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 真紀さんがパスタ店について来ると知り、里穂はあからさまに嫌な顔をした。


「まってよ、真紀。今日は高尾と2人だけの予定で──」


「けどデートじゃないよね、里穂?」


 真紀さんがそう問いかけると、里穂は顔を真っ赤にした。


「あ、当たり前じゃない! どうして高尾なんかとデートしなきゃならないのよ」


『なんか』扱いされたが、そりゃあ1年間も無視されていたわけだ。


「じゃ、私がついて行っても問題ないわけだよね?」


 カースト順位でいえば、里穂は真紀さんに逆らえる立場ではない。

 だが里穂は、真紀さんを睨んで言う。


「も、問題あるのよ、真紀」


 里穂の反応は意外だ。

 学校の外だからか、よほど僕と2人でパスタ店に行きたいのか。


「ふーん。じゃ高尾くんに決めてもらおうか」


 なに?

 真紀さんの提案に、里穂も同意する。それから僕を見て、必死の様子で言う。


「高尾、はっきり断ってよね」


 対して真紀さんは、余裕の微笑み。


「高尾くん、里穂のためにも早く決めてあげて」


 これは2人の女子の板挟みか。

 こういう時は、どちらを怒らせるとより怖いかで考えよう。

 考えるまでもなく、真紀さんだな。

 というわけで、里穂には我慢してもらおう。


「里穂、友達を仲間外れにするのは良くない。真紀さんがいたからって、不都合はないだろ?」


「不都合は、あるのよ……」


 と里穂は、消え入りそうな声で言う。


 真紀さんは、はっきりとした口調で言った。


「決まりということでいいよね?」


「異議なし」


 僕がそう言うと、里穂が恨めしそうに見てきた。


「昨日は電話で、あたしと2人きりになりたいって、言ってたのに」


「そんなふうに言ったかな?」


「要約したら、そんな感じだったわよ」


 確かに、真紀さんがいないほうが話はスムーズに進んだだろうが。

 来ちゃったものは仕方ない。


「高尾。どうして、あたしの味方してくれないのよ」


「いや、逆にどうして味方してもらえると思った。以前は友達だったけど。1年間の断絶期間を得て、僕と里穂はただの同級生に戻ったわけだし」


 里穂は、口をあんぐりと開けた。


「……断絶……ただの同級生」


 勝手にショックを受けている里穂を見ていたら、真紀さんが近づいてきた。里穂に聞こえないように囁いてくる。


「里穂を傷つけるようなこと言ってどうするの? 里穂と仲直りすることが目的なんだよ? それに高尾くんにはまだ、『里穂をむごく振った』疑惑があるんだから。とにかく、頭でも撫でてご機嫌とってきて」


「真紀さんが現れるまでは、里穂はご機嫌だったんだけどね」


 そう言いつつも、僕は里穂のもとまで行く。


「なによ、高尾」


「まぁ、その、あれだ。仲良くいこうよ」


 里穂の頭を撫でる。


 こんなことして何の意味があるのか。

 と思ったら、里穂が顔を赤くしつつ癒されたような顔をした。

 凄く意味があった。


 それから慌てた様子で、里穂が僕の手を払う。


「も、もう。何するのよ、勝手に人の頭を撫でないでくれる? 髪が乱れちゃうじゃない」


「あ、ごめん」


「いいわよ、もう──その、あたしもワガママ言っちゃったわね。真紀も入れて3人でいいわ」


 まさか頭を撫でるだけで、こうもうまくいくとは。

 それを見抜いた真紀さんは、さすがということか。


 にしても、里穂の真紀さんへの態度は感心した。

 里穂はカースト順位に従うタイプだと思っていたので。


「里穂。今回、僕は真紀さんの味方をしたけど──何というか、里穂を見直したよ。真紀さんに逆らうとは思わなかった。たぶん勇気がいる行為だったんじゃないかな?」


 里穂は反応に困った様子だ。


「それは、あたしが高尾と2人でいたくて、だから──そ、そんなこと褒められても嬉しくないわよ」


「けど里穂には、千沙の後ろ盾があるから」


 と、真紀さんが付け足してくる。


「あ、なるほど」


 里穂が顔をしかめる。


「千沙はいま関係ないでしょ」


 ▽▽▽


 こうして3人で、パスタ店へ向かった。

 真紀さんが推測したように、確かにお洒落な店だ。昨日のチェーンのラーメン店とは違うなぁ。


 テーブル席につき、それぞれ注文を終える。

 僕は立ち上がった。


「ドリンクバー行くけど、2人の分も持ってくるよ。何がいい?」


 もちろん3人とも、ドリンクバーは注文済みだ。


「あたし、アイスティーがいいわ。高尾、よろしくー」


「私も行くよ、高尾くん。1人で3人分は大変だよね」


「ありがと真紀さん」


「あ、ずるい。それなら、あたしも行くわよ」


 僕は席に座った。


「高尾?」


「高尾くん?」


「3人でぞろぞろ行くと、他のお客さんに迷惑だし。2人が行くなら、僕の分もよろしく。ウーロン茶でいいよ」


「「……」」


 真紀さんと里穂が、ドリンクバーまで歩いて行く。2人の会話が聞こえた。


「高尾のウーロン茶は、あたしが用意するから」


「里穂。それは恋人の私の仕事だよね?」


「……真紀が高尾の恋人って、あたしは認めてないわよ!」


 僕はひとり待ちながら思った。


 あの2人、意外と仲いいな。








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