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真紀さんが耳まで真っ赤にして言うわけだ。
「た、た、高尾くん、里穂とこんなことを──器用なことを」
いや器用なことなのかは知らないけど。というか破廉恥とかなら分かるけど、器用なの?
「真紀さんハッキリ言っておくけど、僕はやっていません」
歴史と記憶を捏造しつつある里穂が、僕の脇腹をつついてきた。
「高尾。もう恥ずかしがっちゃって」
千沙が深刻そうに言う。
「秘密めかしているんだね、水沢くん」
「高尾くん……」
やめてその後半の沈黙。
ここで小夜が、冷ややかな口調で言ってきた。
「朝から、あなた達は何を話しているのですか? 発情期ですか?」
すべての元凶のくせに、小夜が的確な指摘を入れてきた。
とはいえ、そこは小夜である。さらに続けることに、
「問題解決の方法は、ひとつしかありませんね。水沢さんが公平に、ほかの二人ともしてさしあげれば良いではありませんか。ハメ撮りを」
咀嚼中でなくて良かった。ぜったいに口から噴いただろうから。
ちなみに里穂が本当に噴いた。
で、勢いよく挙手。
「はい、あたしも志願するわ!」
千沙が冷ややかに言う。
「里穂はもう動画撮影済みでしょ。さらに撮影したら、さっそく公平性に欠けるじゃない」
「……………………はっ!」
ここで里穂の思考を推測すると、
『しまった。余計な嘘をついたせいで、実際にハメ撮りができなくなってしまったわ。けど、この流れは、あたしの嘘のおかげで発生したのもの。それなのに、あたしには恩恵が、恩恵がないじゃないの!』
分かりやすい性格だなぁ。
いや、まてまて。
僕は死んでも、そんなことをするつもりはないぞ。
というのに小夜が勝手に進めた。
「それでよろしいですか、千沙さん滝崎さん」
真紀さん、いまにも恥ずかしさで死にそうな様子で、
「わ、わ、わたしは遠慮しておく」
千沙は難しそうな表情で、
「私は──その一線を越えるにあたって、小夜が干渉しているのが癪かも」
ここで唐突に、小夜が話題を変えてくる。
「でしたら、この件はいまは置いておきましょう。そして朝食後には、観光にいきましょう」
ほう、話題を変えてくれるなんて。ここは小夜に助けられた。
しかし小夜のことだ。あまり安心はできない。だいたい『いまは置いておく』ということは、あとあと復活するということじゃないか。
まぁ、ひとまず乗っかろう。
「そうだよ。せっかくの旅行だしね」
ところが里穂たちは、あまり反応が良くない。
真紀さんは「別に構わないけど」と、どっちでも良いというスタンス。
千沙は、「旅館だし、卓球しましょう。負けたほうが勝ったほうの言うことを聞く、というルールで。私、水沢くんとやる」と言い出す。
千沙は運動得意らしいので、卓球の勝率も高そうだ。
里穂にいたっては、「あたしの恩恵、あたしの恩恵」とぶつくさ呟いている。誰か助けてあげて。
僕は当たり障りのないことを聞いた。
「ところで、ここ観光地とかあるの?」
「国内でも有名な、縁結びの神社がありますが」
皆さん、いきなり行く気になった。
まぁ観光地ならば安全でしょう、いろいろな意味で。たぶん。




