025 サイハテブルグ
山賊殲滅が決行され、山道は安全になったかというとそうではない。
未だ山には魔物も生息しているからだ。
山を通る商人は変わらず護衛を十分につけ、クエストなどで訪れる冒険者も、余程自信のある者以外はバランス型のパーティを組む。
そんな中、カムセア家にメスが入る。
フランチェスコ団長は町長の力を借りて、証拠集めに奔走した。
カムセア家の長男が主犯で山賊が誘拐した少女を一人ずつ買い取り、奴隷とする。
あとは、気の済むまで殴る蹴るを繰り返し、死ぬと山賊から新しい少女を買い取り、また奴隷にするという非道さである。
それを、長男の父が揉み消していたので時間は掛かったが、町長の権力でカムセア家に強制的に踏み込むことになった。
警備団を動員し、しらみ潰しに部屋を調べていき、遂に隠し部屋に囚われていた少女を発見する。
少女は、顔が腫れ上がり、身体中は痣だらけで、何ヵ所か骨折していたという。
髪の毛も引っ張られて抜けたのか、だいぶ不自然に量の少ない部分があった。
救出後、入院することになったのだが、医師や看護婦が身体に触れようとするとパニックを起こす症状が診られた。
だが、幸い治療の甲斐もあり、日を追う毎に腫れがひき、痣も綺麗になっていった。
遂には、骨折も治すことができ、見た目はほぼ完治したのだが、心の部分はまだまだ治りそうもない様子だった。
一方、カムセア親子はフランチェスコ団長預かりとなり、どのような罪に処すべきか検討していた。
本来は町長自ら罰を決めるのだが、フランチェスコに預けて任せることにした。
父のバッジオ・カムセアは少女には手出ししていないが、長男のザナドゥ・カムセアの悪行を揉み消した罪は重罪だ。
フランチェスコが二人を前に質問する。
「バッジオ・カムセア殿、ザナドゥ・カムセア殿。御二人とも残念ながら罰を受けなければならない。で、考えたのだが、どうだろう。少女に与えた打撃を自ら受けるというのは」
それを聞き、ザナドゥは怒り頂点となる。
「ふざけるな!何故、奴隷と同じようなことをされねばならんのだ!」
「そなたが奴隷と定めた少女は元々奴隷ではない。なのに勝手に奴隷にして暴力を行っていたのだろう。どちらがふざけているのかな」
バッジオが反論する。
「しかし、我々は上級貴族だ。少女は平民だ。何が問題なのかね」
フランチェスコは冷ややかな視線を向ける。
「その考えが問題であり古い。貴族は弱い立場の平民を守る立場なのだ。これは王族のお考えにも通ずる。それに奴隷は今や違法である」
カムセア親子は冷や汗を流す。
フランチェスコは冷酷に審判を下す。
「被告バッジオ・カムセアを終身放置刑に処す。そして被告ザナドゥ・カムセアを終身殴打刑に処す。以上である」
バッジオは牢屋の中で、死ぬまで何も与えられずに放置された。
ザナドゥは別の牢屋で抵抗できないよう拘束され、警備団の中でも力自慢の者に何時間も殴打された。
また、カムセア家の他の貴族の中から新しい当主を選出することになり、バッジオの弟であるジョルダン・カムセアが任命された。
だが、バッジオやザナドゥが持っていた様々な権利や権力は町長が没収することになり、事実上カムセア家は平民扱いとされた。
この事件はこれで決着となり、全世界に報せが届く。
そして、上級貴族でもこのような処分を受けたことに衝撃が走り、当面悪事が控えられ、治安が全体的に上昇する事となった。
しかし、町長はフランチェスコの裁きに対して不満を持っていた。
バッジオ並びにザナドゥに処した罰は、やはり拷問である。
拷問は庶民に恐怖を感じさせる、として、フランチェスコに対して星1据え置きという評価を告げた。
上級貴族にはこのように行動が評価され、町長がそれを吟味して決める。
町長にその権限があるのは王族だからである。
武力も貴族以上の戦力を持つが、貴族同士が手を組めば反乱は可能である。
なので、王族は国民の手本であり、公平であることが求められる。
王族は長い歴史を通して、暴政苛政は身を滅ぼす事を理解している。
絶大な権力があるからこそ、善政をしなければならない。
サイハテブルグはこのような町である。




