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 僕たちは昼食を取ることにした。

 そこで園内のレストランへと向かう。


 歩いていると、自然とメンバーが別れた。

 僕・英樹・里穂の3人と、真紀さん・小夜のペアに。


 英樹が僕と里穂に言う。


「決めた。飯食ったら、オレは別れ話をするぜ」


「あたしと高尾は、お昼食べたら帰らなきゃいけないのよ。急用なのよ」


「おい逃がさねぇぞ、渋井。高尾と一緒に、オレが別れるのを見届けやがれ。そして傷心の小夜を慰めてくれよ。オレが刺されねぇために」


「いやよ、いやよ! あたし、松本くんとは今日初めて会ったのよ! なのに、どうして松本くんのために命張らなきゃならないのよ! 男なら黙って死になさい! 骨くらいなら拾ってあげるわよ!」


 英樹が慌てて、


「バカ、声がでけぇだろ。小夜に聞かれたらどうする」


 こうしてレストランに到着。

 席に案内されたところで、小夜がお手洗いに行った。


「オレも小便してくるか」


 そう言って英樹も消えたところで、真紀さんが言う。


「高尾くんと里穂に聞きたいんだけど、『私のターン』ってどういうことなのかな?」


 小夜から聞いたらしい。

 押し付けた当人の里穂が答える。


「あら、小夜から説明なかったのね? では、あたしから説明してあげるわ」


 なぜ里穂は偉そうなのか。

 とにかく手短に説明した。


「……というわけなのよ。そこで真紀にひと肌脱いでもらいたいわけ」


 真紀さんはしばし考えてから、


「結局、どこに落としどころを求めているのかな? 松本くんと井出さんに上手くいってほしいの? それとも、無事に別れて欲しいの?」


 これには僕が答えよう。


「僕たちが無事に今日を終えられるなら、どっちでもいいよ」


「そうなのよ、真紀。どうでもいいのよ正直。あのカップルが破局しようが、結婚しようが」


 真紀さんは溜息をついた。


「それで私に押し付けようというんだね、里穂? けど、そうはいかないよ。私も協力してあげるけど、里穂と高尾くんも力を出してくれなくちゃ」


 僕はうなずき、重々しく言った。


「つまり、僕たちは運命共同体だ」


 里穂も重々しく続ける。


「そうね。呉越同舟よ、真紀。生きるか死ぬかよ」


 真紀さんが苦笑した。


「2人とも、ちょっと大袈裟じゃないのかな? そこまで深刻にならなくても──確かに、井出さんは少し変わっている感じではあったけど」


「真紀は分かってないのよ! 井出小夜は本物のヤンデレよ! 純度100パーよ!」


「そうだよ、真紀さん。小夜さんが言葉にした『殺しますよ?』には、重みがあったからね。あの重さは──そう、経験者だけが出せる重さ」


「ええ、そうね。きっと松本くんの前に犠牲者が何人かいるわね」


 ここまで言っても、真紀さんは半信半疑だ。


 だが仕方ない。

 実際に『殺しますよ?』と言われた人でなくては、これは分からない。


「えーと。じゃあ、松本くんを助けるのが目的なんだよね?」


「違う違う。いまは僕たちが助かることだけを考えようよ、真紀さん。英樹は諦めるしかないよ。だって、これは英樹が自分で蒔いた種だし」


 小夜と付き合ってしまった、英樹の自業自得だ。

 どうせ性格とか無視して、容姿で決めたんだろうし。


「ふーん」


 真紀さんはお冷を飲んでから、さらりと口にした。


「ところで──あの2人って、もうエッチしたのかなぁ?」


「……」


 何か言い出したぞ、最上位の人が。







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― 新着の感想 ―
[一言] ヤンデレ+既成事実=にげられない! だからたぶん未経験...だよね?そうだよね?
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