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 真紀さんが持ってきてくれたウーロン茶をすする。


 里穂はこちらをチラチラと見ていて、僕と視線があうたびに顔を赤くしていた。


 真紀さんは涼やかな表情で、僕と目があうと微笑みかけてくる。


「パスタが来る前に、本題を話しておこうか。里穂、僕が聞きたかったのは──」


「私たち、昨日は映画に行ったんだよ。ね、高尾くん?」


 いきなり真紀さんが言い出した。これが最上位美少女の得意技、空気を読まない、か。


 里穂がやたらと動揺しだす。


「え、映画に行ったって、どういうことよ」


 真紀さんはなぜか勝ち誇る。


「だって私たちカップルだし。カップルって、デートするものでしょ?」


 対して里穂はなぜか歯噛みしている。


「……映画って、何を観たの?」


「それは……」


 真紀さんが即答しなかったので、僕がかわりに答えた。


「洋画のホラー」


 里穂が少しばかり安堵した様子。


「なーんだ、恋愛映画じゃなかったのね」


「恋愛映画を観ようとしたけど、席がなかったんだよ。ね、高尾くん?」


「え? ああ、そうそう。混んでたからね」


「真紀。いちいち『ね、高尾くん?』って、高尾に語りかけるのやめてくれる?」


「恋人だから語りかけてもいいと思うよ。ね、高尾くん?」


「だから真紀、高尾と恋人なんて認めてないって、あたし言ったわよね?」


「里穂の許可はいらないと思うよ」


「……」


 真紀さんと里穂で盛り上がっているところ悪いが、このままだと話が進まない。

 

 今回の目的は、僕が里穂を振ったのかどうか明らかにすることだ。


 というか、振ってないと断言できる。

 なので、なぜそんな誤解が生まれたのかハッキリさせること。


「あのさ2人とも、そろそろ本題に入ろ──」


 そこで注文したパスタが運ばれてきた。

 

 専門店だけあってメニューは豊富。僕たち3人は、別々の種類のを注文していた。


 しばし食事に没頭。


 しばらくして真紀さんが言った。


「高尾くんのパスタも美味しそうだね」


「そう?」


「ちょっと味見させて?」


「別にいいけど」


「じゃ先に、私のを味見させてあげるね」


 真紀さんはフォークで麺を巻き取って、僕のほうに差し出してきた。


「じゃ、せっかくなんで──」


 口を開けて、フォークに顔を近づける。


「ちょっとまってよ!」


 里穂がテーブルをバシンと叩いてきた。

 これには驚く。


「な、なんだよ、里穂?」


「なに自然な流れで、『あーん』しているのよ! 恥ずかしいと思わないの!?」


「なんというか、今のほうが恥ずかしい」


 里穂が大声を出すものだから、周囲からの視線が痛い。


「そ、それに、フォークで『あーん』とか危ないじゃない。間違って喉の奥を刺しちゃったら、どうするのよ」


「里穂が、そこまで言うなら。真紀さん、ちょっとフォークを借りるよ」


 真紀さんから、麺を巻き取ったままのフォークを借りて、自分で食べることにする。

 これなら里穂も文句あるまい。ところが──。


「それ、間接キス!」


 間接キス? 

 確かに、このフォークで真紀さんは食事していたわけだから、そうなるのか。


 僕はフォークを真紀さんに返した。


「自分のフォークを使うよ」


 真紀さんは里穂に微笑みかける。しかし目は笑っていない。


「里穂。余計な指摘、ありがと」



 ▽▽▽



 食事も一段落したところで、ドリンクバーのお代わりに行くことにした。


 僕が席を立つと、真紀さんも立ち上がる。里穂のグラスを素早く取り、


「高尾くん、私も行くね。里穂は何がいい?」


「まって、あたしも行くわよ」


「3人で行ったら迷惑って、さっき高尾くんが言ってたよね? 里穂のお代わりぶんは、私が持ってくるから。で、何がいいのかな?」


 里穂が悔しそうに言う。


「……アイスティー」


 ドリンクバーのところで2人になったとたん、真紀さんが何やら真剣な様子で言う。


「高尾くん。作戦変更だよ」


「え、作戦変更?」


「当初の作戦は覚えているよね?」


「僕が里穂を振ったいう誤解を解き、僕と里穂が和解する」


「あのね、高尾くん。和解も何もないよ。だってね、里穂が高尾くんにベタ惚れということが判明したから」


「里穂が僕に? そうかなぁ?」


「そうなんだよ、高尾くん。鈍感系を極めている高尾くんが分からなくても、無理ないけど」


 いま軽くディスられた?


「それで真紀さん、どう作戦を変更するの?」


 真紀さんは、僕の目を見て言った。


「高尾くんがもう一度、里穂を振るの。完全に。それが新しい作戦だよ」


 なんか、とんでもないこと言い出したんだけど。





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