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33

 



 里穂が顔を赤くしながら言った。


「ちょっと真紀、なにいきなり破廉恥なこと言い出すのよ!」


 里穂に同意するよ、僕は。


 真紀さんは少し驚いた様子で、


「えっ? そうかな。ごめんね」


 微妙にいたたまれない雰囲気となった。


 やはりリア充の世間話には、『あのカップル、エッチしちゃったのかな?』的なノリが出てくるのか。

 真紀さん、リア充の地が出たな。


 あと里穂は、この手の話に耐性がないらしい。

 本庄とよく一緒にいるわりに、ちょっと意外ではあったが。


 そして、真紀さんが蒸し返してくる。


「だけど、やっぱり重要なことだと思うよ。だってね、たとえば昨夜2人が初エッチしたとするよね。それで今日、別れるという話だと──」


 今度は里穂も食いついた。

 怒りの拳を振り上げる。


「俗にいう、槍投げね!」


「正しくは、やり逃げかな」


「松本くんが、そんな最低な人だとは思わなかったわ。今日会ったばかりだけど」


 僕はハッとした。

 知らぬ間に、英樹が『やり逃げ』男にされている。


 親友として、僕は英樹を弁護するべきでは?


 しかし、さらに考える。

 英樹ならやりかねない。


 そうこうしていると、英樹と小夜が帰ってきた。


「やれやれ。トイレが混んでやがったぜ」


 真紀さんと里穂から冷ややかに見られる英樹。

 英樹はそれに気づかない。


 そして──

 意外なことに、昼食は和やかに過ぎた。

 

 その和やかさが表向きだとしても。

 嵐の前の静けさだとしても。


 レストランを出たところで、英樹が僕の肩に腕を回してきた。

 これ、捕獲されたのかな。


「よし高尾。オレは小夜を振るからな。振るぞ。振るかんな」


「そこまで決意表明されても、困るんだけどなぁ」


「逃げんじゃねぇぞ、高尾。オレたちの友情が試されようとしてんだからな」


「今日になってから、その友情に疑問を抱き始めているんだけど」


 その時だ──事態が急変したのは。


 レストランの近くを3人の女子が通りかかる。僕たちと同年代だ。


 その一人が何かに気づいた様子で、こちらに小走りでやって来た。

 そして笑顔で言う。


「英樹じゃん、こんなところで何してるの?」


 とたん英樹の顔色が悪くなる。


「お、おう、聡子じゃねぇか……お、お前こそ、こ、こここ、こんなところで何してやがんだよ」


 聡子なる女子が、英樹に馴れ馴れしくボディタッチ。


 それを見て、僕は気づいた。


 恐ろしいことが起きようとしていることに。


 小夜も、ボディタッチの意味に気づいたようだ。

 聡子に接近。


「聡子さん、ですか? 英樹とはどのようなご関係で?」


「ま、まちやがれ──」


 英樹が慌てて止めようとする。


 しかし、遅かった。


 何も知らぬ聡子が朗らかに答える。


「え? 関係って、英樹のカノジョだけど」


 小夜の視線が、英樹へと向けられた。


 血も凍る視線だ。


「英樹。あなたのカノジョさん、ですって」


 地獄の釡の蓋が開いてしまった。


 英樹。よりにもよって、小夜を振る前に二股なんて。

 そんなに死にたいのか?


 僕は英樹から離れ、真紀さんと里穂のもとに向かった。


「逃げるよ、逃げなきゃ!」


 2人とも状況を理解し、駆けだす。


 そして、僕たち3人は走った。


 後ろを振り返ることはしなかった。





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― 新着の感想 ―
[良い点] これは、英樹が悪いですね!完全な 二股。。。 [一言] 次回が楽しみです!
[一言] バレない二股の方法を伝授しようとしてたなコイツ... バレてんじゃねぇか!? 自殺願望持ちかてめぇ!?
[一言] 逃げる以外の選択肢しかないんだが・・・ 親友が地雷だったか・・・
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