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4日目 愛を知ってしまった

 幸せそうに寝息をたてる見知らぬ少女。

 背格好は俺に近いが、自分のこともあるので、年齢は分からない。何となくだが、年下だとは思う。

 電灯のスイッチを入れ、よく顔を見ると、目鼻立ちが小さい頃の胡蝶に似ているように感じた。

 明かりが点いたためか、少し寝苦しそうだ。だが、心を鬼にして今は起こさねば。

 頬を数度つつく。さすがに優しくても叩くのは良心が痛む。

「もしもーし」

 無反応。今度は、少し強めに指を押し込んでみる。

 柔らかい。

「うーん……」

 反応ありと、もう少し力を入れたところ

「んー、やめろぉお! アグッ!」

「危なっ!?」

 噛もうとしてきた。ピラニアかよ……。だが起きはしたようだった。

「んあぁ?」

「おはようございます」

 挨拶は大事だ。

「おはようございます? 誰?」

 それはこっちのセリフなんだよという言葉は飲み込んだ。年上ですので。

「俺……私は百合畑尊。この家の住人に今日からなったんだけど、お嬢ちゃんは、お名前は言える?」

 俺の事情を知らない人、しかも初対面の人に一人称『俺』はよろしくないだろうと思って、言い直した。

「これはこれはご丁寧にどうも。私の名前は森林院魅夏(みなつ)です。この家の主とは従姉妹の関係に……って、ん? 百合畑って誰!? 私と同い年くらいに見える女の子にお嬢ちゃんなんて言われる筋合い無いんですけど!?」

 うーん。なかなかに言ってくれる子だ。

「まさか、空き巣?」

「いや、今、住人って言ったよね? 私」

 というか、この子、森林院って言ったよな? 胡蝶の従姉妹ってことか。

「尊。さっきから何を騒いで……。あら、魅夏じゃないの」

 助け船来たー!

「胡蝶、誰この子?」「胡蝶姉様、誰ですかこの子」

 被った。

「私は聖徳太子じゃないのよ。いっぺんに言わないでちょうだい。内容は同じだったから分かったけれど」

「姉様。この空き巣、今、姉様を呼び捨てにしましたが!?」

「だから空き巣じゃないって」

 助けてと、胡蝶に目で訴える。

 顔を真っ赤にして顔を手で覆う胡蝶。違う、そうじゃない。

「尊、ダメよ。今そんな目で見られたら襲ってしまいたくなるわ」

「そんな状況じゃねーだろ! 空気読め! 説明、プリーズ!」

「あぁ、そういうことね」

 他にどういうことが――面倒になるのが見えたので言うのを止めた。

 訝しげに俺をにらみ続ける、魅夏とかいう子の視線が痛い。

「じゃあまずは、魅夏の誤解を解きましょう」

「誤解、ですか?」

「ええ。この子は百合畑尊。私の幼馴染みで元男。そして、私の、こ、ここ……恋人よ」

 魅夏ちゃんの俺を見る目が、今度は胡散臭そうな者をみるように変わった。うん、わかる。普通の人は信じないよね。

「この子が、お姉様が言っていた例の性転換薬の被検体ですか……?」

「そうよ」

 え、何で知ってんの?

「っていう顔をしてるわね、尊」

 言う必要がなかったので黙って首を縦に振る。

「いくら私の私情のために、私自身のポケットマネーから研究費を出すとしても、森林院グループの人材を使うのだもの、稟議を通すのは当然でしょ?」

「稟議通ってたのか!? 俺のこれに!?」

「そうよ。だから、森林院の親族と、グループの上層部はあなたについて知っているわ。つまりそういうことよ。それで、魅夏は理解できたかしら?」

「ええ、はい。実験にも成功して、晴れて恋人になったので、ここで二人で暮らすということですね。ここのベッドは気に入っていたのですが、もう来られないのかと思うと残念です」

 しょんぼりと肩を落とす魅夏ちゃん。

 あ、いやそうだ、結局この子は何なのよ?

「今から説明するわよ。欲しがりさんね、尊」

「言い方ぁ……」

「この子は、私の従姉妹の森林院魅夏。今年で、何歳だったかしら?」

「十四になります、姉様」

「来年には元服ね。お祝い期待しててちょうだい」

「はい!」

 すっごい笑顔だった。かわいいなぁとほっこりしていると、またキッとこちらを睨んできた。なんかすんません。

「え、えーっと、十四ってことは、来年受験生だな? もう志望校とか決めてるのかな? 魅夏ちゃん」

 ポカンとした顔をされた。「受験?」と、小声で呟いていた。現実逃避はよろしくないぞ。

「あぁ、尊。魅夏はもう飛び級で大学院を出ていて、今はもう働いているのよ」

「は?」

「確か、軍の開発局だったかしら?」

「はい。ちょっと詳細は軍規で言えないんですけど、今面倒な案件を抱えてまして」

「あぁ、例の。一般人の尊の前じゃ言えないわね」

「二人だけで分かってるのすごくモヤッとするんですけど、まぁ軍の話じゃ仕方ないか。しかし、その年で一人で軍にいるのは心細くないか?」

「一人というわけではありませんし、在学中の雰囲気と大して変わらないので、別にって感じですね」

「尊。魅夏には一卵性の双子で、姉に魑夏(ちなつ)って子がいるのよ。その子と一緒に働いてるから一人きりではないわ。そういえば、今日は魑夏はどうしたの、魅夏」

 姉の名前を聞いた瞬間、ぴくりと体が反応したのを俺は見逃さなかった。喧嘩でもしたのか?

「また喧嘩したのね、あなたたち」

「ち、違います姉様。少し意見の相違があって、距離を置こうと円満な会議の結論でですね……」

「貴女たちの円満な会議とやらは、いつも取っ組み合いじゃないの。今度は何が原因なの?」

「軍規で言えないです」

 仕事関係で何かあったことは分かった。そして俺に出来ることも特にないであろうことも明白だ。

「よし、話を変えよう。詳細を話せないことに関していつまでも聞いていられないし。えーっと……そうだ! 胡蝶。お前、よく一目で魅夏ちゃんってわかったな。実は一卵性だけど似てないとかあるのか?」

「二人は目鼻立ち、背格好、声も、性格もよく似ているわ。でも、服の好みが全く違うの」

「服か」

 魅夏ちゃんの恰好をよく見る。Tシャツにハーフパンツ。あれ、全く気にしていなかったけど、これ――

「学校指定のジャージか?」

「何か問題でも?」

「もう少しお洒落なパジャマとか……」

「元男性のあなたに言われる筋合いあります?」

「魅夏、一応、尊は年上だからね?」

「あー、そうでした、背格好が同じくらいだからつい……すみません。尊おねえ――、お兄さん?」

「お姉さんでいいわ。尊はこれから女性として生きていくと決めたの」

 どっちでも良いと言いかけたところで胡蝶が割って入った。確かにそうだけども。俺にも何か言わせてくれ、胡蝶や……。

「まぁ、見た通り、魅夏はお洒落に無頓着で、着られればいいの精神でいるわ。寝間着は暑ければ今の恰好。寒くなったら長袖のジャージを着て、上から褞袍(どてら)を羽織る。この子にスキンケアを日常のルーチンに入れるように教育するのが本当に大変だったわ」

 胡蝶が珍しく遠い目をしている。よっぽどだったんだなぁ……。

「じゃあ、その逆ってことは、姉の魑夏ちゃんはお洒落に気を使ってるってことか」

「魑夏はその辺貪欲で、常に流行を追っているわ。学術書の下にも常にファッション誌を重ねていたし、見るからに美少女って感じの子よ」

「胡蝶をして、美少女とは、相当だな。でも見た目一緒なら魅夏ちゃんと同じ顔だろ? うーん、なるほどなるほど」

「あんまりジロジロ見ないで下さい、魑夏と一緒じゃないから、今メイクしてないんで……」

「スッピンでも十分可愛いけど……」

 胡蝶ほどではないが。

「尊。彼女の前で、親戚の女の子を口説くのは感心しないわね」

「口説いてはいないだろ! 感想を言ったまでで」

「人によってはそれで好きになったりするのよ、気をつけなさい」

「いやいや、さすがにこれぐらいで、ねぇ、魅夏ちゃ――ん?」

 顔を真っ赤にしている魅夏ちゃん。

「いやいやいや。こんな口調だけど、俺は今、女だぞ?」

「恋に落ちるのに、時も場所も、性別だって関係ないのよ」

「いや、人の彼女に恋とかあり得ないんで。こんなことで好きになるほど私チョロくないんで。素の容姿について褒められたこと無かったから、ビックリしただけなんで。そもそも、同性に恋とか無いんで!」

 めっちゃ早口じゃん。それに、言い訳すればするほど墓穴を掘っている気がするんだが、大学を出ていようが働いていようが、所詮は、まだウブな十四歳ということか。

「メイクとかも、ちゃんと覚えてみようかなぁ。胡蝶姉様には聞けないから、魑夏にでも……」

 俯いてぶつぶつと今後の方針を言っている魅夏ちゃん。まぁ、近い俺には聞こえてるんだけど、その内容は胡蝶に聞かれてないといいなと思った。

「尊。やってくれたわね。まさか身内からライバルが出るなんて、しかもライバルを作ったのが他でもないあなた自身だなんて、残念だわ」

「こんなの事故みたいなものだろ」

「事故って、注意すれば防げるものが大半なのよ?」

「胡蝶姉様すみません、ご迷惑はおかけしませんから。尊姉様を攻めないで下さい」

 姉様呼びになってるぅ!? 好感度の上がり方がバグってるだろ。

「ほほほ。良かったわね、尊。妹分が出来たわよ」

 こっちはこっちで背中に鬼神が見えるし……。

 あー、もう!

「魅夏ちゃん。ごめんな。俺は、胡蝶の恋人以外になるつもり無いから、気持ちには応えてあげられない――」

 というか、君の好感度の上がり方に付いていけない……。

「――その、将来的には、本当に親戚になるかも知れないし、これからも、姉? 兄? のように慕ってくれると嬉しいなって思うよ」

「はい。私は略奪愛がしたいわけではないので、胡蝶姉様から奪って恋人になろうなど、とてもとても。それよりも、新しく姉様が出来て嬉しいです」

「そ、そうか……」

 サッパリしているのは良いことだな……。まぁ、これで――

「甘いわね、魅夏。好きになったのなら、何が何でも一緒になりたいと、心の炎を燃やさなければ、恋という戦争には一度たりと勝てないのよ! 私から奪うつもりで頑張りなさい!」

 さっきまで不機嫌だった俺の彼女が、突然、燃料を投下してきた。何でお前が煽ってんだよ!?

「おいおい胡蝶お姉様? 今、丸く納めるところだったじゃないですの? なんで着火しに行きやがりますのですわよ?」

「今のは、さすがに言葉遣い滅茶苦茶過ぎてときめかないわよ、尊」

「そこは今重要じゃないだろ! なんで恋敵を煽るんだって話!」

 その答えを、何を言っているんだこいつみたいな顔をして胡蝶は言った。

「だって、誰がどんなアプローチしてきても、私、この恋で負ける気がしないもの。それに、あなたが私以外に靡かないって、自信も信頼もあるの」

「おま、その……」

 俺への絶対的な信頼を、事も無げに宣言する胡蝶に、俺は返す言葉がなかった。

「あら? まさか気持ちが揺らいでしまいそうな相手でもいたのかしら?」

「それはない。お前以外を好きになるなんてことは絶対にない。それははっきりと断言できる」

「当然よね」

 すまし顔だったが、顔は耳まで紅潮し、声音は弾んでいた。愛いやつよ。

「なるほど、姉様達の信頼はそれほど……。一筋縄ではいかないと。それでも向かって来いと言うのですか?」

「女の子は恋をして強く、綺麗になれるのよ、魅夏。だから、全力で恋をして、綺麗になりなさい。相手が私の恋人でもね。負けるつもりは毛ほども無いけれど、あなたのアプローチならいついかなる時でも尊は受けるし、跳ね返してくれるわ!」

 あ、そこはお前じゃなくて俺に丸投げなんだ……。まぁ相手は俺なんだから当たり前なんだけども。

「はい、胡蝶姉様。私、全力で恋をして、何度でも玉砕します!」

 こっちは玉砕前提なんだ……。いや、フるのは俺だし、そうするのは確実なんだけども。

「尊姉様、私、これからがんばります!」

「お、おう、そうか。が、頑張れ?」

「はい! 綺麗になって、フられるまで何秒か躊躇いが出るくらいまで頑張ります!」

 目標が具体的だ。

「そのためにまずは、魑夏と仲直りしてきます!」

「そうね、それがいいわ。仕事も止まっちゃってるだろうし。でも今日はもう遅いから泊まっていきなさい。ベッドは私と一緒よ?」

「はい、お世話になります。えへへ、胡蝶姉様と一緒に寝られるの嬉しいです。魑夏に自慢できます」

「それでまた喧嘩にならないように、今度は二人で遊びにいらっしゃいね」

「はい! あ、尊姉様、お休みなさい。また来ますね!」

「尊、お休みなさい」

「お、おう……」

 扉が閉められ、二人の談笑する声が遠ざかっていく。そして、嫌にバカでかいベッドだけが鎮座する部屋にぽつりと残された俺。

「うん。寝るか……」

 こんな部屋じゃ他に出来ることもないし、このベッドについては後日ちゃんと抗議することにして、今は体を休ませよう。幸い、寝心地だけは良さそうだし。

 ひたすらに今日は長く感じた一日だった。こんなに濃い一日を過ごしたことは生まれて初めてだろう。

 ベッドに潜ると、案の定、とんでもなく寝心地がよかった。体重を均等に分散するように沈み込むマットレス。掛け布団は温かく、羽のように軽い。枕も大きく、肩までしっかりフィット。魅夏ちゃんが気に入っているのも頷ける。

 その魔性の寝心地に、俺の瞼はあっという間に重くなり、意識を刈り取られていったのだった。

 

「重い……」

 あの羽毛のように軽かった掛け布団が、急に重くなる感覚で、意識が微睡みへと引き戻された。

 どのくらい時間が経ったのだろう。この部屋には時計すらなかったことを思い出す。寝る前にケータイはどこに置いたのか思い出すように枕元の周囲を手で探るが、ダイニングに置きっぱなしであったことに気づいて止めた。

「女性に重いだなんて、失礼ね、尊。まぁ、今のあなたの体ではそれもやむなしと言ったところでしょうから、許してあげる」

 胡蝶の声が聞こえる気がする。

「よっぽど疲れているのかしら。ここら辺で飛び起きて、自分の部屋に戻れとか突っ込むところだと思うのだけれど」

「……頼むから、……寝かせてくれ」

 辛うじて出た声を絞り出す。瞼は開かない。

「せっかくの初夜だというのに、これはダメね。今日の所は、添い寝だけで我慢するわ」

 よく聞き取れなかったが、体にかかっていた重さが無くなり、ふわりと柔らかい感覚が戻って来た。胡蝶は諦めて帰ってくれたのだろうと、半分安心、半分残念に思いながら、再び眠りに落ちようとしたところ、横から自分を包むような感覚がやってきた。

 温かい。

 無意識に、自分を包むものを抱きしめた。

 柔らかい。気持ちいい。

 柔らかいものに顔を埋める。

 いい匂いがする。

 感じるすべての感覚が、俺を安眠させるためだけに存在しているかのようだった。

 幸せに包まれて、俺の意識はそこで途切れた。


 意識が覚醒して、真っ先に感じたのは、温かさだった。少し暑くも感じる。次に柔らかさ。そして、自分以外の呼吸音だった。

 目を開けて自分が抱き付いているモノを確認する。

 その眼前には、胡蝶の寝顔があった。わー、俺の彼女可愛い――

「え?」

 自分の体勢を確認する。

 完全に胡蝶に抱き付いています。しかも位置的に俺が顔を埋めていたのは胡蝶連山の谷間で……。

「え!?」

 事案!? 逮捕!? ワタシ、チカン、チガウ! 可愛いとか見蕩れてる場合ではない!

 慌てて胡蝶から離れようとするも、胡蝶も俺を完全に腕でホールドしていた。

「なんで!!?」

 恋人の腕の中で脱出しようともがく俺。恋人なのだから、脱出する必要は無いはずなのだが、胸に顔を埋めて眠っていたという事実が、俺史上最悪にバツが悪い。セクハラだしそんなの。寝惚けていたとはいえ、許可なくそういうことするのは良くない。

「うーん……」

 俺のもがく行為で胡蝶の覚醒が始まってしまった。

「あ……」

 うっすらと開く胡蝶の目と視線が交わった。

「おはよう、尊。よく眠れたかしら?」

「お、お、おお、オハヨウゴザイマス、コチョウサン」

「どうしてカタコトなのかしら。変なの」

 寝起きの女の子って、なんか、エロいな。とか思ってしまったことは絶対に悟られてはいけないという一心で出た言葉が、もう違和感しかなかった。

「寝起きの尊は、なかなかに性欲を刺激してくるわね……」

 こいつは隠しもしないのかよ……。逆に冷静になって来たぞ。

「このままシちゃう?」

「しねーよ! それより、なんで俺のベッドにいて、その……」

「あなたを抱き枕にしているのかって?」

 俺が抱き枕側だった!?

「お、おう。そうだ」

 同意しておこう。

「尊。あなた、自分が寝惚けて私のことを抱き枕にしていたとでも思っていたのかしら?」

 口を噤んで黙秘を行使する。

「沈黙は肯定と受け取るわ。まぁ、私はそっちの方がいいのだけれど、残念ながら、今回は、私があなたを抱き枕にしたのよ」

「なんで?」

「なんでって、決まっているじゃない。せっかくの初夜だったから夜這いでもかけてやろうと思ったのよ。魅夏のライバル宣言もあったし」

「いや、魅夏ちゃんについては、お前が煽って勝手にライバル宣言したんだろ」

「知らないわ、そんな昔の話。まったく、本気で奪いに来いって言ったのに、初日から夜這いの一つもかけられないなんて、やっぱりまだまだお子様よね、魅夏ったら。私の添い寝、数分で落ちたわ」

 勝ち誇る胡蝶。年下の子供相手に何を張り合っているのか……。

「呆れた顔も可愛いわね、尊。子供相手につまらないことで張り合うなって顔してるわ。でもね、尊。少女は恋を知ったその瞬間に女になるのよ」

「じゃあ俺ももう女なのか? 胡蝶に恋してるぞ?」

「そ、そうね。もう立派な女ね。でも尊のはもう恋の範疇じゃないわ。愛よ!」

 大きく出たなぁ。あぁ、俺のことだったなこの話。

「そうか、お前の奇行でも最終的に受け入れてしまうのは愛していたからか」

 しかし、それがストンと腑に落ちてしまった自分がいた。

「え? あの、尊? じょ、冗談……」

「いや、胡蝶。これは真実だったんだよ。俺は、お前を愛していたんだ」

「え!? あの……。えぇ……。う、上手い返しね! 私の反応を見越してそんな直球攻めとはやるじゃない尊! 意外すぎるストライクボールに拍手をあげる!」

 顔が真っ赤の胡蝶。あぁ、可愛いなぁ。

「いやいや、冗談ではなく。俺は胡蝶を愛しているって今さっき気付いた」

「はああぇえええ!?」

 どこから出るんだそんな声。もう俺にとってはこいつの全部が可愛くてたまらなく映る。

 そんな可愛い塊の胡蝶には、朝からご褒美をあげようと思う。恋人だし、許されるだろう。

「アイ、アイ……ぷしゅぅぅ」

 南の島の小型竜の名前を呟かれあそばれている胡蝶。博識だね。頭から湯気が出ているようだ。

「可愛い可愛い私のお姉さま。恋人の私から、朝のプレゼントです。お受け取りください」

「え!? あの、たけるぅうム……」

 スムーズな動作で、動揺する胡蝶の唇を塞いだ。

 その後――

 真っ赤になって湯気を出した胡蝶が正気に戻るまでに三時間を要して、俺たちは大遅刻する羽目になった。

 ちょっと攻めすぎたようだ……。

超久しぶりの投稿ですね、はい。

ちまちまと、あっち行ったりこっち行ったりの過程で書いてました。


誰がこの話覚えてんだよって話ですがね。

待ってる人いたんだろうか?

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