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 屋上に上がり、ベンチに腰掛ける。


 僕の両側に、真紀さんと里穂が座った。


 2人からお弁当を受け取る。

 ありがたい──が、やっぱりけっこうな量だなぁ。


「高尾くん。あまり無理しなくていいからね」


「いいえ、高尾ならぜんぶ食べれるはずだわ。けど残しそうなら、あたしのをより多く食べていいのよ」


「里穂。楽しいお昼の時間なんだから、私に喧嘩売るようなことは言わなくていいんだよ?」


「……真紀。笑顔なのに目が笑ってないわよ」


 僕は宣言した。


「大丈夫。両方とも完食するから」


 さっそく2つの弁当箱を開け、僕はあることに気づいた。


「2人とも卵焼きを作ってくれたんだね」


 これがまずかった。

 僕としては、ちょっとした世間話のつもりだったのだが。


「高尾。どっちの卵焼きが美味しいか、食べ比べてみたら?」


 などと里穂が言い出すことに。


「里穂。そういう比較は良くないと思うよ。真心をこめて作った料理に優劣をつけるのは」


 そうそう。さすが真紀さん、大人の対応。


「真紀はあんまり料理が得意ではないのね。自信がないなら、仕方ないわね」


 里穂。なぜ、やたらと挑発的なんだ。

 まぁ、真紀さんが上手くスルーしてくれれば──


「いいよ、里穂。そこまでいうなら、どっちの卵焼きが美味しいか決めてもらおうか。だけど恥をかいても知らないからね」


 あ、スルーしないのか。


「望むところよ。さ、高尾。まずはあたしの卵焼きから食べて」


「じゃあ……いただきます」


 里穂の卵焼きをいただく。


 砂糖がたっぷり入っていて甘く、口のなかで溶けていくようだ。


「うん、美味しい」


「高尾の顔を見るだけで分かるわ。あたしの勝利だということが」


「里穂、早まると本当に恥かくよ? さ、高尾くん。次は私の卵焼きだよ」


 真紀さんの卵焼きをいただく。

 ダシがきいていて、味わい深いしょっぱさだ。これはご飯にあうね。


「うん、これも美味しい」


 しかし……


「……あのさ。味付けがこうも違うと、どっちが美味しいという話でもないような。単に味の好みの違いというか。卵焼きは『甘い』『しょっぱい』どっち?という論争になるだけのような」


 そこで真紀さんが言った。


「味付けはこのさい無視して、より愛情がこもっていたほうを選べばいいと思うよ」


「なるほど……は?」


 さりげなく、難易度がメチャクチャ高いことを要求された。


「じゃぁ……………………里穂の卵焼きで」


「ほら、見なさい!」


 と、里穂が勝ち誇る。


 一方、真紀さんはショックを受けた様子。


「高尾。決め手はやっぱり、あたしの愛情がより深かったからなのよね?」


 決め手は何かといえば──

 甘いほうが、なんとなく愛情こもっている感がある。

 というだけなんだが。


「……まぁ卵焼きに関しては、そうかもね」


 話題を変えたほうが良さそうだ。


 弁当のおかずのラインナップを見て、ふと気づいた。


「2人とも鶏の唐揚げも作ってくれたんだね──」


 あ、しまった。


 やはり里穂が食いつく。


「唐揚げも食べ比べてみてよ、高尾。あたしのほうが美味しいから」


 真紀さんもショックから立ち直って、言い返した。


「里穂。一度まぐれで勝てたからって、調子にのると恥かくよ?」


「いま恥をかいた真紀は、言うことが違うわよね。経験者は語るよね」


 次に話題を変えようと思ったら、天気の話でもしよう。




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