023 山賊殲滅作戦決行
フランチェスコから山賊殲滅作戦決行の日が伝わる。
翌日、黄昏時に襲撃するという。
ジャンは当日朝からツイていなかった。
道を歩けば馬糞を踏んでいたことに気づき、建物の横を歩けば夫婦喧嘩で飛んできたコップが頭に当たり、歩き慣れている階段を踏み外して下まで転落したり、食べたいと思っていたサイハテサンドが丁度売り切れていたりしていた。
これは襲撃の時に何かあるかもと思い、バルトとシャオランに事情を話す。
「そんなこと気にしてんなら断りゃいいだろ」
シャオランが言うと、ジャンは、
「断れねえだろ!誘拐された子供が救出されんのを待ってるんだ!でもよ、万一オレに何かあった時は助けられた子供のことは頼むぜ」
「勿論だ。そしてジャンも戻るのを待っている」
バルトはそう言った。
「へへっ‥‥ビスマルクとウィリアムも頼む‥‥オレの幼なじみなんだ‥‥一緒に立派な冒険者になろうって、田舎を出てきた‥‥バカなオレにいつもついてきてくれたんだ」
「まだ死ぬつもりなのかい、生きて帰ってくりゃいいだろ!たかが山賊だ!蹴散らしてこい!」
シャオランは弱気なジャンを励ますが内心、心配していた。
そして、夕方前。
三人の戦士はギルドを出て、町の外にある山へと向かって行った。
シャオランは、やはりジャンの様子が変だったので、バルトに不安そうな顔を見せる。
「さすがに子供たちの前では明るく振る舞ってたけど‥‥あのバカ、大丈夫かなあ‥‥」
「‥‥ふむ‥‥」
山の麓にはフランチェスコ団長を始め、警備団二百名が規律良く整列している。
その末席に三人の戦士が同じく整列していた。
「待ってろよ~、今助けてやるからな‥‥」
ジャンが切り替えて気合いを入れる。
「まずは、捕らわれている女の子たちを見つけないとな」
ウィリアムが言うと、ビスマルクが、
「山賊にも手練れがいるかもしれない。油断しないで行くぞ」
と、念を押した。
フランチェスコが静かに腕を東に伸ばす。
これを合図に警備団が東に走り出す。
フランチェスコが西に腕を伸ばす。
別の警備団が西に走り出す。
そして、フランチェスコ隊が中央東に、三人の戦士と残りの警備団が中央西に進路を取った。
山賊側も侵入に気づき、戦闘が始まる!
女の子たちがいる牢屋では、俄に外が騒がしくなってきたので怖がる子がでてきている。
だが、異変が何か分かったデビットが牢屋の鍵を開ける!
「恐らく、君たちを救出に来た者たちの軍勢だ。みんな私についてくるんだ」
外では、少し離れた場所で警備団が山賊たちと交戦しているのが見える!
「いいかい、南側からくるのが警備団のようだ。まだ動いちゃいけない。警備団が近くに来たら助けて、とアピールするんだ」
デビットが少女たちに指示するとアリスがデビットの腕を掴む。
「おっちゃんは‥‥おっちゃんはどうするんや」
「私は山賊だ。警備団には信じてもらえないだろう。でもせめて、山賊のトップたちを探して一矢報いに行くつもりだ」
アリスは泣いて説得する!
「警備団にはうちが説明する!行ったらあかん!きっと殺されてしまう!」
デビットはアリスの手を優しく離す。
「私もね、こんな日がくるかもしれないと、隠れて鍛えていたんだよ。大丈夫、私の武運を祈ってくれたら嬉しいな」
デビットはそう言うと、北側の山賊を倒しに走り去った。
間もなくそこへ、ジャンがやってくる!
「女の子たち見つけたぜ!」
アリスが声を掛ける。
「戦士の兄ちゃん、警備の人なんか?」
ジャンは、自分が冒険者の姿なので山賊ではないことを説明した。
すると、アリスがデビットの話をする。
「あのおっちゃんは悪い人やないねん!仕方なしに山賊をやってるだけなんや!右肩に白い羽の装備してるから、戦士の兄ちゃん助けてあげて!」
「分かった!」
ジャンは警備団にアリスたちを引き渡して、北へ向かう!
暫く走ると、辺りには警備団の死体が所々に見えてきた!
そして、その場に一人立っている者がいた!
黒装束に身を包み、両手には短剣を持つ怪しげな男がジャンに気づく!
「冒険者?‥‥警備団側か‥‥」
ジャンが片手剣と盾を構える!
「お前‥‥山賊の頭か‥‥」
「オレは頭じゃねえが、サシなら誰にも負けたことはない‥‥」
そこへウィリアムとビスマルクが現れる!
「ならば悪いが三対一にさせてもらうぜ!」
山賊のアサシンが短剣を構えた!
「同じこと。皆殺しにしてやろう」
三人の戦士と山賊のアサシンが激突する!




