを通るので乗りなさい」

と言う。


 イリスはグリムを促して乗せてもらうことにした。


 グリムは馬車に乗りながらも心配している。


 もし、御者のおじさんに異変が起こったりしないかな‥‥


 お願い‥‥


 親切なおじさんに何も起こらないで‥‥


 「しかし、歩いて何処までいくつもりだったんだい。サイハテブルグでも馬車で二週間は掛かるんだよ」


 「そうだったんですか‥‥実は宛はなく、町を探していたのです」

 イリスが言う。


 「そうか‥‥まあ言わなくてもいいが訳ありなのだな‥‥幸い食糧はある。安全なルートは遠回りにはなるが、のんびり行こう」

 御者はそういうと謡い始めた。


 のどかな曲調がグリムの心を穏やかにしてくれる。


 馬車の後ろが開いているので過ぎ去る景色が見える。


 どこまでも広い草原の真ん中を道が伸びている。


 

 周りの人が死んでいく度にボクへの視線が痛かった‥‥


 全部お前のせいだと言われてる気がした‥‥


 ボクも、ボクだって悲しかったんだ‥‥


 


 イリスは横に座るグリムを抱き寄せて頭を腕で包み込む。


 馬車は風を切って走ってゆく。




 馬車の旅も一週間が過ぎる。


 昼と夕方に簡単な食事を済ませ、時折、道の駅のような場所で温泉に入り宿泊する。


 初めから楽しい旅が目的なら、もっと楽しめていただろう。


 いく先々で変化していく景色も素晴らしい。


 イリスはグリムの凍った心をゆっくり溶かすように接していた。


 グリムは相変わらず無表情だったが、心強さは感じていた。


 


 さらに馬車は走る。


 イリスとグリムは何も異変が起こらないので日を追う毎に安心感が増していった。


 御者は相変わらずのどかな曲調で謡っている。


 十日目の夕方。


 食事をしながら御者が話し出す。

 「わしの家系は代々商人でね。安全なルートというのが、家宝になるんだよ。これはこの地方の地図で、行ってはいけない場所が細かく記されている。さらに道の駅や休憩出来る場所も載せている」


 御者は続ける。

 「だがね、この地図を完成させるためには幾つも犠牲があったんだ。記されている危険な場所は、昔は知らなかったからね、入ってしまうことがあったのさ」


 御者はグリムを見る。

 「生きていくためには危ないことも辛いことも経験しなければならない。でもね、その分未来は安全や幸せが待っているんだ」


 イリスもグリムも御者の言葉を噛みしめる。


 辛いことは沢山あった。


 でもいつか報われなきゃ嘘だ。


 せめて、みんな健康で毎日が笑顔でありたい!





 いよいよ明日にはサイハテブルグに到着出来る。


 「もうすぐ新しい町だよ。サイハテブルグは都市に匹敵するくらい大きな町だ。二人ともいい人生を祈っているよ」



 



 

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