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天国にいっていた里穂が、ハッとして目覚める。
何やら期待した顔で、指を一本たてた。
「高尾、もう一回?」
「やらないよ」
「リピートアフタミーよ、高尾」
よし、無視しよう。
小夜はすっかり興味をなくしたようで(楽しむだけ楽しんだらすぐに忘れるタイプだな)スマホで時間を確認。
「では朝食に行きましょうか」
2階のお食事処へ。
そこで真紀さんと千沙と合流。バイキング方式なので、ほかの宿泊客たちで緩やかな列ができている。まずはお盆を確保。
ちらっと後ろを見ると、小夜が熱心にスマホを操作しているところだった。
そんな小夜に、里穂が世間話的に尋ねた。
「ソシャゲでもしているの? 他のお客さんに迷惑よ」
「いえ、ストーカーアプリがちゃんと作動しているか確認しています」
「え、高尾を?」
「なぜ、わたくしが水沢さんをストーカーせねばならないのですか? たしかに水沢さんには、物珍しい動物を観賞するような面白みはありますが」
それ、ようは見世物あつかいだよね。
「じゃ、誰?」
「英樹ですよ」
「ふーん。そっか……それ、誰だっけ?」
いや、僕の親友(一応は)だから。君も会っているでしょうが。最近、見かけないけども。
と、いちいち言葉に出すのも億劫なので、内心で突っ込んでおく。
「それで、ストーカーアプリって、相手の現在位置がわかったり?」
「それだけではありませんよ。隠しカメラの映像なども、このアプリがあれば一括で管理できます」
と、なぜか誇らしげである小夜。
そのアプリ、違法臭しかしないんだけど。
里穂がハッとした様子。どうやら小夜のヤバさに、久々に気づいたようだ。
そうだよ。君がたらしこまれていた相手は、立派なヤンデレなのだから。正気に戻るチャンスだ里穂。
「師匠。ぜひ、あたしにもご教授ください」
……里穂がダークサイドに堕ちたらしい。そして僕は、わが身が危ないことに気づいた。
真紀さんと視線があう。
「あ。真紀さん、おはよう」
「おはよ。高尾くん、疲れているみたいだね。よく眠れなかった?」
「……うん大丈夫」
昨夜から朝にかけての一連の出来事は、極秘にするに限る。
真紀さんはどことなく不満そう。
いまのは探りを入れてきたのだろうか。
和食派と洋食派で、微妙に列が分かれた。
こんどは千沙と目があう。
千沙は可愛らしくあくびした。
「千沙。君も寝不足?」
「昨夜は期待していたのに」
と恨めしそうに言われる。
「何を?」
「水沢くんが襲ってこられるように、ドアの鍵は開けておいたのに」
「不用心なことはやめなさい」
里穂が割って入ってきて、あからさまに自慢げな顔をしている。
千沙は好奇心に負けたようで、尋ねた。
「何かいいことあった?」
「聞きたい?」
「もったいぶらなくてもいいんじゃない?」
あ。これは破滅フラグだ。いつのまに回収したんだろう。
「ふふん。あたし、高尾とハメ撮りしたのよ」
とりあえず納豆をとろう。




