奉納舞に
薄明の中
鳥居をくぐる
石灯籠には 灯火が揺らめき
玉砂利を 白く朝靄が漂う
吐く息は白く
指先も冷えて白く
向かうは 神社の一の社
御祭神は天照大御神
静かな期待とともに
人びとの列に連なる
やがて
喧騒から静寂へ
風もなく
張りつめた冷気のなかを
一の音が鳴り響き
嫋やかな巫女らが控えて
祭事が進行する
奉納舞がゆらりと始まり
松明が灯り 邦楽が奏でられる
笙の音 笛の音 衣擦れの音
妙なる舞に 袖が弧を描いては翻り
音が 幾重にも 幾重にも 重なる
緩急のある動作 流れる動線
互いに響き合い
手をかざして
松明の灯に照らされて
影もまた ゆるりと舞う
次第に 朝が明けて
舞姿もさやかに白く
やがて 舞いおわり
最後の響きが鳴り止み
祝詞が奏上されて
静寂が戻る
現実に帰ると
朝の風が 緑の樹々を渡っていた