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小夜からのベロチュー要請。
対して、
「却下」「却下」
僕と真紀さんでハモった。
小夜はいっさい動じぬ様子。全ては織り込み済みか──
「構いませんよ。言ってみただけですので。いまだ手さえ握り合っていないお二人に、さすがに難易度が高めでしたね」
「手を握ってないだって──」
言われてみると。
里穂は胸を満たし、千沙とはキス的な何かをしたのにね。
小夜は断じた。
「水沢さんと滝崎さんのカップリングは、後進的と言わねばなりません」
「なに後進的カップリングって」
初耳な単語だ。
ふいに真紀さんが、なにやら勝ち誇ったように言う。
「手くらい握ったことあるよ。ね、高尾くん」
「そうだよね……」
握ったことあったっけ?
ここ何週間か、多様なイベントがありすぎて脳の容量が大変なことになっている。そのせいで、大事なことを忘れてしまっていたかも。
「本当ですか? でしたら、いまここで握ってみたらいかがでしょう?」
と、それとなく煽る小夜。
「いいよ。ね、高尾くん」
「まぁ真紀さんがそういうならば」
この部屋に来るまでに、不可抗力的に経験値を積んできた僕である。
たとえ相手が真紀さんでも、手を握りあうくらいならば恐れるに足らず。
へんな日本語になった。
真紀さんが自分の手を見て、ついで僕の手を見た。耳まで赤くする。
「あらためて握ろうとすると、意識しちゃうね?」
あらためて言われると、僕も恥ずかしくなってきた。
小夜が科学者の眼差しで言う。
「興味深い反応ですね、水沢さん。千沙さんとキスしたときは、そこまで緊張していなかったのですが。やはり本命は滝崎さんということですか」
真紀さん、眼光が鋭くなる。
「え、キス? 高尾くん、千沙とキスしたの?」
本命と思うなら、余計なことは言わないで欲しかった。
「キスというより、キス的な何かだよ。ポッキー・ゲームの事故みたいなものだから」
「高尾くん、正直に答えて。10人の判定員がいたとして──」
「え、10人の判定員?」
「高尾くんと千沙のしたことを見たら、10人のうち何人がキスだと判定する?」
「……………10人中10人だね」
嘘をつくスキルを磨いておけば良かった。
真紀さんはショックを受けた様子で、
「それはもう、確実に接吻だよね!」
接吻と言われるほうが、キスより重たいよね。していることは同じなのに。
小夜が何か企む顔をしている。
危険な顔だ。
「でしたら、お二人でもポッキー・ゲームを」
しかし、すかさず真紀さんが強い口調で言う。
「そんなゲームはする必要ないよ」
そして僕の両肩をつかんで、顔を引き寄せた。勢いがついて、真紀さんと口づけにいたる。
甘酸っぱい。
真紀さんが顔を離して、自分でしたことに衝撃を受けた様子。
「高尾くん──今のが、接吻だよ」
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