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暴れる君の傍らで  作者: かかち
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「遅刻だあぁぁあ!!!!!」



俺は食パンにイチゴジャムを塗りながらひた走る。


順を追って説明するとこうだ、



寝坊→登校中(現在)



そう、非常にまずいのだ。

俺は今年で17歳、日本人の多くは高校2年生を迎える歳だ。


しかし、俺はその多くの日本人から零れた存在。


高校2年からの転入のみ可能とゆう少し変わった高校、『国際立異界文化高等学校』に転入した俺は、言わば新入生。



対人関係において第一印象は大事だ……全員が初めましての状態で、最初から遅刻するやつなどというレッテルを貼られてしまえば………そこから先の学園生活に影響が出かねない!!!


その事を先程の順に加味するとこうだっ!!



寝坊→登校中→初手遅刻→クラスメイトからの冷たい視線→\(^p^)/オワタ



「ふぉ、ふぉれだけわ………かいふぃするっ!!!」


ほんの少しも焼いてないふわふわ食パンにジャムを塗り終わると俺は口にくわえ………大きく腕を振ることで更に足の回転を早める。



4月………


屋外でじっとしていては寒く感じるが、走る事により火照り始めた体にはカッターシャツの襟元から吹き込む風が心地よい。



視界には青い葉を揺らす木々が並ぶ道路、桃色の花弁に覆われた桜が密集する丘……そして視界の大半を埋めるような家々が映る。



………そう、視界の大半を家々が埋める…………すなわち曲がり角の見晴らしが悪い。



そんな事が頭の片隅でふわりと湧き上がった気がした時…………『恋の衝撃』が走った。



ドスッ………大きなマットレスにぶつかったかのような音を鳴らし、その反発力で俺は尻もちをついてしまった。



「イテテ…………、」



尻もちを着くと言えば可愛く聞こえるが………実際はかなり痛い。


鼓動のように一定のリズムを刻んで痛む俺のケツ………くわえていたパンはケツを着いた衝撃でパッキリと咥えていた分を噛み切り、残りの部分はジャムの部分を下にしてパタリとアスファルトに落ちていた。



「パ……パンがぁ……………。」


急がなければ遅刻するとゆう焦燥感、リズムを刻むケツの痛み………そして今は亡き俺の朝食(食パン)


3つの負の感情が俺の心掻き回し、しょうもない事の筈なのに凄まじい悲しみに襲われた………。



「大丈夫か?」



その時、『彼女』は俺に手を差し出してくれた。



白く細い指だった。


俺は、そんな女性の手をつい反射的に握り返してしまう………。



……………太い?



手を差し出された時には細長く綺麗な指だと思った。


しかし、実際に握ってみると………その手は確かに滑らかな肌の感触と吸い付くような柔らかさがある女性の手だが………


指が太い………いや、『手そのものが大きい』のだ。


同い年では平均的と思われる俺の手よりも………。



「ほら………立てよっ!」



凄まじい引力で一気に引き上げられる俺の体。


握られた俺の手は明らかに『男の握力』を感じ取り………そして相手を確認しようとして見上げた俺の目は………彼女の顔を捉えた。



「………おっ、お前も獄界科(ごっかいか)じゃないか。これからよろしくな。」



「………あっ、どうも。」



…………どこから言おうか。


そう、言うなれば………彼女は美女だった。


大きな赤い瞳と長いまつげは、瞬き1つすらも宝石の煌めきを思わせるほど美しく。


人ならば不健康とすら思える程に白い肌と、目の下に深く刻まれたくまが庇護欲をくすぐり。


僅かに赤みを含んだ銀髪と、頭頂部付近から飛び出る髪と同色の2本の突起は『人では無い事』を示す。



そして何より………眼前に広がる大きな『胸』!!!


………いや、別に胸のデカさが素晴らしいとかそういう事では……確かにあるが、今伝えたいのはそこじゃない。


2人とも普通に直立しているにも関わらず、彼女の胸部と俺の頭部が同じ位置に有るのだ。



「ほら、さっさと行くぞ。食堂では日本の料理が出るみたいだし、それまでにはつかなきゃ行けないからな。」


「………えっ、あっ、そうだ……な?!。」



彼女はそう言うと、その長い足でスタスタと歩き始めた。


こういうのって、女の子が倒れて………それに声を掛ける男の子っていうのから恋が始まるのでないだろうか………


しかし、今俺の前に居るのは俺より一回り以上も大きな……恐らく『悪魔』の女の子。



(まあ、これも男女平等って奴か。)


俺はそう思い直し、彼女と共に登校する事にした。



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