24
屋上に上がり、ベンチに腰掛ける。
僕の両側に、真紀さんと里穂が座った。
2人からお弁当を受け取る。
ありがたい──が、やっぱりけっこうな量だなぁ。
「高尾くん。あまり無理しなくていいからね」
「いいえ、高尾ならぜんぶ食べれるはずだわ。けど残しそうなら、あたしのをより多く食べていいのよ」
「里穂。楽しいお昼の時間なんだから、私に喧嘩売るようなことは言わなくていいんだよ?」
「……真紀。笑顔なのに目が笑ってないわよ」
僕は宣言した。
「大丈夫。両方とも完食するから」
さっそく2つの弁当箱を開け、僕はあることに気づいた。
「2人とも卵焼きを作ってくれたんだね」
これがまずかった。
僕としては、ちょっとした世間話のつもりだったのだが。
「高尾。どっちの卵焼きが美味しいか、食べ比べてみたら?」
などと里穂が言い出すことに。
「里穂。そういう比較は良くないと思うよ。真心をこめて作った料理に優劣をつけるのは」
そうそう。さすが真紀さん、大人の対応。
「真紀はあんまり料理が得意ではないのね。自信がないなら、仕方ないわね」
里穂。なぜ、やたらと挑発的なんだ。
まぁ、真紀さんが上手くスルーしてくれれば──
「いいよ、里穂。そこまでいうなら、どっちの卵焼きが美味しいか決めてもらおうか。だけど恥をかいても知らないからね」
あ、スルーしないのか。
「望むところよ。さ、高尾。まずはあたしの卵焼きから食べて」
「じゃあ……いただきます」
里穂の卵焼きをいただく。
砂糖がたっぷり入っていて甘く、口のなかで溶けていくようだ。
「うん、美味しい」
「高尾の顔を見るだけで分かるわ。あたしの勝利だということが」
「里穂、早まると本当に恥かくよ? さ、高尾くん。次は私の卵焼きだよ」
真紀さんの卵焼きをいただく。
ダシがきいていて、味わい深いしょっぱさだ。これはご飯にあうね。
「うん、これも美味しい」
しかし……
「……あのさ。味付けがこうも違うと、どっちが美味しいという話でもないような。単に味の好みの違いというか。卵焼きは『甘い』『しょっぱい』どっち?という論争になるだけのような」
そこで真紀さんが言った。
「味付けはこのさい無視して、より愛情がこもっていたほうを選べばいいと思うよ」
「なるほど……は?」
さりげなく、難易度がメチャクチャ高いことを要求された。
「じゃぁ……………………里穂の卵焼きで」
「ほら、見なさい!」
と、里穂が勝ち誇る。
一方、真紀さんはショックを受けた様子。
「高尾。決め手はやっぱり、あたしの愛情がより深かったからなのよね?」
決め手は何かといえば──
甘いほうが、なんとなく愛情こもっている感がある。
というだけなんだが。
「……まぁ卵焼きに関しては、そうかもね」
話題を変えたほうが良さそうだ。
弁当のおかずのラインナップを見て、ふと気づいた。
「2人とも鶏の唐揚げも作ってくれたんだね──」
あ、しまった。
やはり里穂が食いつく。
「唐揚げも食べ比べてみてよ、高尾。あたしのほうが美味しいから」
真紀さんもショックから立ち直って、言い返した。
「里穂。一度まぐれで勝てたからって、調子にのると恥かくよ?」
「いま恥をかいた真紀は、言うことが違うわよね。経験者は語るよね」
次に話題を変えようと思ったら、天気の話でもしよう。
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