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 月曜日。


 通学途中、遠くから英樹の後ろ姿を見かけた。

 生存を確認。


 まだ小夜は英樹を手にかけていなかったか……

 まあ、時間の問題だろうけど。


 死亡フラグの立った英樹には、声をかけないでおこう。


 校舎に入り、教室に向かう。

 入口のところで、長本と遭遇。


 週明けから、ろくでもない奴と会った。

 ツイてないな。


 長本が嫌悪の眼差しを向けてくる。


「邪魔」


 僕も嫌悪の眼差しで返しつつ、動かなかった。


 数秒の膠着状態。

 譲る気はなかったが、周りからジロジロ見られ始めたので、仕方なく一歩横にどいた。


 長本に負けたというより、周囲の同級生の謎の圧に負けた。


 長本が通り過ぎてから、教室に入った。


 すぐそこに里穂の席がある。


「あ、高尾。おはよう」


「おはよう。ところでさ、里穂。僕のクラスでの立場って、どんなものなんだろうね?」


 かつては平穏なボッチだったが、状況は著しく変わったのだ。


「うーん。そうね、銃殺刑でたとえるとね──」


「いや、どんな物騒なたとえ方」


「千沙が合図を出せば、一斉に銃殺される感じ?」


「結局、本庄次第か」


「千沙の影響力は強いもの。高尾が千沙に対抗するには、アレをするしかないわね」


「アレって、なに?」


「千沙の弱みを握るのよ。そうすれば立場逆転よ」


「なるほど。で、本庄千沙の弱みって?」


 本庄の幼馴染である里穂は断言した。


「ないわよ」


 ないんかい。


 自分の席に向かうと、隣席の真紀さんはすでに着席していた。


「おはよ高尾くん」


「おはよう。真紀さん、つかぬこと聞くけどさ。本庄千沙の弱みってなんだろうね?」


「千沙の弱み? どうかなぁ……」


 真紀さんはしばし考えてから、


「千沙に弱みはないと思うよ」


『本庄千沙』最強説か……。


 ホームルームが始まる前に、トイレに行っておこう。

 

 教室から出たところで、


「おーい、高尾!」


 廊下から、英樹に呼ばれた。


 しかし、いま会うのは気まずい。

 動物園で見捨ててしまったので、少し後ろめたいのだ。


 ここは聞こえなかったフリして、逃げるとしよう。


 速足に切り替えて、英樹がいるのとは反対方向へ進む。


 しばし身を隠すため、無人の視聴覚室に滑り込んだ。


 しかし無人というのは、勘違いだった。


 本庄千沙がいたので。


 すぐそばの席に腰かけて、スマホを眺めている。

 僕には気づいていないようだ。

 何をそんなに夢中になって見ているのか。


 別に盗み見ようと思ったわけではない。

 が、結果的にはそうなってしまったわけだ。


 本庄の後ろから、スマホの画面が見えたので。


 これはあれだな、BL漫画だ。

 

 基準は知らないが、直観的に思った。

 これはハードだぞ。


 ようやく気配に気づいたらしく、本庄がこちらを振りむく。

 目があった。


「なんだ、水沢くんか。朝の静謐な時間を邪魔してくれたね……ところで何か見た?」


 スマホはすでにロックされた。


「……『何か』の内容にもよる」


「……『何か』は『何か』だよねぇ、水沢くん」


「……もしかして本庄は、隠れ腐女子というやつでは?」


 本庄は溜息をついた。


「おめでとう、水沢くん。どうやらキミは、私の弱みを握ったようだね」


 そうなのか、僕は本庄の弱みを握ったのか……

 やったぞ、里穂。


 それで、次はどうすればいいんだ?




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― 新着の感想 ―
[一言] 高尾は後に語る 「今思えば、これが終わりの始まりだった」と。 そういえば、銃殺刑寸前のひとがいきなりいい思いすると、皆は驚く…そこから奈落に落とすのも まさか、まさかね(笑)
[一言] 弱みを積極的に握らせていくスタイル。嫌いじゃないわ。
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