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幸せ

社会の荒波に自ら身を投じた。

しかし、意外と穏やかな場所もあるようだ。

汗だくの体で芝生に腰を下ろし、タオルで汗を拭い、息を整える。


社会人は運動不足である。

もちろん例外もいるだろうが、通勤時の徒歩を運動にカウントしている時点で私の運動不足は明らかである。


近くの公園2周走っただけでこの息のあがりようとは情けない。こう見えても学生時代はバリバリ運動部だったのだが、この疲れ果てた息遣いに加えてこの腹の出っ張り様では誰も信じてはくれまい。


ストレッチをしながらふと、先ほど視界に捉えたサッカー少女を思い出す。入り交じる男子の中に唯一一人、ポニーテールを揺らしながら懸命にボールを追っていたが、相手と接触し盛大に転んでいた。

しかしすぐさま起き上がり、ユニフォームについた土を払い再び走り出す。


目線の先には、先ほどから父と息子がバドミントンに興じている。しかしその羽は未だに一往復以上していない。父も息子も、9割の確率で羽を捉えられていない。

しかし、地面に落ちた羽についた土を払い、すぐさま再開する。


すると近くから乾いた音がした。見ると、ベンチで父の膝の上に乗っていた小さな女の子が水筒の蓋でありコップである部分を投げてしまっていた。濡れた地面と転がっている赤いコップ。父が立ち上がろうとすると、隣のベンチに座っていた杖をついたご老人が彼を手で静止し、ゆっくりとコップに近づき、膝を曲げ、コップを拾いあげた。

コップについた土を払い、女の子に手渡す。


彼らには共通点がある。

全員、私がここ1か月はしていない満面の笑みであった。


私は立ち上がり、尻についた芝を払い、大きく息を吐いた。

そろそろお昼の時間だ。帰って美味しいものでも食べよう。

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