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022 囚われのアリス

 ウィリアムが口笛に反応して走り出す!


 「ちっ、西側かよ!カムセア家のエリアか!?」


 口笛を鳴らしたのはジャンだった!


 そこも人気のない路地である!


 誘拐犯二人組が女の子を拐っている、そしてジャンが対峙している!


 口笛に反応した警備が誘拐犯の退路を塞ぐように二人到着した!


 誘拐犯が女の子をジャンに背中を向けて盾にするように向かってきた!


 もう一人は警備団を気にしながらジャンの方へ向かう!


 「オレ一人だからって突破出来ると思うなよ!」

 とはいえ、女の子を抱いた誘拐犯はナイフを持っている!


 ジャンは片手剣だが、まず女の子を傷つけてしまうだろう!


 「ちいっ!」

 ジャンが手を出せず固まっている!


 「そのままじっとしてろよ!」

 誘拐犯がジャンの横を走り去る!


 「があっ!」

 誘拐犯の持つナイフが落ちる!

 

 女の子も解放され、素早くジャンが盾を誘拐犯に向けて守る!

 

 ナイフを持つ手を貫いた槍が建物と建物の間から姿を現している!

 「オレ自慢の針の穴を通す槍捌きだ!」

 ビスマルクが誘拐犯の前で槍を構えた!


 「ナイスコントロールだぜ!女の子は確保した!殺すなよ、生け捕りにするんだ!」

 ジャンが守備を固める!


 後ろの誘拐犯も警備団に捕らわれ、手負いの誘拐犯はビスマルクが捕らえた!


 直後にウィリアムも合流して、団長フランチェスコの元へ向かった。


 

 フランチェスコを前に二人の誘拐犯は捕縛されて跪いている。


 先ほど保護した女の子は問題なく両親の元へ送り返された様子。


 「まず、お前たちは何者だ?」

 フランチェスコは無表情で誘拐犯に尋ねた。


 誘拐犯は相手がガブリアス家の団長だとは知っているようだが、言っても裏切りの報復を受ける。

 だが、言わなければ警備団の拷問を受けるだろうと、口を割らない。


 「仕方ない一人ずつ拷問になるが、良いかな」

 誘拐犯は、良いわけないが断れない。


 「では、一人連れてゆけ。殺さぬように生かさぬように‥‥ふふふ」

 フランチェスコの不気味な微笑みに三人の戦士も鳥肌を立たせる。


 暫くして、誘拐犯らしき男の悲鳴が聞こえてくる!


 団長の部屋に残された誘拐犯の方は、ひい!ひい!と反応して戦いている!


 「先ほどの者が言わなかったり死んでしまったりしたら、次はそなただから」

 紳士とは程遠い対応に誘拐犯は顔をひきつらせている。


 その様子を見ていた三人の戦士は内心、フランチェスコもヤバいと思っていた。


 やはり貴族という者は、地位と名誉を得る代わりに人格を失うのかもしれない。


 やがて、誘拐犯の所属が分かった。


 サイハテブルグから山に入って中腹にあるアジトを拠点とする山賊だという。


 フランチェスコは日を改めて山賊殲滅作戦を決行することにした。


 



 一方、山賊のアジトでは‥‥


 山賊の下っ端の一人が捕らえている娘たちのいる牢屋に食事を運んでいた。


 牢屋の鍵を開けて、食事を中へ入れる。

 「さ、食事だ。食べるんだ」


 下っ端の男は脅すわけでもなく、優しさを含んだ哀れみの表情をしている。

 「いつも少なくて済まない‥‥最近、商人も護衛の数を増やしていて返り討ちに遭ったりと稼ぎが減っているんだ‥‥」


 数人いる女の子の中の一人が男に話しかける。


 「ええんや‥‥ほんまはおっちゃんもこんな仕事やりたないんやろ?みんな生きていくのは必死なんや‥‥」

 女の子は七才のアリス。両親は早くに亡くなり、親戚で世話になっていたが、あまり待遇は良くなかった。

 ある日、買い物を頼まれた時に誘拐されたという。


 山賊たちも、やりたくてこうなったわけではない。

 ここのトップ連中は四人いて、十年前の戦争の生き残りの敗残兵で、帰れば罪に問われると思い、ここを拠点に山賊となった。


 その他の部下たちは、捕まった商人や冒険者が投降した者たちである。


 中には逃げる者もいたが、トップの一人が暗殺のプロ、アサシンで一人残らず捕まり殺されている。


 「うちらも悪いんや‥‥子供が一人で人気のないとこ入ってしもたから‥‥もっと気をつけて買い物せなあかんかったんや‥‥」

 アリスがそう言うと、男は

 「それの何が悪いんだ‥‥生きるためとはいえ、誘拐などしていいわけがない!‥‥済まない‥‥済まない‥‥」

 と泣き始めた。


 牢屋の中の女の子たちは少ない食事を食べながら涙を流している。


 カムセア家にいる奴隷が死ねば、次はこの中から選ばれ奴隷にされるのだ。


 「なあ、おっちゃん。名前教えてもろてええかな‥‥」

 アリスが言う。


 「私の名前なんて‥‥」

 「うちな、幼い頃に両親を戦争で亡くしてしもて、名前が分かるもんもなくて知らんねん。親戚の人も厭な人らで教えてくれへんねん」


 「そうだったのか‥‥デビットだ‥‥」


 「デビット‥‥覚えとくわ」


 デビットは思っていた。


 早く救世主が現れて山賊を壊滅してくれないかと‥‥


 そして‥‥


 この子たちが町へ戻れるように、と‥‥





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