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 教室に向かうと、廊下で里穂がそわそわしていた。


「どうかしたの、里穂?」


 里穂がホッとした様子で駆けて来た。


「あ、高尾。無事だったのね。良かったわ」


「そりゃあ、ここは戦地じゃないし。そうそう無事じゃない状況にはならないよ」


「そうじゃなくて。千沙が高尾を呼び出したと聞いたから」


「ああ、なるほど」


 だからといって、そこまで心配することではない気もするが。


「ところで里穂。言わずにおいて申し訳ない。実は、真紀さんもお弁当を作ってきてくれたんだ──たぶん。寝坊でもしてなければ」


 真紀さんが寝坊するイメージは湧かないが。

 里穂なら別だけど。


「というか里穂、寝坊してお弁当作るの忘れたとか?」


 里穂は心外そう顔で、


「そんなわけないでしょ。けど、真紀も作ってきていたなんて──油断も隙もないわね」


「とにかく、お弁当は責任をもって2つとも食べるから」


 すると里穂は、何を意味不明なことを言っているの、という顔をした。


「そんなことが通るわけないでしょ、高尾」


「え?」


「真紀のお弁当か、あたしのお弁当よ。どちらかを選ぶしか道はないわ。両方選ぶとか、そんなことは道理が通らない」


 ついに道理の話になってしまった。


 担任が歩いてきたので、僕たちは慌てて教室内に入った。

 そのさい、すでに席についていた本庄と目があった。何となくうなずいておく。


 できるだけ関わらないでおこうと決めたクラスメイトと、謎のアイコンタクトをする羽目になるとは。


 ホームルームが終わったところで、一時間目までに5分の休憩が入る。

 隣席の真紀さんに言った。


「真紀さん。話しておかないといけないことがあるんだけど」


「里穂もお弁当を作ってきたんだね? 高尾くんはそれを了承してしまったと」


「……え、どうして分かったの?」


「うーん。何となく読めるんだよねぇ。それで高尾くん、決めたの?」


「何を?」


「どっちのお弁当を食べるのか」


「やっぱり選べと」


 真紀さんはニコッとほほ笑んだ。


「当然だよね、高尾くん?」


 たかが弁当、されど弁当。胃が痛くなってきた。


 仕方ない。こんなときに相談できるのは、一人だけだ。


 というわけで一時間目のあとの休み時間で、英樹のクラスを訪ねた。


「どうした高尾。お前が来るなんて、珍しいな」


「ちょっと困ったことになって──」


 そこで、弁当ダブルブッキングについて話した。

 が、まずは昨日3Pしていないことを明言するところからだったが。


 やたらと落胆する英樹。


「んだよ、3Pしたんじゃなかったのか。今度、詳細を語ってもらおうと楽しみにしていたのによ」


「……実際にしたとしても、詳細に語ることはありえないからね」


 英樹は頭をかいた。


「で、弁当の話だっけか。正直、何を悩んでるのかよく分からねぇな。好きな女子を選べばいいだけだろ。滝崎真紀か、それとも渋井里穂か。

 つーか、滝崎真紀の一択なんだろ。渋井って奴とは、ただの友達なんだろ? もう滝崎の弁当食ってお終いにすりゃあ、いいじゃないか」


「里穂が傷つくかと思って」


「なら弁当作らせる前に、ハッキリ言うべきだったな。とにかく、いまさら仕方ねぇだろ。誰かに惚れられても、それに答えてやれねぇなら、やることは一つだけだ。ちゃんとそのことを伝えて、恋を終わらせてやるんだよ。それが惚れられた責任ってもんだ」


「英樹……良いこと言うね」


「または、セフレにするルートもある」


「台無しだな」





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― 新着の感想 ―
[一言] >「または、セフレにするルートもある」 でも、そう思われるよね。キープはいかん、はっきりさせないと。 ここでグズグズするのは良くないので、早く決断して欲しい。というかこの主人公ならちゃんと…
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