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流れに身を任せようとして、何かを忘れているような気がしてきた。
そう否認、ではなくて避妊だ。
コンドームの箱が、テーブルにあったはず。
僕が立ち上がろうとすると、なにを勘違いしたか里穂がさらにつかみかかってきた。
「高尾、逃がさないわよ! この後におよんで、観念しなさい!」
「あ、そうじゃあなくて──」
体勢を崩したところ、迫ってきたのはテーブルの角。
「あぐっ」
ピンポイントで頭部に当たり、ここで僕の意識は途切れるのだ──
すずめの鳴き声で目覚めた。
朝陽が部屋に入ってきている。
「何が起きたっ!」
ばっと起き上がると、布団の上で寝ていたようだ。
ふと隣には、里穂が横たわっていた。健やかな寝息を立てながら。
裸で。
「なんでそうなった!」
僕は自分で自分の目をふさぎながら、そう叫んでいた。
里穂も目覚めたようで、起き上がる気配。
「どうしたの高尾──あ、おはよう。もう朝なの?」
「……まさかと思うけど、里穂も昨夜、なにがあったか覚えていない?」
「高尾が気絶したあたりまでは記憶にあるんだけど。あたし、自分で分析してみたわ。極度な恥ずかしさで頭に血がのぼり、そこで気絶したの──まって、あたし、裸じゃない!」
自分が裸体というのは、そこまで気づくのに時間がかかるものなのか。
手をどけてみる。
慌てた様子で、かけ布団を体に巻き付ける里穂。
羞恥が戻ってきているようだ。朝だからかな。朝は目覚めのときだ、いろいろな意味で。
里穂は深々とうなずいた。
「そうなのね。ついにあたしたち、やったのね。記憶にないけど──いい仕事をしたわね、あたし!」
かけ布団をまいたまま、可能な限りの動作でガッツポーズする里穂。
記憶にないのに、いい仕事したことになっている。
「これは何かの陰謀な気がしてきた」
「高尾。あたしたちは結ばれたのよ。きっとそこらへんに、使用済みのアレが転がっているんじゃない?」
「生々しい!」
ちなみに使用済みのアレは転がってなかったし、そもそも箱を開けた形跡はない。
「どうやら事には及ばなかったようだね」
まずひと安心。事におよんでいて記憶が飛んでいるというのは、最悪だからね。
里穂はコンドームの箱を見つめてから、実に真剣な表情で言うのだ。
「使わないで、したんじゃないの?」
そんな恐ろしいことがあってたまるか!
里穂は難しそうな表情をして、
「まって。あたし、初めてだったのよ。なんで血が出たあとがないのかしら」
「だから何もやってないからだって」
「初体験だからといって、必ずしも出血するわけではありませんよ」
と、小夜が淡々と言う。
僕と里穂はそんな小夜を見て、「へぇ」と思った。
「「……まって、いつからいたの!!」」
そしてハモったのだ。
朝になったので、ヤンデレも目覚めたか。
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